閑猫堂

hima-neko-dou ときどきのお知らせと猫の話など

螺旋

2006-11-09 09:34:34 | 日々

ついこのあいだまで「少しでも涼しいうちに!」と
朝早く犬の散歩をしていたのに、ふと気がついたら
「もうちょっと日があたってからね」と言っています。
くもの巣が急に少なくなって歩きやすい。
ポケには10回目の冬がやって来る。
去年拾った黒猫たちには2回目の冬。
火の入ったストーブのそばで目を細めて
「ああ、これこれ。冬はやっぱりこれよねー」と
満足顔のキジトラのちゃけには6回目の冬。
犬や猫は「去年のいまごろ」のこと、おぼえているのかなあ。

季節が循環するものだということを知ったのは
いつだったんだろう。
はっきりおぼえているのは小学1年生の夏休み。
ごみを出してきて、と言われて、アパートの階段を降りて、
焦げつきそうな太陽の光の中に一歩出たとき、
「あ。これ知ってる。前にも見た」と驚いた。
夾竹桃の花が咲いていて、
母の縫ったそでなしのワンピースを着ていた。
それは去年も着たお気に入りのワンピース。
パステルカラーのりんご柄のプリント。ポケットが2つ。
でも少し小さい。すそも短い。きっと来年はもう着られない。
ぼんやりそう思いながら、真っ白い日ざしの中に立っていた。
前にも後ろにも、はるかな時間のひろがりが見えて、
自分がとても小さいような気がした。

それから季節はぐるぐる、ぐるぐるとまわりつづけ、
螺旋階段の途中で足を止めて見下ろすたびに、
ぽつんと立っているりんごワンピースの子が見えます。

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