ちらちらと、ほろほろと、咲き始めた桜。
今年はなぜか染井吉野より山桜が先。
花の下には花の影がゆれている。
レンギョウに・・
ハナズオウ。
プラムの花。
桃の花も、早よ咲きたいと待っている。
ユキヤナギはあっというまに「大盛り」に。
ユキヤナギの根元は、さんちゃんのお昼寝場所。
目が合ったら、甘えてうにゅーっと爪が出る。
先日、雨の夜に、階下で寝ていたマドリが
とつぜん「身の毛のよだつような」おたけびをあげたので、
「何? 何が出た?」と窓の外を見ると、大きな白茶の猫がいて、
ぱっと逃げた。猫穴から入ろうとしていたらしい。
久々のよそ猫登場である。
白地にところどころ薄い茶色で、縞や境目ははっきりせず、
泡立てミルクの上にキャラメルソースがにじんだような、
全体にうすぼんやりした印象の毛色。
逆三角形の小さめの顔に、やや吊り目。
あの顔は、見覚えがある。
下のおばあちゃんちの猫の子孫に違いない。
「下のおばあちゃんち」は歩いて数分下ったところにある。
かやぶき屋根にトタンをかぶせた古い農家だ。
わたしたちが引っ越してきた当初、老夫婦が住んでいて、
よく野菜や漬物をもらった。畑仕事を教わったり、
暮れのおもちつきを一緒にしたりもした。
うちの子どもにとっては第三の祖父母の家みたいなものだった。
その家では、納屋のお米をねずみに荒らされないようにと
猫を飼っていた。いや、雇っていた、というのに近いかもしれない。
残り物を与えるくらいで、猫っ可愛がりするでもなく、、
猫は勝手に障子の破れ目から出入りし、食べ物を盗み、
人を見ると逃げ、勝手に子を産み、勝手にいなくなった。
一族みんな似たような色で、似たような貧相な顔で、
どこで見てもすぐわかった。
腰がうんと曲がっていたおばあちゃんは、
晩年は目もかなり悪くなり、移動販売の魚屋から買った魚を
ちょっとそこらに置いては見失い、猫にとられてしまうこともあった。
ある年の秋に、小さい田んぼの稲刈りを済ませ、
久しぶりに訪ねてきていた息子をバス停まで見送り、
やれやれとお風呂に入って、心臓発作で亡くなった。
その後、おじいさんも息子の家にひきとられていき、
家はもう15年近く、空き家のままになっている。
猫の顔を見たら、おばあちゃんのことを思い出した。
お彼岸のぼたもちはどっしりと甘くしっかりと大きく、
お寿司には食紅を入れすぎて真っ赤なでんぶと、
甘辛く煮つけた丸ごとの椎茸がのっていたっけ・・。
あの猫は、おばあちゃんちの屋号で呼ぶことにしよう。
よそ猫・ワラホシ。
だけど、マドちゃんがいる限り、一歩もうちには入れないから、
あきらめたほうがいいよ。
そうですよっ! まったく!
ボクんちに勝手に入ろうなんて、
とんでもない礼儀知らずな奴ですよ。
ぜーったい許しませんからね。
今度来たら、メッタメタのギッタギタだぜっ。
ぶんぶんっ。(←太いシッポを振っております)