ペンギンの話のつづき。
これはもう20年くらい前のことになりますが、
とある海辺の小さな水族館から
ペンギンが集団脱走する、という事件がありました。
新しく買い入れたばかりのペンギンが、その夜のうちに、
おそらくちょっぴり低すぎた囲いを越え、次々と逃げ出して…
気づいた飼育係が懸命にボートを漕いで追いかけましたが
ペンギンたちは海をまっすぐ南へ向かって泳いでいき、
とうとう1羽もつかまえることはできませんでした。
この事件を、わたしは地方紙の記事で読みました。
それをどうして今までおぼえているかというと、
(無理と知りつつ手漕ぎボートで追いかけた飼育係さんが
非常にけなげで印象的だったせいもありますけど)
じつはこのとき1羽だけ「逃げ遅れたペンギン」がいたからです。
正確には忘れましたが、買い入れたのが12羽で、
そのうち11羽が逃げた、というような話だったと思います。
その12番目のペンギンのことが、いまだに気になるのですよ。
おっとりした性格で、もたもたしてるうちに見つかっちゃった、とか…
逆に、責任感の強いリーダーで、仲間を先に逃がして、とか…
賢い奴で、水族館のほうが暮らしやすいと判断して残った、とか…
いずれにせよ、ひとりぼっちでは寂しいだろうな。
そして、逃げおおせた11羽の仲間たちは、
無事に故郷のペルーだかチリだかの海岸に辿り着けたのでしょうか。
水族館では、事件後、囲いを直してペンギンを補充したらしく、
いまでは繁殖もしているようで、いっぱいいます。
その中には「12番目のペンギン」の子孫もいるかもしれません。