弁理士の日々

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足利事件とDNA型鑑定

2010-04-08 21:08:01 | 歴史・社会
警察庁と最高検は、相次いで足利事件に関する検証報告を発表しました。

<足利事件>捜査検証報告書を公表 DNA型鑑定を過大評価
4月1日10時55分配信 毎日新聞
『警察庁が発表した「足利事件における警察捜査の問題点等について」
 警察庁は1日、足利事件の警察捜査についての検証報告書を公表した。冤罪(えんざい)を生んだ最大の問題点として、精度の低い当時のDNA型鑑定結果の過大評価を挙げ、誤った先入観を持った取り調べで菅家利和さん(63)を虚偽の自白に追い込んだと認めた。また供述や証拠を吟味して捜査の方向性を決める立場の捜査主任官が取調官を兼務する異例の態勢だったため、チェック機能が働かなかったことも明らかにした。』
『報告書によると、当時のDNA型鑑定を使った場合の同一人物の出現頻度は1000人に1.2人で、当時主流だった血液型鑑定(10人に2.2人程度)と比べて精度が高かったため、鑑定結果を過大に評価した。逮捕までの約1年間の行動確認で小児性愛を裏付ける行動が確認できないなど、当初から犯人性を疑わせる要素はあったのに、鑑定結果に終始とらわれ続けた。』
『一方、DNA型鑑定は定められた手順で行われ失敗ではないと強調。そのうえで(1)ネガフィルムを紛失(2)プリントした画像解析結果の一部が不明--など鑑定記録の保管のずさんさを挙げ「十分な検証ができず、適切に行われたとまでは言えない」と結論づけた。』

「真実語る契機見逃す」=再発防止へ全国に「本部係」-足利事件検証結果・最高検
4月1日15時27分配信 時事通信
『再審無罪が確定した足利事件について、最高検は1日、捜査や公判での問題点の検証結果を発表した。逮捕直後の拘置尋問で、菅家利和さん(63)が裁判官に「答えたくありません」と容疑を認めなかったことを明らかにし、「真実を語る重要な契機を見逃した」とするなど、虚偽の自白を見抜けなかったことを最大の問題点として挙げた。
 検証結果は、警察と同様に、誤認の原因を「DNA型鑑定を過大評価し、自白の吟味が不十分だった」と総括。再発防止策として、凶悪事件を担当する「本部係」を全国の検察庁に置くとした。
 捜査時のDNA型鑑定について、手順や技量に特別の問題はなかったする一方、鑑定データの大半が失われ、検証が困難となった点に反省が必要と指摘した。
 担当検事は起訴までに、鑑定の精度を1000人中約8.3人と理解していたが、根拠としたサンプル調査の人数が190人にすぎなかったことを把握していなかったと指摘。その後サンプル数を大幅に増やした再調査の結果、精度は1000人中35.8人に低下したことが判明した事実を挙げ、鑑定を決定的な証拠と過大評価したことが誤認の原因となったとした。』

警察庁と最高検のいずれも、DNA型鑑定については「当時実現していた手法を正しく行っており、その点で誤りはない。ただし、DNA型が同じであっても、10万人中に120人は同じ型の人がいるという認識が欠けていた。(真犯人と菅家さんは、別人なのにたまたま同じ型だった)」という認識のようです。

この結論、私の認識と違います。このブログの足利事件のDNA鑑定(2)で書いたように、
『科警研は、「MCT118法によれば、菅家さんも真犯人も、同じ18-30型であった」としている。しかし実際には、真犯人は18-24であり、菅家さんは18-29だった』というのが私の認識です。
つまり、科警研は正しく鑑定したどころか、犯人の型を誤り、菅家さんの型も誤るという二重のミスを犯しているということです。
この点について、私は昨年6月5日の朝日新聞朝刊の記事を拠り所としています。それ以外にも、こちらによると、昨年の「週刊朝日12月11日号」でも同じ議論がされているようです。

その後、再審の審理における科警研所長の証言でも、今回の警察庁と検察庁による検証報告でも、上記私の認識のようなミスについては触れられていません。これに対してマスコミも反論していないようです。
真実はどこにあるのでしょうか。
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