弁理士の日々

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若い貧困女性が激増している?!

2016-04-10 13:28:49 | 歴史・社会
ダイヤモンドオンライン(DOL)『普通の女子大生が売春! 女性の貧困はここまできた
清談社 2016年4月8日
「『熟年 売春アラフォー女子の貧困の現実』(ミリオン出版)で中年女性の売春格差を訴える中村淳彦氏。社会学的見地から「女の業」を描いた初エッセイ集『こじらせ女子の日常』(宝島社)が話題の北条かや氏。2人の気鋭ライターが女性の貧困問題を考える。」

ネットでこの記事を読みました。最近の若い女性、特に女子大生に、一体何が起こっているのでしょうか。記事の中から、気になった部分をピックアップしてみました。
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《有利子奨学金と女子大生の貧困》
中村 近年は有利子奨学金で貧困に陥る女子大生が問題になっている。親の世帯収入が90年代後半に比べて3割くらい減っている。現役女子大生が風俗でアルバイトするのも、当たり前の状況。
中村 第二種奨学金は、日本学生支援機構に貧乏人と認められれば、借金できるという制度。貧乏だからお金が借りられるという、とんでもない仕組み。
北条 卒業して新社会人になる頃には400~900万円の借金を背負っているという。
中村 ただ大卒の学歴が欲しいからとか、モラトリアム期間を過ごしたいからといった理由で、偏差値が低く就職が厳しい、いわゆる「Fラン大学」に行くのはリスクが高すぎる。

《女子大生と風俗・売春》
中村 風俗とか売春する女性たちの取材を介して奨学金問題を知った。近年はあきらかに普通の子たちがお金の問題で、アダルト仕事をやるようになっている。ちょっとおかしいなと思ったのが2005年くらい、普通の子が多すぎると気づいたのが2010年。それまで多かった病んでいるような子の割合が激減した。
中村 今の女子大生で風俗をやってる子は、北条さんみたいな人が多い印象。北条さんみたいな真面目な人ほどカラダ使って肉体労働するって傾向がある。ただし、思ったほど稼げない。そして根が真面目なので、もうどうしていいかわからなくなる。

《売春しても貧困から抜け出せない》
中村 貧困層の女性が売春しても生活費すら稼げないっていう状況は、本当にまずい。この数年間は売春したい女性が多すぎてデフレが起こっている状態。売春をしても生活保護水準を割る人がいる。
北条 売春しても月に10万レベルだと完全に貧困ライン。それこそスーパーのレジ打っているほうがマシという。
北条 風俗をやめたとして、他に選択肢のない人はどうやって生活すればいいのか。
北条 貧困率もじりじり上がってきたけど、最近は激増と言ってもいいレベル。この数年でここまで底が抜けた感じがある。

《売春から抜け出せない実態》
中村 北条さんの年代より上は、貧乏人とか底辺の人は自覚があった気がする。自分が不幸だとか貧困とか。でも今の若い子たちはそういう自覚がない。

北条 女性の1人は厳しい。共働きのリスクヘッジは最高に優れているというのが現実。結婚してパートナー男性に頼って一緒に生物役割分業を適度にしつつ、生きていける女性が、結局最強。
北条 そういう女性は羨ましいと思うが。私みたいな中途半端な独身フリーランスがいちばんタチ悪い。考えすぎて、現状を受け入れられなくて転職とか繰り返していくと貧困に陥りやすくなる。
---引用終わり-------------------------------

まず、「Fラン(Fランク)大学」という言葉をはじめて見たので、Yourpediaで調べてみました。なるほど。最近の大学生の実態がより一層わかりました。

日本の大学進学率はずいぶん前から50%を超えています。最近はさらに、少子化のため、進学希望者数に対して大学受け入れ可能人数が上回るという事態が加速し、誰でも無試験で入学できる大学が増加したのでしょう。
さらにこの10年ほどの間に大きな変化が起きているのかもしれません。大きな変化とは、「以前だったら高卒で就職しただろう若者も、上記いわゆるFラン大学に進学しているのかもしれません。有利子の奨学金を借りて。

今回取り上げた上記DOL(ダイヤモンドオンライン)記事、それとYourpediaの記載内容に共通する状況として、Fラン大学を卒業しても、就職先としてはブラック企業、次いでフリーター、製造の派遣社員ですらかなり優秀な部類といいます。奨学金の名目で借りた借金400~900万円の返済が困難であろうことは容易に推測できます。
なぜこのようなことになってしまうのでしょうか。
DOL記事の中村氏の発言によれば、『ただ大卒の学歴が欲しいからとか、モラトリアム期間を過ごしたいからといった理由で、偏差値が低く就職が厳しい、いわゆる「Fラン大学」に行くのはリスクが高すぎる。』ということです。また、Yourpediaの内容によれば、高校時代に本人と親は高卒で就職するつもりだったのに、高校の進路指導の先生が、安直にFラン大学進学と有利子奨学金での借金を勧めた結果である、ということです。

以上は男子と女子に共通する事象の筈ですが、今回のDOL記事は女子大生特有の問題について語られています。
まともな就職が困難である大学を卒業し、その時点で返しきれない借金を抱えた女子にとって、逃げ込む先は風俗や売春しかない、という実態だといいます。それもここ5~10年の現象として。

いつの時代でも、どんな人にとっても、自分が住む社会の中でまともな生活を送ろうとするとき、まともな生活をするための糧を得ていく必要があります。そしてそのために、糧が得られる「居場所」を探しだし、その居場所で必要とされる対応を行うことによってそこに居続ける努力をするものです。現代社会であれば、ごく一般的な「居場所」は「会社員」であり、女子であれば「結婚して専業主婦」もメジャーな「居場所」の一つです。親が頼れればニートも「居場所」のひとつになりますが、親が頼れなければそれもできません。

もちろん、女子にとって風俗・売春も「居場所」の一つですが、普通に考えれば、とことん追い込まれない限り選択したくない居場所の筈です。ここ5~10年のうちに、「ごく普通の子」がなぜこのような居場所を選択するようになったのか。
ひょっとして、大卒のプライドが邪魔をして、ガテン系や現業の職に就くのがいやであり、それよりましという価値観かつごく短期的な救済措置のつもりで、風俗・売春に向かっているのかもしれません。

戦前の、遊郭に身売りされた娼妓と対比してみます。身売りされた娼妓は自分の意思でそこから抜け出す自由がなかったのに対比して、現代の女子は、風俗・売春に身を染めてもいつでも自由意思で抜け出せる、という点が異なっているように思われます。しかし、奨学金という借金を抱え、売春を続けない限り借金が返済できないのであれば、昔の身売りされた娼妓と本質的には異ならないのかもしれません。
遊郭に身売りされた娼妓は、東北地方の冷害により、実家の家族全員が餓死の危機に瀕したとき、家族が餓死するぐらいなら自分の娘を身売りしよう、ということで、前借りをして身売りし、その前借りを返済する年季が明けるまでは抜け出す自由がありませんでした(山下文男著「昭和東北大凶作」)。それと比較すると、現代の女子は、自分が大卒の資格を得るためにした借金が原因で、返済が済むまで抜け出すことができないという違いがあるのみです。

身売りされた娼妓(従軍慰安婦も同じでしょうか)が、年季が明けて自由になるといっても、雇い主が悪徳であれば、知らないうちに借金がかさんでいつまで経っても返済できず、抜けることができない、ということはあり得ます。
現代ではどうかというと、上記DOL記事によると、「この数年間は売春したい女性が多すぎてデフレが起こっている状態。売春をしても生活保護水準を割る人がいる。」ということです。いつまで経っても借金が返済できないという結果を見れば、昔の娼妓が悪徳雇い主に騙されている状況と同じかもしれません。

ところで、DOL対談の一方である北条かや氏とはどんな人だろうかと、北条氏が著者である本についてアマゾンで調べてみました。3冊調べたのですが、いずれも、付けられたカスタマーレビューが酷いことになっていますね。5ポイント中1ポイントとの評価(最低)が大部分でした。取りあえず、著書の購入は見合わせましたが、一体どういうことになっているのでしょうか。
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