弁理士の日々

特許事務所で働く弁理士が、日常を語ります。

特捜検察~東京と大阪の違い

2010-10-18 22:30:39 | 歴史・社会
10月16日の日経新聞朝刊には、『歪んだ正義~「検察再生」を聞く』シリーズの第1回として、元特捜検事で福祉財団理事長 堀田力氏へのインタビュー記事が載っています。

この中で気になったところが1点あるので書いておきます。
『検事時代、大阪と東京の両方の特捜部に在籍したが、捜査手法には違いがある。東京では、調べに当たる検事同士は話をしてはいけない。全体の構図と供述は主任しか知らず、資料ももらえないので、一線の検事はストーリーに沿った調書を作成しようにも、誘導のしようがない。
一方、取り調べの前に資料をもらえ、検事同士連絡を取ってもよいのが大阪。容疑者の一人が自白すれば、それが他の検事にも伝わり、手っ取り早く他の容疑者からも話を聞き出せる。』

やはり東京と大阪それぞれの特捜検察にそのような相違があったのですか。
というのは、9月12日(まだFD改竄が表面化する前ですね)に郵便不正事件~地裁判決を受けてという記事を書き、その中で、
『上村被告に対する取り調べについて「おやっ」と思うことがありました。上村被告は取り調べに対してずっと「自分一人でやった」と述べていました。これに対し厚労省の何人もの職員が取り調べで村木課長の関与を認める供述をし、調書に署名していました。上村被告の取り調べ検事はこの調書を見ていて、「あなた以外は全員、村木さんの指示を認めている。」と上村被告に迫るのです。
このような取り調べ方法は、私が知っている特捜の取り調べ方法から逸脱しています。』
と書きました。
田島優子著「女検事ほど面白い仕事はない (講談社文庫)」の中で、
『○訟務局参事官から聞いた、特捜での取り調べについて
担当する被疑者を割り当てられるときは、ただ「この被疑者を調べろ」と言われるだけで、容疑の内容は教えられない。取り調べ前に情報を与えてしまうと、特捜検事は有能だから、被疑者の供述をそっちに引っ張る恐れがあるからだ。』
と紹介されていたからです。

今回の日経新聞の記事で納得しました。田島氏が紹介したのは東京地検特捜部の実態であって、大阪地検特捜部はそれとは異なった捜査、つまり今回の村木さんの事件におけるような捜査を前からしていたということです。

一方、堀田氏による日経新聞記事はまだ続きます。
『ただ、私が大阪地検に在籍したころは、上司への報告は非常に厳しく求められた。』『改ざん・隠蔽事件をめぐる一連の報道を前提にすると、前田元検事の上司だった特捜部長や副部長まで真実を大切にする感覚を失っていたのではないかと感じる』としています。
今回の村木さんの事件は文書偽造事件であり、物証が何よりも大切であるといわれています。その大切な物証であるFDの更新日付について、村木さんを逮捕する段階と起訴する段階のいずれにおいても、副部長も特捜部長も確認しようとしなかったわけです。この点において、特捜部長と副部長は上司としての姿勢がきびしく問われるべきでしょう。犯人隠匿罪だけではなく。大阪地検の検事正と次席検事は辞職する意向らしいですが、当然と思われます。
また、村木さんの逮捕と起訴については最高検も了承を与えています。最高検の責任も免れることはできません。この最高検の責任を、いったいだれが追求するのでしょうか。今の最高検の捜査チームでしょうか。これでは笑い話にもなりません。

特捜部がFD改竄疑惑を知った今年2月以降についても、疑惑を知ったにもかかわらず、村木さんを有罪にしようとする公判活動を継続しました。この点についても責任を追及する必要があります。

ところで、女検事ほど面白い仕事はない (講談社文庫)の著者である田島優子氏は、1992年に検察庁を辞めたあと、堀田力氏が始めたさわやか法律事務所のパートナー弁護士に就任したようです。今回の日経新聞記事と田島氏との意外な関係でした。
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