弁理士の日々

特許事務所で働く弁理士が、日常を語ります。

田母神氏参考人招致

2008-11-12 22:55:50 | 歴史・社会
11月11日、前航空幕僚長の田母神氏が参議院外交防衛委員会に参考人招致されました。先日のペシャワール会現地代表中村哲氏の参考人招致に引き続き、インターネット中継を見てしまいました。当日の午後はネット接続が困難でしたが、夜になったら十分に安定していました。

しかし、国会討論を中継で見るというのはなかなか楽しいですね。今ではこうしてインターネットであらゆる委員会討議を視聴できるのですから、便利になったものです。あっという間に3時間が経過します。
弁理士稼業をリタイアした後、老後の時間つぶしに好適かもしれません。

さて、田母神氏の参考人質疑です。

民主党委員による質疑が冒頭にありました。田母神氏の書いた論文の中身についての質問はほとんどありません。もっぱら、村山談話と対立する論文を公表した田母神氏に対する、防衛省の処分が不適切であった、という点についての質疑です。
民主党委員が「なぜ懲戒手続きに入らなかったか」と質し、防衛相が「懲戒手続きは長期間を要する。1月に定年延長が切れると中断することになる。ここで定年延長を停止するのが最適と考えた。」と反論し、この押し問答が延々と続きます。

聞いていながら、なぜ民主党は「もっと定年を延長して懲戒手続きをすべき」と主張しないのか、疑問がわき起こります。そこでネット中継を聞きながら、ネット検索を行ってみました。
自衛隊法45条3項で、「防衛大臣は、自衛官が定年に達したことにより退職することが自衛隊の任務の遂行に重大な支障を及ぼすと認めるときは、・・・六月以内の期間を限り、当該自衛官が定年に達した後も引き続いて自衛官として勤務させることができる。」と規定しています。
自衛官の定年は、空幕長であれば62歳、空将であれば60歳だそうです。田母神氏は5ヶ月前に60歳を迎えています。
防衛省側の言い分は、空幕長を更迭された田母神氏は一般の空将となり、60歳を迎えた5ヶ月前が定年となる。従って、6ヶ月の定年延長を行っても来年1月に延長が切れてしまう。というものです。
しかしこの考え方は納得できません。
普通に考えたら、空幕長でいる間は定年を迎えていないのですから、空幕長を更迭されたその時点で定年が到来した、ということになると思います。そしてそれから6ヶ月間、定年を延長できるはずだと。
そうでないと、例えば61歳になった幕僚長が不祥事で更迭されたとき、60歳を1年経過していますから、定年延長は一切不可能ということで、懲戒手続きが全く不可能という不合理な事態となってしまいます。

民主党は、なぜ上記のような論理を展開して「定年延長はまだ6ヶ月可能と解釈すべき」と攻めないのでしょうか。
この点について、民主党の中村てつじ議員にメールで質問を投げかけています。

次の自民党委員による質問は、結論としては防衛省に対する賛成質問ですね。

共産党委員による質問は迫力がありました。
田母神氏が統幕学校の校長時代、「国家観・歴史観」という講義を新設した、という事実を明らかにしたのです。
部外から講師を招いて講義したそうですが、共産党委員が防衛省から入手した資料では、外部講師の名前が黒塗りされていたようです。
「歴史観」という名称はいただけません。このように名づけた時点でイデオロギー臭を感じます。唯物史観、皇国史観、自虐史観、東京裁判史観、いずれもそうですね。田母神氏のようなスタンスを自由主義史観というのでしょうか。学校ではあくまで「歴史」を教えるべきで、「歴史観」を押し付けてはいけません。

社民党委員の持ち時間については、田母神氏や防衛相に対する質問はほとんどなく、持ち時間の大部分を使って沖縄戦に関連する自説を開陳していました。実はペシャワール会中村代表の参考人招致のときも同じだったのです。これは問題ですね。


今回の参考人質疑でも、「田母神論文のどこが不適切か」という具体的な議論はほとんどありません。参議院の委員会が田母神氏の個人意見開陳になることを恐れ、わざと議論しなかった可能性はあります。
しかしその結果、「田母神論文は本当は正論なのではないか」という疑問を抱く国民が多く存在することになる可能性が大です。
参考人質疑で田母神氏は、「ヤフーのアンケートでは私の言い分が正しいという人が半分以上だった」と言っていました。田母神氏が言うべきことではありませんが、そのようなアンケート結果があることは事実なのでしょう。それだけ、田母神氏を支持する層が存在していると思います。

田母神氏の論文の中身については、次回コメントしたいと思います。
コメント
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