弁理士の日々

特許事務所で働く弁理士が、日常を語ります。

田母神論文

2008-11-13 20:56:25 | 歴史・社会
前回は、田母神氏の参議院外交防衛委員会参考人招致の様子を書きました。問題の論文は、アパグループ「真の近現代史観」懸賞論文において最優秀藤誠志賞を受賞したもので、論文そのものはこちら(pdf)にあります。

マスコミでは、「現職の空幕長が、政府の公式見解と異なる趣旨の論文を投稿した」ことが問題になっています。しかし、政府の公式見解と異なる趣旨でも、その趣旨が正論であるならば、少なくとも耳を傾ける必要はあるでしょう。

ところが、論文を読んでみたところ、正論であるどころか、歴史事実をほんの一面からしかとらえていない論文であることが判りました。歴史事実や解釈のうち、自分にとって都合の良い部分のみをピックアップして用い、不都合な事実については全く触れずに論理を組み立てています。これはひどいです。日本の防衛軍の現職トップが、このような意見の持ち主であり、それを堂々と「論文」として公開するような人物であったことを世界に知らしめたわけで、この罪は軽くありません。アパの上記サイトには論文の英語版もアップされていますから、世界中の人が読むことができます。

田母神論文の中身について、若干のコメントを加えます。

《日本は中国・朝鮮を侵略しなかったといえるか》
日本政府に侵略の意図がなかったことについては私も了解します。ところが、現地に派遣された日本軍が、「これを侵略といわなくて何が侵略なんだ」といっていいような残虐な行為を広範に行ってしまったのでした。この一点のみをとって、「あの戦争は侵略戦争ではなかった」とは決していえないと考えています。この点を、日本人は決して忘れてはなりません。
日本軍が行った残虐行為の全体像については、国がきちんと調べていないこともあり、明らかではありません。そのため、「それはデマに過ぎない」と反論される余地があるわけですが、種々の情報を総合して、私は上記のように捉えています。
ところで論文の表題は「日本は侵略国家であったのか」です。「侵略国家」というと、政府も侵略を意図していた、という意味になってしまい、それは違う、という結論に達します。実態は、現地派遣軍が侵略的行為を行ったことが問題なのです。そこで誤魔化されないようにしないといけません。

《日本軍にテロ行為を繰り返したのは蒋介石国民党だ》
支那事変以前において、蒋介石国民党が一つにまとまった国家ではなく、蒋介石は各軍の行為を統制できていませんでした。そのため、南京領事館に避難中の日本居留官民が北伐軍に大略奪を受けるという事件も起きます。しかしこれらの事実のみでは、日本が中国全土に攻め入って全土を戦火にさらす理由にはなりません。あくまで戦闘は局地戦のみで終わらせ、あとは外交でかたを付けるべきでした。

《支那事変は、我が国が蒋介石により引きずり込まれた戦争か》
盧溝橋での演習中の日本軍に対する発砲は、中共軍の謀略だった可能性はあります。しかし単なる発砲です。
これを契機に日本軍が中国に対して大動員を行い、上海・南京を攻め落とし、重慶に撤退した蒋介石に過重なる要求を突きつけた日中戦争について、「蒋介石に引きずり込まれた」などと言い訳することは許されません。

《張作霖爆殺はコミンテルンの仕業か》
そのような説があることを私は知りませんでした。
しかしネットで調べる限り、一定の支持が得られているどころか、荒唐無稽な説であると考えられているようです。

《日本は満州や朝鮮の経済発展に貢献した》
そのような事実はあると思います。
しかし朝鮮の人たちは、経済発展の貢献をありがたがるより、朝鮮人が日本人から下等人民のように扱われた屈辱を忘れずにいるのです。いくら「経済発展での寄与」を叫んでも意味がないでしょう。

《日米開戦は、アメリカが仕掛けた罠か》
善人である日本が、アメリカが仕掛けた罠で戦争に引きずり込まれた、というのは、どだい無理があります。
「ハルノートにより、戦争開始が早まった」「ハルノートがあろうがなかろうが、早晩アメリカは日本と戦争するつもりだった」という点はそのとおりです。
しかし、日本が日中戦争を拡大し、日独伊三国軍事同盟でナチスドイツと手を組み、南部仏印に進駐した結果の戦争突入ですから、「日本は騙された善人だ」という主張は成立しません。

《日米戦争を戦っていなかったら、日本は白人の植民地になっていた》
当時のアメリカ人の気質を知っていた人たちであれば、このような恐れは全く感じることがなかったでしょう。

《日本軍に直接接していた人たちの多くは日本軍に高い評価を与えている》
旧日本軍の軍人が10人いたとして、10人のうち9人まではりっぱな軍人だったと私も思います。ところが、10人のうち1人だけ、暴虐な行為を行う兵隊がいたのであろうと。この1人の暴虐な行為を日本軍は罰することなく、際限のない暴行を許してしまいました。このような集団を外から見ると、それは「ならず者集団」です。外から見るとそれだけで、日本軍はりっぱな侵略軍になってしまったのです。
従って、10人のうち9人に接した人たちが「日本軍人はりっぱな軍人だった」というだけでは、日本軍を弁護することができません。

「1945年までの日本はすべて悪だった」と切り捨てることは間違いです。日本の歴史において、誇るべき点は誇るべきです。
しかし、1930年から1945年にかけての日本の行為については、やはり真摯に反省し、謝罪すべきでしょう。
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10 コメント

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田母神論文の感想(掲示板に投稿) (henkenkoji)
2008-11-13 23:24:27
【田母神論文:誰一人反論できなかった】の証人喚問を見て 
1回目
田母神氏は公私混同も甚だしい人ですね。
思想とは、それぞれの考え方の正義の部分を精密に論理化したものである以上、信念として持つのは自由ですが、官僚はその椅子が思想と権威をもっているわけで、公職中にある者、それも「ドスの利いた集団」のトップが政府見解に反する考えを、北朝鮮を引き合いにだして、「思想信条の自由」のもとに正当化するのは論理のすり替えです。
我々日本社会にとって、悲惨な戦争体験が獲得した精神は、国の要職につく者は、国家や国民に責任をもって義務をはたすという、成熟した責任感であった筈です。
退職後の発表であれば、あるいは瞠目に値する論文かもしれませんが、在職中は厳に戒められるべき発言です。
田母神氏にとって、政府見解が、精神と肉体を八つ裂きにするほどの苦痛を伴う思想であるなら、潔く職を辞して私人として発言すべき意見で、「思想信条の自由」を毀損したのではないでしょうか。
事実の認識という点でゆとりのない真面目人間が、国際社会における我が国の方向性の後先を考えず、権力をにぎって誠実に働く恐ろしさを社会に与えたのではないでしょうか。
2回目
上記の返信に対する小生の返信
私も問い詰める側の不甲斐なさに腹をたてています。貴方の言われる、本質の部分での叱責ができていないからですが、「表現の自由」に関しては、少し平行線を辿るかもしれません。
「思想信条の自由」は、極端な怨念によって理性や感情がつくられない限り、すべての人間に等質に与えられた重みのある自由ですが、「表現の自由」は「表現上の公理」(そんなものがあればですが)に基づくものでなければならないと考えています。
表現上の公理とは、立場をわきまえず、何処で何を言ってもいいという無責任なものではなく、言った言葉には、たとえ自分一己の利益に反することであっても、責任を持つ覚悟の上での表現であるべき倫理を含むもので、「思想信条の自由」を楯にして得られる「自由」ではないと考えています。
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田母神論文の評価 (gao)
2008-11-14 00:29:29
田母神氏が問題提起するなら、「侵略は濡れ衣だ」というのではなく、
逆に「満州事変が国際法違反なら、アメリカの原爆投下や無差別爆撃も、ロシアのシベリア抑留や北方領土問題も、中国の中越戦争やチベット動乱も国際法違反だ」と言うべきでしょう。
中国で「人民解放軍」という名称で「中越戦争や、チベット動乱も虐げられた人民を解放する戦いだった」と言うのと同列です。
日本軍も「アジア人民解放軍」とでも名づければ正義があったのでしょうか?

 また国連至上主義も現実的ではありません、極論すれば幻想でしか過ぎません。
最終、国連もアメリカも日本を守ってくれる保障等どこにもありません。
日本の国連分担金の多さにも大いに疑問が残ります。
分担金を正常に戻し国防費に当てたほうが有効と思いますが、こうした議論がないのも不思議です。自分の国は自分で守る気概がなければ、守れません。
このことを啓発した意味で田母神氏の論文は評価してもいいと思います。

 北京で感じたことですが「日本人学校で一部の生徒が日本国歌を歌えない」現実があります。
これは一部の地域の日教組の影響ですが、私はこうしたことに怒りを感じます。
中国人も馬鹿にしていました。
日本は民主国家ですから反対するなら法律を変える運動をすることが正解であって、
今ある国歌を歌わせないというものではないと思います。 

 ともあれ戦勝国の歴史観を鵜呑みにし、歴史について日本悪者論(自虐歴史観)だけがマスコミに氾濫することへの警鐘かもしれません。
日本の軍人が全て悪いと言うのでは、国のために死んで行った者たちがまったく浮かばれません。
田母神論文は「自国を守る自衛隊の存在をきちんと認識してくれ」という観点から見るとここに意義があると思います。
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前文に概ね賛同 (henkenkoji)
2008-11-14 12:52:34
。相違するところを記します。
基本的にはこの大戦の実体験者が減ってゆくことが引き起こす、戦争の概念化がもたらす齟齬だろうとは思います。
戦勝国側の概念化と敗戦国側の概念化は、反省すべき共通項を見つけ出しにくいため、年代を経てゆくと、共に正義の巾が狭く鋭くなり、危険な考え方に偏ってゆくのではではないかと危惧します。
しかし田母神氏は大勢の自衛官のトップに立っている人です。人々の上に立つということは、“だから責任が重い”ということで、当然高度な知性や知識、論理性が求められます。自説に有利な事象を持ち出して論をなすなど、三流の論文になってしまいます。同じ数の不利な例を挙げられれば功罪半ばして意味のない不毛な論文になってしまうからです。
確かに戦争前の中国と朝鮮は世界史に背を向け、朱子学や儒教の価値に固執し、他の思想を容赦なく弾圧したため近
代への準備が決定的に遅れており、その弱点を日本が衝いて国を併合したのでしょう。
隣家は不用心で強盗や空巣がしょっちゅう出入りしている、それなら我が家の者が目ぼしいものを持ち出しても文句はあるまいと、家捜ししている間に警官がやってきて捕まってしまった。しかしそのことは結果として隣家の覚醒をうながし、意識の高い家庭へと変貌を遂げさせたのだから、献身的な行為だった、というような冗談に与する人は少ないでしょうね。

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Unknown (ヨットマン)
2008-11-17 15:58:16
いつもお世話になっています。
記事拝読しました。
私もこのテーマについては脳が混乱しましたので、いろいろ資料を探しました。
東大准教授の伊東乾(いとうけん)さんの日経オンライン記事「オバマ大統領の真珠湾」の後段に少し背景を解説していました。
それを見て漸く脳は安定な位置を見出せたようです。

昨日週間文春11月20日号を読みました。
他誌はまだ田母神を見出しには出していませんでしたが、これだけは書いていたので買ったしだいです。
記事の冒頭にこうありました。

「懸賞主催者は論文を3万部出版し、英訳して世界中の大使館や領事館へ送付しようとしている。」

なぜそういう行動になるのだろうと怪訝な気持ちで読みました。

まだまだこの問題は世界政治戦略の中である意味を持っていくような不安を覚えた次第です。

国民の正しい認識が最後の砦になると思った次第です。
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今後の日本の立場 (ボンゴレ)
2008-11-17 21:37:25
ヨットマンさん、コメントありがとうございます。
「オバマ大統領の真珠湾」、ざっと目を通しました。
そこでも述べられているとおり、日本国軍の現職トップがこのような論文を発表するという事態、諸外国が知ったら、日本は何と異常な国なんだ、と敬遠されるでしょうね。
特に安全保障で同盟関係を結ぶ米国を、そのカウンターパートである日本空幕長が《日米開戦は、アメリカが仕掛けた罠》と挑発しているわけです。米国が快いはずがありません。
この当事者たちは、日米同盟関係を毀損して何が楽しいのでしょうか。
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Unknown (henkenkoji)
2008-11-19 17:26:59
by偏軒居士 (主旨に概ね賛同します。気分として相違するところを記します)。
基本的にはこの大戦の実体験者が減ってゆくことが引き起こす、戦争の概念化がもたらす齟齬だろうとは思います。
戦勝国側の概念化と敗戦国側の概念化は、反省すべき共通項を見つけ出しにくいため、年代を経てゆくと、共に正義の巾が狭く鋭くなり、危険な考え方に偏ってゆくのではではないかと危惧しています。
しかし田母神氏は大勢の自衛官のトップに立っている人です。
人々の上に立つということは、“だから責任が重い”ということで、当然高度な知性や知識、論理性が求められます。自説に有利な事例を持ち出して論をなすなど、論文としては三流の人間がやることで、同じ数の不利な例を挙げられれば、功罪半ばして意味のない不毛な所信になってしまいます。
確かに戦争前の中国と朝鮮は世界の情勢に背を向け、朱子学や儒教の価値に固執し、他の思想を容赦なく弾圧したため、近代への準備が決定的に遅れており、その弱点をヨーロッパ列強が、そして遅れて日本が衝いて国を併合したのでしょう。
隣家は家庭内で喧嘩ばかりしており、外に対しては不用心で、強盗や空巣がしょっちゅう出入りしている。
それならいっそうのこと我が家のものにしようと、戸籍を書き換えている間に警官がやってきて捕まってしまった。
しかしそのことは結果として、隣家から家庭内暴力を一掃し、外に対しても意識の高い家庭へと覚醒させたのだから、献身的な行為だった、というような冗談に与する人は少ないでしょうね。
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ちょっと古いですよ (検非違使)
2009-01-22 23:49:32
田母神論文がトンデモ論文であることは完全に同意です。ただ、一つだけ。日中戦争については盧溝橋事件が原因ではありません。あれはただのケンカです。

上海の合法的な居留地に蒋介石軍が違法な攻撃を加えたことが原因です。日本軍がそれを蹴散らし、南京まで追っていったというのが実態です。

以下のサイトをご覧いただきたいと思います。

http://ww1.m78.com/topix-2/the%20origin%20of%20sinojwar.html
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上海攻防戦 (ボンゴレ)
2009-01-23 11:03:44
検非違使さん、コメントありがとうございます。

ご紹介のサイト、ざっと目を通しましたが、非常に興味深い内容でした。
私も上海戦が始まる前の蒋介石の方針には興味を持っています。ドイツ軍事顧問団の力で蒋介石軍を改革し、上海で日本軍と決戦する気であったように思います。
日本は、そのような蒋介石軍の実力強化に全く気づかず、上海への陸軍増強も補充兵部隊を充ててしまいました。
それでも最終的に上海で勝利を収めたのは日本側で、蒋介石軍は近代化部隊を全滅させてしまったようです。
蒋介石側は虎の子の近代化軍を壊滅させ、日本側は上海戦で疲弊した兵士にさらに南京攻略を命じて後の大事件を生み、さらには事変を支那全土に拡大する結果を生じさせました。
日本側、蒋介石側のどちらの思惑も外れたのであり、日本が蒋介石に引きずり込まれたという言い方はできませんが、しかし日本単独の侵略行為ということもできません。
私もこのあたりについてはよく勉強しようと思っています。
今までの記事では石射猪太郎日記が参考になろうかと思います。
http://blog.goo.ne.jp/bongore789/e/5cb8eb64e528375dec6faaa32efabe76
http://blog.goo.ne.jp/bongore789/e/7d6e564732ecd8b4bd2f0989b21c7bc4
加藤陽子著「満州事変から日中戦争へ―シリーズ日本近現代史〈5〉 (岩波新書)」の読後感を準備中です。
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Unknown (ぐるぐる)
2009-01-23 22:32:04
ついでにこちらにもコメントを。

田母神氏が、マスコミの前で答弁していたときに、「自虐史観」(としておきます)によって、自衛隊の士気が低下している、という点を主張されていたのが印象的でした。

田母神氏が、先の論文を発表した動機は、
(1)日本国が侵略戦争を行ったという歴史解釈が一般的である。
(3)故に、自衛隊の士気が低下している。
というものでしょう。
田母神氏もおそらく自覚がないと思うのですが、
(2)国民は、旧日本軍と、自衛隊とを同一視している。
が、暗黙の前提として存在しているのであろうと思います。

(1)→(2)→(3)の流れにおいて、
(3)を逆転させるには、(1)をひっくり返すしかない、という思い込みがあって、(1)を否定するという行動に出るのだろうと思います。これは、いわゆる「左翼」の人々も、(1)だから(3)である、という言い方を一般にするので、(1)→(3)というのが一般的な理解なのかもしれません。

しかし、要は、(2)を否定すべきなんですよ。軍隊の必要性はどうしたってあるんですから、(3)は望ましい事態ではありません。
政府が、現在の自衛隊は、旧日本軍とはまったく違う組織であるという点を強調すべきです。戦前は、現役大臣武官制とかいう恐ろしい制度があって、陸軍、海軍は、気に食わない人間が総理大臣になったときは、陸軍大臣、海軍大臣を推薦しないという手で、組閣を阻害することができました。これでは、内閣が、陸軍、海軍の都合の良いように作られてしまいます。
また、戦前は、軍令部(作戦指揮)と軍政部(組織運営)とが一緒でしたが、戦後は、制服組(作戦指揮)、防衛庁(背広組)(組織運営)とが、分離されています。戦前も、陸軍、海軍は、自らの組織拡大のために、好戦的(予算が確保できるので)でしたが、要は、軍政部の暴走です。戦後も、組織拡大、権限増大のために、イラク派遣をやりたがったり、武器購入の汚職をやったりするのは、自衛隊ではなく、防衛庁の方です。作戦指揮のみに限定されている自衛隊は、戦前と比べたら遥かにおとなしい組織です。

(2)の否定、旧日本軍と自衛隊とはまったく違うんだ、という主張が一般に見られないのはまったく残念なことです。
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日本は自己検証ができているか (ボンゴレ)
2009-01-24 11:28:20
たとえ「自衛隊の士気が低下している」という事実があったとしても、その問題を解決する目的で、過去を隠蔽するようなことをしてはなりません。
あくまで、過去の誇るべき歴史は誇り、反省すべき点は反省すべきです。きちんとこのような自己検証ができる国、軍隊のみが、世界から尊敬されるでしょう。

その点を田母神さんは短絡的に考えてしまったのでしょうかね。
旧日本軍は、不祥事が発生したとき、「それを公にすると軍の威信が損なわれる」とのロジックで隠蔽を図ってきました。そもそも不祥事を起こしたことで威信が損なわれているのですから、ここは隠蔽せず、きちんと反省して対策を打ってこそ、尊敬を受け、威信を取り戻せるというものです。
「日本は侵略国家ではなかった」と言い張る田母神氏は、そのような態度を取ることによって、むしろ旧日本軍と同じ穴の狢になっているともいえます。

「旧日本軍と自衛隊は違う」と主張するに際しても、まずは旧日本軍がどういった団体でどのような行動を取ったのか、ということをきちんと把握しなければなりません。戦後日本は、それを怠ってきたように思います。そうとすると、現在の自衛隊でもまだ心許ないかも知れませんね。

軍部大臣現役武官制と宇垣流産内閣については、以下にも書きましたのでご覧ください。
http://blog.goo.ne.jp/bongore789/e/9bbe7f152fb54328078c146b473b7c5f
http://blog.goo.ne.jp/bongore789/e/4a558ebdd7a9a705551abab20d45452d
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