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春望 杜甫

2022-11-22 06:29:38 | 文学
詩聖 杜甫の五言律詩 を紹介します。

  春望

国破山河在
城春草木深
感時花涙濺
恨別鳥驚心
烽火連三月
家書抵万金
白頭掻更短
渾欲不勝簪

        「読み方」

国破レテ山河在リ
城春ニシテ草木深シ
時ニ感ジテハ花ニモ涙を 濺(そそ)ギ
別レヲ恨ンデハ鳥ニモ心ヲ驚カス
烽火三月ニ連ナリ
家書万金ニ抵(あ)タル
白頭掻ケバニ更ニ短カク
渾ベテ簪ニ勝エザラント欲ス

  「訳」
  国都長安の町は、賊軍のためにすっかり破壊され、あとには山と川が昔 
のままにある。
荒れ果てた町にも春はやってきて、草や木が深々と生い茂った。
この戦乱のなげかわしい時節を思うと、花を見ても涙が落ち、
家族との別れを悲しんでは、鳥の声にも心が痛む。
戦いののろしは三か月もの長い間続き、
家族からの手紙はなかなか来ないので、万金にも値するほど貴重だ。
たび重なる心痛のため、白髪はかけばかくほど短くなり、
まったく冠をとめるピンもさせなくなりそうだ。
 「鑑賞」
755年11月、安禄山の乱が起こり、翌年6月、長安が落ち、玄宗皇帝は蜀に落ち延びました。杜甫は粛宗(玄宗の息子)のもとに駆けつけようとして、賊に捕らえられ長安に幽閉されました。この詩はその翌年、757年の春、幽閉生活のなかでの作。
第一・二句(首聯)は対句。国都長安では高殿や大きな家がみな破壊され、今まで建物の陰になっていた山が向こうにくっきりと見え、剥き出しになった川が滔々と流れている。春は人間の興亡におかまいなしに訪れ、草も木も春になれば生い茂る。なにげない表現だが、人の世の無常と自然の雄大さが蔵されています。
第三・四句(頷聯)も対句。普通ならば春に咲く美しい花を見ればうれしくなるはずが、今は戦乱の時。美しい花も涙のたねなのです。(中略)
第五・六句(頸聯)も対句。延々と三ヶ月燃え続けた秦の都・咸陽と眼前の荒れ果てた唐の長安とが二重写しになるところにおもしろみがあります。たまに来る家族からの手紙はたいへん貴重で、万金の価値がある。家族からの便りをまちわびる作者の気持ちが痛切に詠われています。
第七・八句(尾聯)は結び。「簪」とは、昔の役人が冠を髪にとめるピンのことです。それができないとは、もう役人勤めもできなくなりそうだ、ということの譬えです。戦乱によってもたされた失意、孤独感、望郷の念が自然を通して巧みに詠みこまれています。
特に、首聯は、芭蕉も「おくのほそ道」で引用しています。「国破れて山河あり、城春にして草青みたり」
夏草や兵(つはもの)どもが夢の跡

        石川忠久「ビジュアル漢詩 心の旅」世界文化社 



   
       


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