正岡子規の七言絶句を紹介します。正岡子規は短歌にも俳句にも長じていましたが、
漢詩も作ることがわかりました。
舟過八島
萬里吹来破浪風
追思往事已成空
青山一帯人不見
唯有淡濃烟霧籠
舟八島ヲ過グ
萬里吹キ来ル破浪ノ風
往事ヲ追思スレバ已ニ空ト成ル
青山一帯人見エズ
唯淡濃烟霧の籠ムル有り
「訳」
いま、舟で行き過ぎようとするこのあたりには、波も吹きちぎらんばかりに風が強く吹きつけてくる。対岸はちょうど屋島である。思えば源平合戦の昔、この地では激しい戦いが繰り広げられたのであるが、いまとなっては空しく、その跡を留めるものとてない。屋島の一面青々とした山なみのあたり、人の姿も見えない。ただ濃く薄くもやが立ち籠めているばかりである。
「鑑賞」
八島の辺りを舟で行けば、遠く吹く風に立つ白い浪がしらが、源氏の軍勢の怒濤のごとき姿にも、また逃げまどう平家の敗残のさまにも見えてくる。ふとわれに返ると浪が広がるばかりである。濃淡の靄の中にすべてを包み込み、茫々たる懐古の気分を醸し出している。力まずに懐古の情を詠い上げた作品である。なお、転句や結句には子規らしい写生の目が光っていると思われる。
「吟剣詩舞道漢詩集」 「続・絶句編」 日本吟剣詩舞振興会
漢詩も作ることがわかりました。
舟過八島
萬里吹来破浪風
追思往事已成空
青山一帯人不見
唯有淡濃烟霧籠
舟八島ヲ過グ
萬里吹キ来ル破浪ノ風
往事ヲ追思スレバ已ニ空ト成ル
青山一帯人見エズ
唯淡濃烟霧の籠ムル有り
「訳」
いま、舟で行き過ぎようとするこのあたりには、波も吹きちぎらんばかりに風が強く吹きつけてくる。対岸はちょうど屋島である。思えば源平合戦の昔、この地では激しい戦いが繰り広げられたのであるが、いまとなっては空しく、その跡を留めるものとてない。屋島の一面青々とした山なみのあたり、人の姿も見えない。ただ濃く薄くもやが立ち籠めているばかりである。
「鑑賞」
八島の辺りを舟で行けば、遠く吹く風に立つ白い浪がしらが、源氏の軍勢の怒濤のごとき姿にも、また逃げまどう平家の敗残のさまにも見えてくる。ふとわれに返ると浪が広がるばかりである。濃淡の靄の中にすべてを包み込み、茫々たる懐古の気分を醸し出している。力まずに懐古の情を詠い上げた作品である。なお、転句や結句には子規らしい写生の目が光っていると思われる。
「吟剣詩舞道漢詩集」 「続・絶句編」 日本吟剣詩舞振興会