山本馬骨の くるま旅くらしノオト

「くるま旅くらしという新しい旅のスタイルを」提唱します。その思いや出来事などを綴ってみることにしました。

08年 四国八十八ヶ所巡りの旅 (第16日)

2009-01-21 00:14:10 | くるま旅くらしの話

第16日 <10月17日()    

道の駅:紀ノ川万葉の里→(R24R371)→高野山(金剛峯寺・弘法大師御廟)→(R371R24R169)→道の駅:吉野路大淀iセンター→(R169R165R166R370)→あきのの湯(奈良県宇陀市) →道の駅:宇陀路大宇陀(奈良県宇陀市)(泊)  <122km

昨夜は良く眠って、早朝の5時前に目覚める。高野山への道は、狭く九十九折(つづらおり)が続く道なので、車が少ない内に行った方が良かろうと、食事は高野山に着いてからにすることにして、6時10分には道の駅を出発する。未だ薄暗い。この道の駅は初めての来訪だった。かつらぎ町は日本一の柿の生産地だとか。周囲を見渡せば、確かにたわわに実った柿の実が輝いた畑が広がっていた。未だ収穫期には少し早いようで、今度はもう少し遅く来て、日本一の柿を味わってみたい。

紀ノ川を渡って、九度山町からR370に入って山を登る。九度山というのは、確か大阪の役(夏の陣・冬の陣)にて活躍した真田幸村が隠棲していた所ではなかったか。大阪方に乞われて一世一代の戦振りを示した武将は、ここで何を考えながら日々を過していたのだろうか。曲がりくねった高野山への道がどこまでも続く谷川沿いを走りながら、その頃のことを想った。関西エリアには史跡が多い。

7時25分高野山の金剛峯寺前の駐車場に車を入れる。さすがに、未だ数台の車しか駐車していなかった。空模様が怪しい。もしかしたら傘をさしての参詣となるのかもしれないなと思っていたら、食事をしている間にたちまち雨が降り出し、やがて本降りとなってしまった。奥の院の大師御廟に向う前に、先ずは直ぐ傍にある金剛峯寺に参詣する。此処が高野山のご本尊拠点のお寺である。掃き清められた境内を歩いて、清新な空気を胸いっぱい呼吸しながら、八十八ヶ所を無事に巡ることが出来た感謝の思いをこめて心経を誦す。

その後は、奥の院へ。かなりの距離がある。3kmくらいはあるのだろうか、名門や有名人のお墓が点在する間を歩いていると、時間の流れがミックスされて過去と現在が一緒になったような不思議な感覚に捉われる。杉の巨木などに囲まれているので、雨は大して気にならない。日本人だけではなく、外国からの参詣者も来ている様だった。観光といっても、ここに来れば何やら敬虔(けいけん)な気持ちになるに違いない。随分昔、イタリアの何処だったかのカタコンベ(キリスト教信者の墓)を訪ねた時のことを思い出す。彼の地では地下に掘られた索道の両側に墓が並んでいたが、日本の場合は、森の中に眠ることができて幸せなような気がした。

やがて御廟に到着。ここで八十八ヶ所巡りの最後の般若心経を誦し、旅の恵みの感謝と家族・兄弟姉妹・知人の皆の、これからの安全と健康を祈った。

   

高野山奥の院の弘法大師御廟。雨の中に厳かな建物が鎮座していた。ここに来ると、森の中に天国を築いた人の魂は、不滅だなといつも思う。これで今回のお寺めぐりは滞りなく終わった。

雨脚はかなり強くなっていて、樹木から少しはなれた場所では、傘からの雫が足元を濡らした。復路も様々な墓標を見ながら歩いて、車に戻ったのは、10時半を少し過ぎた頃だった。これで今回の旅の最大の目的が叶ったことを素直に喜びたい。

とにかくホッとした。今日はこれから温泉に入ってゆっくり休みたい。昨日買った温泉博士に、大宇陀のあきのの湯が掲載されていたので、今日はその温泉に入った後、近くにある道の駅:宇陀路大宇陀に泊まることにして、出発する。

山を降り、九度山町から紀ノ川を渡って、再びR24に入り、吉野川沿いを走って大淀町からR169に入り、道の駅:大淀Iセンターにて昼食休憩。山を降りる頃には雨は上がり、道路は乾燥していた。大淀の道の駅では、地元で採れた野菜類や吉野杉材の木工品などが販売されており、かなり人気のある所である。食事の前に野菜売り場などを覗いてみたら、なんと丹波黒豆の枝豆がたくさん並んでいた。枝豆といえば、夏のビールのつまみとして極めて相性のいい食べ物であるが、東京近郊では今頃の季節に冷凍でない本物のそれを手に入れることは殆ど不可能である。それが、この地では今が当たり前のように売られているのを嬉しくも不思議に思った。黒豆の枝豆は、見た目には美味そうとは思えないのだが、一度食べて味を知った者には忘れられない美味さがある。やたらに値段の高い東北のダダチャ豆なんぞよりは、はるかに美味いと自分は思っている。値段もリーズナブルである。嬉しくなって少し多めに買い込んでしまった。これで数日間は毎晩枝豆を心置きなく賞味することが出来る。

しばらく休んだ後、大宇陀に向う。道の駅に着いて小休止した後、あきのの湯へ。大宇陀の道の駅には、何度もお世話になっているのだが、あきのの湯には一度も入ったことがない。一度入口まで行ったことがあるのだが、風呂に入るだけなのに、800円もするので、引き返したのだった。我々の費用感覚の中では、温泉や風呂の入浴料は、せいぜい500円が上限であり、それ以上の場合は余程のニーズに迫られた時以外は敬遠して我慢することにしている。今回は温泉博士のおかげで、初めての入浴が楽しめることになった。ありがたいことである。

「あきの」というのは、阿騎野と書くらしい。この地は、古の飛鳥時代の万葉歌人、柿本人麻呂が訪れて、「東(ひむがし)の野にかぎろいの立つ見えて、返り見すれば月傾(かたぶ)きぬ」と詠んだ、その地なのである。「かぎろい」とは、春うららの陽炎ではなく、寒い季節の日の出前の空が赤く染まった様をいうのだそうな。この地では12月には毎年そのかぎろいを見るイベントが開かれていると聞く。地酒の名酒「かぎろい」もお勧めの一品である。何度も来訪している内に、いろいろと雑学の知識が貯まってしまった。

あきのの湯には、温泉だけでなくフィットネス用のプールなどがあるらしく、それで利用料金が高いようである。以前は800円だったと思っていたが、現在は700円となっていた。勿論今日は無料であり、気持ち良く受付でのご案内を頂いた。それから1時間ほど温泉を楽しんだ。よく温まるいい湯だった。一汗流してさっぱりして、直ぐ近くにある道の駅のいつもの場所に車を停め、ゆっくりと食事の用意をして夜を迎える。勿論、ビールのつまみは黒豆の枝豆だった。Tさんから頂戴したものを食べ終え、それで終わりと思っていたのが、今夜も食べられるなんて、嬉しいに尽きる話である。

◇色と空

 色(しき)と空についていろいろなことが頭の中を駆け巡る。色というのは、哲学の命題で言うところの「現象」であり、空というのは、「本質」を意味している。

本質と現象の関係は、日常生活の様々な分野で垣間見ることが出来る。我々は普段の生活の中で、様々な問題に遭遇するが、それらには全て原因や要因が潜んでいる。例えば現在の世界経済は、とてつもない恐慌状態に陥っているが、その状態を惹き起こした原因としてアメリカのサブプライムローンの焦げ付きの問題があるが、その焦げ付きを起こした更なる原因が幾つか存在し、更にその原因を惹き起こした原因がその奥に潜んでいる。このようにして、最終的な原因に至ったとき、すなわちもうこれ以上のものは考えられないという、その原因が本質であるといって良い。問題解決においては、この本質に踏み込んだ解決策を打たない限り、真の問題解決につなげることは難しく、したがって現象としての再発が必ず出現するということになる。

サブプライムローンの本質は何かという検討は、現状の問題解決においては、それほど為されているとは思えない。せいぜい格付け会社のエラーだとか、金融商品の思惑が外れたとか程度の浅い検討テーマが話題にのぼるくらいであり、行なわれている対策といえば、とにかくこれ以上の金融不安が膨れないように資金の融通を増やすという手が世界各国の共通認識となっている程度である。

現実の世の中においては、本質に至るまでの原因追求の論理を進めることが殆どないため、決定的な問題解決の手を打つということが為されないまま、とりあえずの傷の手当をして、時間の流れの中で新たな別の現象がそれらの問題を呑み込んで鎮静化へ向うというのが、歴史の残している現実のようである。

さてさて、空と色という本質と現象の問題は、経済混乱の本質は何かなどという浅薄なテーマなどをはるかに乗り越えた人間の生の深遠に迫る、というよりも宇宙の存在そのものについての洞察であるように思う。色即是空の立場からものを見ていると、現世の中で起こっている様々なできごとは、さしたる心配事ではないように思えてくるのである。

しかし、人間は、もしかしたらここ(=現代の今となって)に来て、現象としては行過ぎるレベルの行為を為しているのかもしれない。天変地異や環境破壊などといわれていることがそれを証明しているような気もする。

色即是空、空即是色という観世音菩薩の教えは、実に哲学的な深い洞察の論理を語っており、ある意味で科学的でもあるといえるような気がしてならない。空が只の何もない空っぽという認識ならば、只の宗教的な作り話のようなものとなってしまうけど、空が色を呑み込むこの世の本質であるという考え方は、凄いという他ない。

 

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