東京多摩借地借家人組合

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熊本地震の復興住宅、重い家賃負担 補助金などなく年金が頼り

2019年02月04日 | 法律知識
https://mainichi.jp/articles/20190203/k00/00m/040/007000c

 2016年4月の熊本地震で自宅を失い、再建困難な被災者の恒久的住まいとして整備が進む災害公営住宅
(復興住宅)で、年金生活などの入居者に家賃が重い負担となっている。自宅や仮設住宅では要らなかっ
た家賃が、月1万5000~5万4000円程度かかる。熊本県内では20年春までに12市町村で1717戸が整備される
予定で、既に8市町村の270戸が完成したが、被災者向けに家賃補助などの支援を新設した自治体はない。
【中里顕、福岡賢正】

 「今まで家賃がかからなかったのでよかったけれど……。極力無駄遣いせず、それでも足りない時は預
金を崩して家賃に充てるしかない」。同県宇土(うと)市の復興住宅で障害がある娘と2人で暮らす後藤
タエコさん(82)は表情を曇らせた。
 長年住んでいた実家が地震で半壊し、娘と仮設住宅に入った。収入は2人の年金のみ。自宅再建は到底
不可能で昨年11月、復興住宅に入居した。家賃3カ月分の敷金とそれまで払ったことのなかった駐車場代
込みの家賃月々2万2000円が重い負担としてのしかかる。「かといって他に行く当てもない。アパートの
家賃はもっと高いから……」。後藤さんは自身に言い聞かせるようにつぶやく。
 同じ復興住宅で暮らす吉崎正英さん(75)も持ち家が全壊。仮設暮らしで要介護度が3に悪化した妻を
施設に預けざるを得ず、妹と2人で入居した。3人の年金だけが頼りだが初めて払う家賃と妻の施設代が二
重の負担となっている。「それでもここに入れてよかった。よそに行けと言われても難しい」
 熊本地震では県内30市町村の住家計4万3035棟が全半壊した。持ち家が多く家賃がかからないからこ
そ、限られた年金収入や農業収入で暮らせている人が多かった。そうした人たちも仮設住宅や県などが賃
貸住宅を借り上げる「みなし仮設」にいる間は家賃がかからなかったが、復興住宅は公営住宅並みとはい
え毎月の家賃が生じる。月数万円でも大きな負担だ。
 東日本大震災(11年)では世帯の総所得から控除額を引いた政令月収が8万円以下の低所得世帯を対象
に国が家賃を補助。仙台市によると、収入が国民年金だけの市内の被災者が2Kで家賃1万8200円の部屋に
住んだ場合、入居5年目までは月5600円の負担で済んだ。
 熊本県は当初、熊本地震でも同様の補助を求めたが、国は「東日本大震災では復興特別税による財源が
あったから家賃補助できたが、あくまで特例」として応じなかった。
 あとは市町村が独自の低減措置を講じるかどうかだが、後藤さんらが住む宇土市は「復興住宅の家賃は
安く抑えており、被災者にとっても大きな負担にはならないはずだ」(都市整備課)。町内の住宅の6割
が全半壊し県内最多の673戸の復興住宅を整備する益城(ましき)町は「国の補助制度がなく、町単独で
補助すれば財政に更なる負担がかかる」(公営住宅課)としている。
 神戸大の塩崎賢明(よしみつ)名誉教授(都市計画)は「災害規模の大小で被災者支援に差異が生じる
ようなことがあってはならない。全ての被災者が等しく支援を受けられるよう国として考えるべきだ」と
指摘する。

災害公営住宅(復興住宅)

 災害で自宅を失い自力再建が困難な人のために、国の補助で県や市町村が整備する賃貸住宅。家賃と、
被災した家のローン返済などと合わせて二重負担に苦しむ人もいる。長い仮設住宅暮らしでようやく人間
関係を築いた被災者が再び新しい環境で孤立する恐れもあり、行政や周囲の見守りが必要になる。

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