東京多摩借地借家人組合

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日本住宅会議記念総会とシンポジウム「東日本大震災と居住貧困・日本の未来」開催

2012年12月10日 | 最新情報
日本住宅会議2012年度記念総会とシンポジウム「東日本大震災と居住貧困・日本の未来」が、12月1日午後1時から早稲田大学7号館で開催されました。今年は、日本住宅会議の創立30周年に当たり、総会に当たり全国借地借家人組合連合会・全国公営住宅協議会・国民の住まいを守る全国連絡会の3団体の祝辞がありました。

 全借連を代表して田中晃会長は「震災からの復興は人間が復興することであり、人間が復興するためには住宅がなければ復興にはならない。日本住宅会議の30年の経験を東日本大震災にも大いに活かしてほしい」と訴え、全借連が議論している「民間賃貸住宅憲章」の制定に向けて、住宅会議の協力を呼びかけました。

 総会では、日本住宅会議の塩崎賢明理事長(立命館大学教授)が2013年の方針を提案し、「震災からの復興に取り組むとともに、居住貧困を正していく取り組みとして民間・公共も含めた賃貸住宅政策の検討を来年度の運動の柱にしていく」と強調しました。
 記念講演は「東日本大震災から見える日本の未来」と題して五十嵐敬喜氏(法政大学教授・前内閣参与)が報告し、「復興予算の流用問題に見られるように、政治家も官僚も国会も予算をチェックでず、民主党政権は官僚政治を打破できなかった。予算の作り方から直していく必要がある」と民主党政権の内幕を暴露しました。

 シンポジウム「大震災と住まいの貧困」では、鈴木浩福島大学名誉教授より「原発災害と復興の課題」、稲葉剛もやい代表理事より「現代ハウジングプアの諸相」、塩崎賢明立命館大学教授より「東日本大震災復興の課題」がそれぞれ報告されました。鈴木氏は、震災時だけではなく平時からの居住権保障の必要性が強調されました。また、稲葉氏からは居住貧困をなくしていく当面の課題として、「住宅手当制度恒久化、公的保証人制度の確立、空家の活用」の3点が強調されました。その後、4人の報告者に対する質疑応答が行われました。
(全国借地借家人新聞12月号)
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相場による更新料の支払特約は法定更新の場合に支払義務は発生しない

2012年12月10日 | 最高裁と判例集
 今回は、更新料を支払う必要がないとした結論自体は目新しいものではありませんが、葛飾の借地借家人組合の組合員の事件で完全勝利判決を得た事案であり、しかも、2011年7月15日の最高裁判決の後も、従前の判例を踏襲した結論であったという観点から、東京地方裁判所平成23年7月25日判決を紹介します。

 本件は、借地人が法定更新を主張して更新料の支払いを拒絶したところ、地主が、借地人を被告として、更新料不払いの債務不履行に基づく土地の賃貸借契約の解除を主張し、建物収去土地明渡しを求めてきた事案です。前回の更新の際に作成した賃貸借契約書には、特約条項として、手書きで「期間満了時に建物が存在するときは、当事者が協議のうえ更新することができる。契約が更新されたときは、賃借人は賃貸人に対して相場による更新料を支払わなければならない」との記載がありました。

 地主である原告は、第一に、更新が合意更新である旨主張した上で、仮に法定更新であったとしても、上記条項は法定更新の場合にも適用があるため、いずれにしても更新料の不払いは債務不履行に該当し、契約解除は有効と主張しました。
 これに対し、借地人である被告は、更新の合意などしたことはない、実際に契約書を新たに作成していないし、更新料を支払うという約束もしたことはない、と完全に否認した上で、契約書の更新料支払いの文言は、「当事者が協議のうえ更新する」場合、つまり合意更新の場合に更新料を支払うという内容であり、法定更新の場合はこれに該当しないなど主張して争いました。

 判決は、原告(地主)が、本件更新料支払条項において相場とされる更新料の具体的金額や具体的な合意の内容等を明らかにしていないことを理由として、合意更新の存在を否定しました。また、上記更新料の支払条項は、「合意更新、法定更新を問わず適用されることが一義的に明らかであるとはいえ」ないとし、むしろ上記文言は、合意更新の場合だけに適用されるのが自然であるとして、更新料を支払っていないことは債務不履行にあたらないとして、結論として地主である原告の請求を棄却しました。

 もともと更新料は、法律上支払義務のないものです。前記2011年7月15日の最高裁判所判決に従っても、賃貸借契約書の一義的かつ具体的に記載された更新料の支払条項がある場合のみ例外的に更新料支払義務が発生するというのが合理的な解釈です。本件の場合、賃貸借契約書に、特約条項として手書きで更新料に関する記載がありましたが、「相場」という言葉は更新料の内容を一義的かつ具体的に表しているとは言い難く、上記判断も、「相場」による更新料を「支払う」という文言だけでは、上記一義的かつ具体的な支払条項という要件を満たさなかったと判断したものと思われます。
 契約書の更新料のことが記載されていても、必ずしも支払義務が発生するわけではない例といえます。 (弁護士 西田穣)

(東京借地借家人新聞12月号)
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