東京多摩借地借家人組合

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築80年の借家が明渡しの裁判で朽廃と認定されず

2010年01月08日 | 明渡しと地上げ問題
 島田さんは台東区三ノ輪の借家に昭和50年3月から居住している。この借家は島田さんの奥さんの生家であり、奥さんの親が昭和11年から借りていたものを承継したものである。建物は昭和2年8月に保存登記されたもので、既に築後80年以上を経過した3軒長屋である。島田さんは、その中央部分を借りている。

 家主は長屋の隣の4階建てビルに住む自営業者であり、そのビルと長屋を取壊して所有地と借地に跨る建物を建築する心算であった。

 家主は平成18年1月26日に建物の老朽化を理由に明渡請求訴訟提起してきた。
裁判の争点は①本件建物が朽廃しているのか、②家主の解約申し入れについて正当事由が認められるのかが争われた。

 家主側は1級建築士による調査報告書に基づいて、「地震時には倒壊の可能性もあり、危険な建物である。建物は自然的腐食状態によって建物の社会的経済的効用を失った状態にあって、既に朽廃している。したがって、本件建物部分の本件賃貸借契約は終了した」と主張した。

 借家人側は、「調査報告書」は本件建物を直接調査したものではなく、本件建物以外の部分を撮影又は調査したものに基づく結果に過ぎず、本件建物部分について、何ら客観的資料を示すものではないと反駁した。

 裁判所は、家主側が「建物朽廃」の根拠としている「写真撮影報告書」及び「調査報告書」は現物建物を実際に調査したものでないことを指摘し、「同報告書の耐震性に関する意見についても本件建物部分以外の本件建物を調査した結果に止まるものであることに照らすと、原告の主張は、採用することができない」として、明渡請求には理由がない判示とした。結果、裁判所は家主の請求を棄却した。


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