東京多摩借地借家人組合

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群馬・桐生市の生活保護費問題 分割支給「20年前から」内部調査チームが報告

2024年08月28日 | 法律知識

群馬県桐生市の不適切な生活保護費の運用をめぐり、問題となった分割支給が少なくとも2003年ごろからすでに行われていたこと
が新たに明らかになりました。
これは、21日開かれた第三者委員会の会合で市職員による調査チームが明らかにしたものです。市では、生活保護費をめぐる問題を
受け、書類や職員への聞き取りなどによる内部調査をことし2月以降に進め、その結果を報告しました。
それによりますと、保護費を月ごとの満額支給せず窓口で手渡しによる分割支給を行っていたケースは、少なくとも2003年ごろに
は行われるようになり、去年、市が公表するまでのおよそ20年間続いていたということです。
また、福祉課内に保管された印鑑の数は1948本に上ることが分かりました。この印鑑の預かりは、1989年ごろにはすでに行わ
れていたことも確認され、中には受給者の同意を得たとして職員側が自腹で購入したケースもあったということです。
受給者に代わり押印する不適切な行為が続いてきた背景について、「受給者の利便性向上と職員の負担軽減を図る目的で、問題と感じ
る職員も半数以上いたが先輩職員から処理方法を教えられ代々引き継いできたもの」と内部調査チームは結論付けています。
第三者委員会の委員長を務める吉野晶弁護士は、「本来公務員は勤勉でこのような規則に外れたことは行わないはずで、『事務処理の
慣例』だけが原因にあったのかを含め今後、背景について調査したい」と述べました。
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地上げ屋が地代の大幅値上げ請求 組合に入会して頑張る

2024年08月28日 | 底地買い・地上げ
 千代田区永田町の地上げ業者の東京都市開発株式会社は、7月に入り同社から賃借中の借地人に対し固定資産税・都市計画税の5倍に増額するよう請求しています。
 武蔵野市中町に住む借地人のNさんは、現行地代月額12,220円を固都税の5倍の23,527円と現行地代の1・9倍の増額であり、Nさんは組合に相談し、現行地代は相当な地代であり、値上げは認められないと回答し、昨年以来地代の集金に来ないことから8月中に集金に来るよう督促し、期日までに集金に来なければ地代を供託すると通知しました。
 また、杉並区和泉に住む借地人のMさんは、現行地代月額16,000円を固都税の5倍の月額42,670円を請求。現行地代の2・6倍の請求。
 Mさんの敷地は私道の奥の袋地で建築許可も下りない土地で、公道に面した1筆の土地に3名の借地人がおり、固都税は公道に面した土地の固都税を3人の借地人の面積に按分しています。Mさんは一番評価も低く、固都税の算出方法も不公平であり、現行地代は相当であり増額請求には応じられないと文書で回答しました。
 同社の社員からは「底地を買うか、借地権を売るか」
の二者択一を求められ、地代の集金に来た際に「土地を買う気はないんだな」と凄まれましたが、Mさんは買わないと伝えました。
 Mさんは、昨年地主が同社に土地を売却して以来、どこに相談したらいいのか悩んでいて、区役所に相談し、組合を紹介され、「やっと相談先が見つかって安心しました」と7月に組合に入会しました。
 現在、地上げ問題で悩んでいる借地借家人は急増しています。ぜひ、皆さんの周りで「地主がかわった」「家主がかわった」等の相談で困っている人を見かけたら組合に紹介して下さい。
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家主が変った途端に明渡し請求 家賃の振込先連絡せず法務局に家賃を供託

2024年08月27日 | 底地の売買 地上げ
 国立市中の共同住宅に住む山本さん(仮名)は、新賃借人と旧賃借人の連名で、「皆様方に賃貸しております○○は、令和6年6月17日付で○○株式会社に売り渡しました。従いまして、上記建物賃貸借契約上の賃貸人たる地位は○○株式会社に移転しましたので、その旨ご通知申し上げます。今後のことにつきましては、○○株式会社 担当○○までご連絡下さい」との通知が送られてきました。旧賃貸人からも管理会社からも一言の連絡もなく、○○株式会社の社員が山本さん宅を訪問し、「家賃はいらないので年内までに立ち退いてほしい」と突然言ってきました。
 山本さんは、以前組合にお世話になったという友人から紹介され、電話の上組合に相談に来ました。
山本さんは立ち退きの請求を受けた時、失業中で仕事と住居を探すのに頭が一杯となり、どうしたらよいか悩んでいました。賃貸借契約は来年の5月まであり、慌てて出ていく必要はないと組合からアドバイスを受け、組合に入会して立退き請求に対して、移転費用のみではなく、今後の生活の補償も含め、組合と連絡しながら交渉していく決意を固め、頑張る決意です。新賃貸人の会社の担当者に8月分の家賃を支払うので送金先を連絡するようショートメールを送りましたが、連絡を寄こさないので家賃は法務局に供託する予定です。賃貸人の地位を引き継いだのに、6カ月後に明渡せとは全くひどい話です。借地借家法を守らない家主の不当な請求が横行しています。法律を学んでしっかり頑張りましょう。
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住宅団体が夏季研修会 住宅と健康、死亡リスク

2024年08月26日 | 法律知識
 7月20日、台東区台東1丁目会館にて2024年住宅団体夏期研修会「住宅と健康、死亡リスク、公的賃貸住宅、民間賃貸住宅などをめぐって」が開催され、会場とオンラインで40人が参加しました
 開会に当たり、住まい連代表幹事の坂庭国晴氏が挨拶し、コーディネーターに住まいの貧困ネットの司法書士の加藤裕子氏の司会で研修会が進められました。
 住宅種別と死亡の関係について、千葉大学予防医学センターの花里真道准教授ら研究チームが9市町村の4万7千人の高齢者を2010年から9年間を追跡し、検証しました。
 高崎経済大学の佐藤和宏准教授より「研究論文の読み解きと論点」について問題提起の報告を行い、居住者の居住形態と死亡リスクとの関連を初めて調査し、民間賃貸住宅に住む参加者は持ち家に住む参加者は死亡リスクが1・45倍高い、公的賃貸住宅とでは1・17倍高いことが明らかになった。
 阪東美智子・国立保健医療科学院、中島明子・和洋女子大名誉教授、大本圭野日本住宅会議元理事長より問題提起がされ、死亡リスクを減らすにはどうしたらよいのか分析が必要であるとの意見が出されました。居住者団体からの報告・発言では、公営住宅協議会、神奈川公団住宅自治協。公社自治会協議会、全国借地借家人組合連合会の代表が発言し、全借連からは細谷事務局長が報告しました。
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京都市が老朽借家に修繕・除去の勧告書 家主が早速明渡し請求

2024年08月26日 | 法律知識
二村さんは十数年前に家主から老朽化による賃貸借契約解除通知を受けました。しかし、その後も家主は家賃を受け取り、明け渡しの話しは家主から出ず、何の問題もなく過ごしてきました。また、建物は古いですが台風や地震でも雨漏り等も起こっていませんでした。
昨年暮れに突然京都市の職員が二村さんを訪れ、「勧告書」を手渡しました。「勧告書」は家主にも届けられました。
「勧告書」には、所有されている建築物は、大きな傾きがあり、倒壊する危険性が高いので「早急に建築物の修繕、除却等その他必要な措置を講じるよう、勧告します」と書かれていました。
家主は、10数年何も言ってこなかったにもかかわらず「勧告書」を見て直ぐに弁護士を通じて明渡しを請求してきました。
家主は、修繕をすることなく建物を解体するより方法がないと決めつけ、京都市の勧告書で正当事由が満たされたと契約解除を正当化しています。しかし、京都市に根拠を尋ねても明確な回答はありません。
二村さんは、高齢のためこの地を離れることはできないと裁判も辞さない決意です。京借連は、京都市の「勧告書」が明け渡しの引き金になっていることから京都市が指導・勧告している件数や勧告後の措置をどのようにしているのかなどを調査して京都市への働きかけを行っていく予定です。(全国借地借家人新聞8月号より)
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生活保護を申請したら「カビとほこりだらけ」の部屋に… NPO「行政がこんな施設に追い込むなんて」と批判

2024年08月02日 | 生活保護 住宅扶助

 住まいがない人が生活保護を申請すると案内される施設が劣悪だとして、若者の貧困問題に取り組むNPO法人「POSSE(ポッセ)」が
29日、東京都内で記者会見し、生活保護事務を担当する各福祉事務所にアパートの提供を徹底するよう求めた。

◆「預金通帳奪われた」「セクハラは日常茶飯事」

 生活保護法で生活費などを給付する生活扶助は、居宅での実施が原則とされる。本人の意思に反した施設への入所を禁じているが、
ポッセには前年度、施設に入らないと生活保護を受けられないと言われたり、入所させられたりしたとの相談を15人が寄せた。
 「施設管理者に預金通帳と印鑑を奪われた」「セクハラが日常茶飯事」といった声や、生活保護の申請自体を諦めた人もいた。
 都内の自治体からゲストハウスを案内された40代男性は会見で、部屋に冷暖房がなく、カビやほこりでひどく汚れていると説明。
「生活困窮者も一人の人間であることを保障して」と訴えた。岩本菜々理事(25)は「行政が、自立困難な状態に追いやる貧困ビジネ
スの施設に入れさせるのは人権侵害」と述べた。(中村真暁)

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更新料不払いで裁判所から支払督促

2024年08月02日 | 法律知識
 福生市でアパートを借りているMさんは、最近になって管理会社のJPMCシンエイの社員から更新料を支払えと電話があり、恐怖心もあり着信を拒否していました。6月に入り、青梅簡易裁判所から令和2年・令和4年の2回分の更新料72,000円と年3%の遅延損害金3,188円の支払督促が送られてきました。支払督促送達から2週間以内に異議申し立てをしないときは、債権者の申立てによって仮執行宣言すると書かれていて、驚いたMさんは以前相談したことのある当組合に連絡してきました。
 組合では、至急裁判所に支払督促の異議申立書に記入し、異議を申立てるようアドバイスしました。管理会社の2回分の更新料ですが、Mさんは十数年前から更新料の支払を拒否し、賃貸借契約は法定更新しています。令和2年・令和4年も賃貸借契約書に署名しておらず、全くのでっち上げです。立川市内にある同管理会社は悪名高い業者で以前、宅建業法違反で一時業務停止処分を受けたこともあり、賃貸借契約書の条文が消費者契約法違反で適格消費者団体の消費者機構日本から契約書の条文の差止請求を受けたこともある不動産業者です。
 支払督促に異議の申し立てをすると、裁判になります。Mさんは再度組合に入会し、裁判になった時は弁護士を紹介すると伝えました。更新料を支払督促で取り立てるとは、管理会社の新手の手法であり注意が必要です。
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借地権活用セミナー 9月14日に開催

2024年08月02日 | 法律知識
 借地人の高齢化に伴って、高齢者施設に入居したり、亡くなって空き家になり、相続人が借地をどう活用したらよいか悩んでいる方が増え、組合にも多数相談が寄せられています。地主に借地権を買い取ってもらえるケースもありますが、これも地主さん次第で、必ず買い取ってもらえるとは限りません。最近では、借地人をとりまく状況も激変し、地主がある日突然、不動産業者(地上げ屋)に売却する事例も急増しています。
 そこで、組合の協力団体である生協・消費者住宅センターの役員の方から、同センターで実践した借地権の活用等について報告を受け、組合員の皆様と借地権の活用法について一緒に考えていきましょう。
●日時 9月14日(土)午前9時半開場、
10時開会  (参加無料)
●会場 立川市女性総合センター5階第2会議室(立川駅北口徒歩7分)
●講師 生協・消費者住宅センター
副理事長 大関恵士氏
●定員 20名(申し込み順)
●申込み 組合事務所まで(参加者は組合員限定)
 未加入の方は、組合に入会受け付けます。
 電話 042(526)1094

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更新料不払いで裁判所から支払督促 直ちに裁判所に異議申し立て

2024年07月24日 | 法律知識
 福生市でアパートを借りているMさんは、最近になって管理会社のJPMCシンエイの社員から更新料を支払えと電話があり、恐怖心もあり着信を拒否していました。6月に入り、青梅簡易裁判所から令和2年・令和4年の2回分の更新料72,000円と年3%の遅延損害金3,188円の支払督促が送られてきました。支払督促送達から2週間以内に異議申し立てをしないときは、債権者の申立てによって仮執行宣言すると書かれていて、驚いたMさんは以前相談したことのある当組合に連絡してきました。
 組合では、至急裁判所に支払督促の異議申立書に記入し、異議を申立てるようアドバイスしました。管理会社の2回分の更新料ですが、Mさんは十数年前から更新料の支払を拒否し、賃貸借契約は法定更新しています。令和2年・令和4年も賃貸借契約書に署名しておらず、全くのでっち上げです。立川市内にある同管理会社は悪名高い業者で以前、宅建業法違反で一時業務停止処分を受けたこともあり、賃貸借契約書の条文が消費者契約法違反で適格消費者団体の消費者機構日本から契約書の条文の差止請求を受けたこともある不動産業者です。
 支払督促に異議の申し立てをすると、裁判になります。Mさんは再度組合に入会し、裁判になった時は弁護士を紹介すると伝えました。更新料を支払督促で取り立てるとは、管理会社の新手の手法であり注意が必要です。
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路線価の上昇で激化する地上げ問題

2024年07月24日 | 法律知識
 国税庁は7月1日、今年1月1日時点の路線価を公表しました。路線価は相続税や贈与税の算定基準となり、国税庁のホームページから路線価(令和6年度)を調べることができます。(下図)借地権割合も路線毎に決められ、Dは借地権割合60%、Cは借地権割合70%、Bは借地権割合80%とされています。
 多摩地域の最高路線価は武蔵野市吉祥寺本町1丁目のサンロードで昨年より6・9%上昇し、㎡単価が620万円。上昇率が一番高かったのが京王線聖蹟桜ヶ丘駅近くの多摩市一ノ宮の聖跡Uロードの8・5%と急上昇し、駅前再開発の影響です。都内では台東区雷門通りが上昇率1番で16.7%と訪日観光客のインバウンドが影響しています。路線価の上昇は、地主の相続税の負担増によって、借地の土地を地上げ屋に売却する動きがさらに進むことが必至です。借地人に対し、「底地を買い取れ、買わなければ借地権を売却しろ」と迫るなど、悪質な行為が横行しています。悪質な地上げ行為を規制する法律がなく、1日も早く地上げ行為を規制する法律が必要です。また、路線価の上昇は地代・家賃の値上げ問題にも影響を与えます。ますます、組合の役割は重要になっています。
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生活保護の違法・不適切運用と「扶養照会」

2024年07月04日 | 法律知識

 「水は使えたんですけども、ガス、電気が止まって大変でした」「温かいものを口にすることができなかったのが一番つらかったで
す。ある時は、食パンを1斤買って、それを朝昼晩、お水と一緒に食事をするようなこともありました。水だけのときもありました」
 奈良県生駒市で生活保護を打ち切られ、その後、2度にわたる再申請も却下されたことにより精神的苦痛を受けたとして、50代女性
のAさんが国家賠償法に基づく損害賠償を求めていた訴訟で、奈良地裁は5月30日、生駒市に55万円の賠償を命じる判決を言い渡した。
冒頭の証言は、昨年12月に行われた原告尋問においてAさんが法廷で語った言葉である。
 保護廃止後の生活状況について、Aさんは判決後の記者会見で「食事を取れない時が多く、精神的にいろんなことを考えられない状
態に陥っていました」と極限状態にあったことを語った。なぜ彼女は生活保護を打ち切られたのだろうか。

 ◇2度にわたる再申請を却下

 Aさんは2016年から単身世帯として生活保護を利用していたが、20年10月、生駒市福祉事務所は求職活動が不十分であることを理由
に生活保護を停止した。その後、Aさんの親族と支援者が役所の担当者を訪問。Aさんが精神疾患を抱えていることを説明し、保護停止
の解除を要請したが、職員は就労して自立するしか停止解除はできないと回答。12月9日にはAさん自身が週2回のアルバイトを開始し
たことを報告したにもかかわらず、その6日後、生駒市は生活保護の廃止を決定した。廃止の理由は、別居する70代の母親がAさんを引
き取って扶養することが可能だというものであったが、母親は認知症を患っており、要介護状態であった。
 保護費が止まったことにより生活に困窮したAさんは、21年4月、支援者とともに窓口を訪れて、生活保護の再申請をおこなった。こ
の時は電気やガスが半年間止まったままであること、精神障害者保健福祉手帳2級を取得したことを伝え、公的な支援が必要な状況に
あることを訴えたが、市は親族による扶養が可能との理由で申請を却下。Aさんは同年7月にも生活保護を再申請したが、この時も同じ
理由で却下された。

 ◇引き取りによる扶養は例外

 奈良地裁(寺本佳子裁判長)の判決は、生駒市が一連の処分の決定において、母親がAさんを引き取って扶養することが可能だと言
いつつも、その「実現可能性について何ら具体的な調査・検討をしていない」と指摘。福祉事務所が果たすべき法的義務に反している
として、国家賠償法上の違法性及び過失があると認めた。また、判決は、親族の扶養はあくまで金銭的扶養が原則であり、引き取りに
よる扶養は「当事者間の合意を前提とした例外的な扶養の方法」との解釈を示した。
 判決後の記者会見で原告代理人の古川雅朗弁護士は、引き取りによる扶養を例外とした裁判所の判断について、「家庭、人それぞれ
にさまざまな事情があり、各個人には居住、移転の自由が保障されている。『あなたはこの家族と同居すべきだ』と行政側が簡単に押
し付けてはいけない」との原告側の主張が認められたものだと評価した。
 判決が出た日の夕方、生駒市の小紫雅史市長は判決を真摯(しんし)に受け止め、控訴しないことを表明。市の控訴断念を受けて、
判決は確定した。

 ◇扶養は保護の要件ではない

 Aさんの裁判で争点になったのは、民法が定める親族の扶養義務と公的扶助との関係をどう捉えるかという問題であった。
 生活保護法には「民法に定める扶養義務者の扶養及び他の法律に定める扶助は、すべてこの法律による保護に優先して行われるもの
とする」(第4条2項)との規定がある。ここで言う「優先」とは、「要件」とは違い、あくまで親族による金銭的な扶養が行われた場
合、その金額を保護費から差し引くという意味に過ぎないのだが、生活保護行政の現場では、扶養が生活保護の要件や前提であるかの
ように偽って説明することで申請を抑制しようとする「水際作戦」がたびたび問題になってきた。
 厚生労働省は各自治体に対して、「扶養が保護の要件であるかのごとく説明を行う」ことがないように徹底してほしいとの通知を何
度も出しており、親族が扶養できるかどうかは生活保護の要否の判定に影響を及ぼすものではないとの説明も繰り返している。
 奈良地裁の判決は、「扶養は保護の要件ではない」という原則を確認するものであったが、生駒市を含む一部の自治体では、この原
則を逸脱した運用が常態化している疑いがある。
 生駒市ではAさんが生活保護の停廃止処分を受ける直前の20年9月、市議会の決算審査特別委員会において、生活保護の開始件数が減
少している理由についての質疑があった。担当課長は減少の要因の一つに、市が「扶養義務者への扶養照会等を強化している」ことが
あると述べた上で、その具体的な方法を次のように解説した。
 「扶養照会の方も、今までは申請が出てから文書で扶養義務者の方に扶養照会を行っておったんですけども、相談に来られた段階
で、その扶養義務者、特に親御さんとか兄弟さんとか、そのあたりのご家族の方に相談されていますかと、一度相談してくださいとい
うような働きかけもさせていただいて、時と場合によってはその方たちも2回目、3回目の相談のときに同席していただいて、今後どう
していくかというのを十分話し合っていただいて、保護に陥らずに、皆さんで支援をしながら生活を自立させていくというようなこと
も今はさせていただいております」

 ◇過去にさかのぼって検証が必要

 20年はコロナ禍の経済的影響によって生活困窮者の増加が社会問題となった年である。その年の12月、厚労省は公式サイト上に「生
活保護を申請したい方へ」という特設ページを開設し、「生活保護の申請は国民の権利です。生活保護を必要とする可能性はどなたに
もあるものですので、ためらわずにご相談ください」との広報を開始。特設ページには、生活保護制度に関する「よくある誤解」とし
て、「扶養義務者の扶養は保護に優先しますが、例えば、同居していない親族に相談してからでないと申請できない、ということはあ
りません」との注意書きもわざわざアップしていた。
 しかし、生駒市は生活保護の新規件数を減らすため、相談者の親族にプレッシャーをかけ、役所に呼び出しまでおこなって扶養義務
の履行を迫っていた。こうした対応により、生活保護の申請を断念せざるをえなくなった人も少なくないだろう。
 生駒市では、Aさん以外にも「親族による扶養が可能」との理由で保護を廃止されたり、申請が却下されたり、申請の手前の段階で
追い返されたりしていた人が多数いる可能性がある。市は判決を受け入れた以上、過去にさかのぼって生活保護の違法運用、不適切運
用を徹底検証すべきだ。

 ◇ほかの自治体でも

 「親族による扶養」を強調することにより生活保護の件数を抑制する手法は、他の自治体でも散見される。昨年10月以降、生活保護
利用者に保護費の満額を支給していなかったことや職員による暴言・どう喝が常態化していたことなど、数々の違法運用・人権侵害が
発覚した群馬県桐生市も、その一つである。
 桐生市では、11年度に897世帯いた生活保護世帯が22年度には487世帯と半減したことが問題になっているが、実はこの12年の間、
「親類・縁者等の引き取り」による保護廃止は延べ38世帯にのぼることが明らかになっている。
 保護世帯が減少した理由について、桐生市は毎年作成している福祉事務所の「実施方針・事業計画」において、「ケースワーカーが
日ごろから熱心に実施している扶養義務者との交流促進指導」が実を結んだ結果、親族の引き取り件数が増えたと自画自賛している。
 ここでも法律や国の通知に反し、本人の意思を無視した同居の強要が行われていたのは間違いないだろう。

 ◇国が見逃していいのか

 1950年に現行の生活保護制度が成立して70年以上が経過し、日本社会における家族関係のあり方はこの間、大きく変化してきた。こ
のことを踏まえ、近年、厚労省は福祉行政が親族間の関係に介入することに抑制的な姿勢を取るようになってきている。
 21年3月、厚労省は扶養照会について、直接の照会は援助が期待できる親族に限ることを明確にした上で、本人が拒む場合は丁寧な
聞き取りをおこなうことを求める通知を各自治体に発出した。
 この新たな通知は生活保護の申請者本人の意思を一定、尊重することを求めるものであったが、自治体が本人の承諾なしに親族に連
絡すること自体を禁止するものでなかったため、自治体の中には通知を恣意(しい)的に解釈し、親族間関係への過度な介入を続けて
いるところも多い。
 一部自治体による法令違反や通知を曲解した運用を国が見逃していてよいはずがない。厚労省は、専門家による審議会を設置した上
で、全国の福祉事務所における扶養照会の運用実態を詳細に調査し、親族扶養と公的扶助の関係を改めて整理し直すべきである。(政
治プレミア)
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最高裁 公社住宅の住民の家賃減額等請求権 借地借家法の適用認める

2024年06月26日 | 法律知識
判例紹介 最高裁判所第1小法廷判決2024年6月24日判決
【地方住宅供給公社が賃貸する住宅には借地借家法の適用がある】
地方住宅供給公社が借り主の合意を得ずに家賃を増額できるかどうかが争われた訴訟の上告審判決で、最高裁第1小法廷(深山卓也裁判長)は公社物件に借地借家法が適用されるとの初判断を示しました。地方住宅供給公社の借り主側が家賃の減額を請求できるほか、値上げに対して争えるようになります。
【公社住宅に借地借家法の適用がある】住宅供給公社は、都道府県などが出資し、住宅の整備・管理などを行います。最高裁判所は、地方公社は「住宅の不足の著しい地域において、住宅を必要とする勤労者に居住環境の良好な集団住宅を供給し、もって住民の生活の安定と社会福祉の増進医寄与することを目的とする法人」であって、「地方公社の業務として賃貸人との間に設定される公社の使用関係は、私法上の賃貸借関係であり、法令に特別の定めがない限り、借地借家法の適用がある」としました。
【借地借家法32条の適用がある】借地借家法32条1項は「「建物の借賃が、土地若しくは建物に対する租税その他の負担の増減により、土地若しくは建物の価格の上昇若しくは低下その他の経済事情の変動により、又は近傍同種の建物の借賃に比較して不相当となったときは、契約の条件にかかわらず、当事者は、将来に向かって建物の借賃の額の増減を請求することができる。」としています。最高裁判所は「公社住宅の使用関係については、借地借家法32条1項の適用がある。」と明言しました。(東借連新聞 判例紹介 黒岩哲彦弁護士)
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総務省の令和5年度住宅土地統計調査 空き家数過去最多、全国で900万戸

2024年06月14日 | 法律知識
 総務省は、5年ごとに実施している令和5年住宅・土地統計調査の住宅数概要集計(速報集計)結果を4月30日に発表しました。
 調査結果によると、総住宅数は6502戸(23年10月1日現在)と、2018年から4・2%(261万戸)増加しました。総住宅数の最も多いのが東京都の820万戸、次いで大阪府493万戸、神奈川県477戸、愛知県3666万戸です。最少は鳥取県の32万戸で、青森県・秋田県・高知県・長崎県で住宅数が減少しています。
 空家数は900万戸と過去最多で、2018年から51万戸増加して過去最多となりました。空き家率13.8%で、2018年(13・6%)で過去最多です。空き家率の最も高いのが和歌山県と徳島県の21・2%で、次いで山梨県が20・5%となっています。賃貸・売却用及び二次的住宅(別荘他)を除く空き家は385万戸と、2018年より37万戸増加しています。空き家の取得経路の多くが相続ですが、売却も取り壊しもできず空き家になる事例が増えています。空き家を放置し市区町村が「特定空き家」に認定すると固定資産税の軽減措置がなくなり、空き家の破損を放置していると「管理不全空き家」として自治体の勧告・指導の対象になります。




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高齢者が詐欺の標的に…監督官庁もメチャクチャ「ヤバい制度」の悪用に「反社会的集団」が乗り出す日 伊藤 博敏 ジャーナリスト

2024年06月01日 | 法律知識

増加する「身元保証サービス」

全国の65歳以上の1人暮らし世帯が急増し、2001年の318万世帯が22年には873万世帯となり、1000万世帯超えが目前だ。
血縁、地縁が薄くなっているなかでの1人暮らしの老人には、深刻な悩みがある。老人施設はもちろん賃貸住宅への入居、病院への入
院の際、保証人を求められるのだが、用意できずに断られるケースが少なくない。
そこで増えているのが高齢者の身元保証サービスで、内容は契約を結んで保証人になるだけでなく、日常生活の支援、現金や財産管
理、葬儀を含む終活サービスなど多岐にわたる。
同時にトラブルも少なくない。監督官庁があるわけではなく、免許も届け出も不要で誰でも参入できる。そこで情報弱者の老人につけ
込むような価格設定や余分なサービスを付け加えて高額請求。解約を申し出ても返金されないといった苦情が全国の消費生活センター
などに寄せられるようになった。
そのため内閣府の孤独・孤立対策室が中心となって4月19日、「高齢者等終身サポート事業者ガイドライン(案)」をまとめ、5月18日
までパブリック・コメントを求めた。今後、早急に策定することになっている。

刑事罰を伴う法整備が必要

契約締結にあたっては、「民法や消費者契約法に定められた民事ルールに従いつつ、契約の適正な説明(重要事項説明書の交付)を行
うこと」とし、「寄付や遺贈を契約条件にすることは避け、遺贈を受ける場合も公正証書遺言によることが望ましい」と書かれてい
る。
また契約の履行にあたっては、「提供したサービスの時期や内容、費用等の提供記録を作成し、保存のうえ定期的に利用者に報告する
こと」や「利用者から前払い金(預託金)を預かる場合、運営資金とは明確に区分して管理することが望ましい」としている。
どれも当たり前すぎる内容で、これがガイドラインなら事業者のモラルに期待するしかなく、確信犯的な悪徳業者ならなんなく抜け穴
を見いだして突破しそうだ。
日本弁護士連合会は5月17日、「サービス内容が多様・複雑で費用体系が明確でないためにトラブルが多く消費者保護の必要性が高
い」と問題点を指摘したうえで、次のように指摘している。
<適正化を図るためには、一般的な現行法上の制度を前提とするガイドラインを示すだけでは足りず、事業の特性を十分に考慮した法
制度の整備を速やかに検討する必要がある>
法規制しなければダメだというわけだ。確かに悪徳業者も存在する現状を考えれば、「望ましい」「重要である」といった書き方のガ
イドラインで防げるものではなく、刑事罰を伴うような法整備が必要だろう。

監督官庁がない

司法書士が中心となった公益社団法人「成年後見センター・リーガルサポート」の5月17日付意見も厳しい。
<「義務」や「禁止事項」にはほとんどふれられていないため、ガイドラインに沿った確実な運用が期待できるのか不透明である。
チェックリストにチェックが入っているなら問題ないという認識であれば、現場において数多くのトラブルが発生する可能性も否定で
きない>
これもガイドラインでは防げないという意見だ。何より同様の意見を身元保証サービス事業に参加している業者自身から聞けた。葬儀
事業からこの分野に進出して1年目の業者である。
「中小の業者が多く、しかも監督官庁がなく縛りもないから、みんな好き勝手にやっている印象です。利用者から通帳と印鑑(キャッ
シュカード)を預かっているよう業者もいて『それは止めましょう』というガイドラインで対応できるものじゃない。認知度が高く信
用のあるリーディングカンパニーがビジネスをリードすればいいのですが、そうした企業もいない以上、法整備をしっかりするしかな
いと思います」
監督官庁がないというのは、この種の役所仕事では致命的だ。公表された「ガイドライン(案)」には取りまとめ役として「内閣官房
(身元保証等高齢者サポート調整チーム)」の名が上げられ、窓口は内閣府孤独・孤立対策室で以下に次のような省庁の名前が書かれ
ている。
金融庁、消費者庁、総務省、法務省、厚生労働省、経済産業省、国土交通省ーー。

反社が乗り出してきたら…

それだけ事業内容が多岐にわたるわけだが「ガイドラインの策定時期はいつか」という筆者のごく基本的な問い合わせに応える部署が
ない。結局、わかったのは厚生労働省老健局が内容のとりまとめは行うものの、今後のスケジュールを把握しているのは内閣官房副長
官補室で、それも「今のところいつになるとはハッキリ言えない」という心許ないものだった。
老人相手の犯罪といえば「振り込め詐欺」が思い浮かぶ。警告が繰り返され、何度報道がなされても被害者が減らないのは、他人との
縁が薄れて孤独に沈み、あらゆる騙しのパターンを持つ連中に引っかかってしまうからだろう。そして老人にはカネがある。
海外を拠点とした振り込め詐欺グループの摘発が相次ぎ、担当する警視庁捜査員などによると「そろそろ(振り込め詐欺も)限界に近
づいた」と思う連中もいるという。
そうした反社会的集団が、身元保証サービスに確信犯として乗り出せばどうなるか。ガイドラインの段階でもたもたしている状況では
ない。

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更新料と未払いで地主から契約解除通知

2024年06月01日 | 法律知識
 足立区内で約30坪の宅地を賃借する宇田川さん(仮名)は本年2月に地主代理人弁護士から更新料・地代未払いによって信頼関係が著しく破壊されたことから本件土地にかかわる賃貸借契約を解除する。1か月以内に、建物収去土地明渡と滞納地代の支払を通知されたと相談に訪れた。
 組合では先ず更新料について土地賃貸借契約書に更新料についての特約はあるか聞いたが、一昨年5月の更新時に更新料支払を請求されたまま支払いますと回答したとのこと。支払うお金の目途があったのか尋ねると何とかなると思ったと答えた。宇田川さんは支払うことが難しい更新料を安易に認めてしまう性格のようだ。地代の支払いは借地人の義務であることは知っていますか。地代の滞納がある場合申し訳ないけど地主及び地主代理人弁護士には反論する
こてはできないので先ずは代理人弁護士に再度、更新料の分割支払と地代滞納分支払計画書を作成提出するように助言した。 相談者は地主から何回か更新料分と地代滞納分支払を督促され一時は払ったが、再度払うことが難しくなり滞納した経緯がある。体調面で問題があることはわかるが、できれば一昨年の更新時に相談に来て欲しかった。(東京借地借家人新聞より)
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