村雨庵 茶の湯日記

日々是茶の湯

林檎

2010-11-14 23:42:19 | 茶の事
林檎 九首

籠に溢るる
艶めく林檎
真夜更けて
鷲掴みする
その冷たきを

これ以上
開かぬまでに
口をあけ
林檎をかじる
林檎
噛み締む

丸のまま
赤き林檎に
歯をたつる
それも小さき
どよめきとして

皮を剥く
ナイフを取らず
さくさくと
林檎噛みとる
若き日のごと

乳がんの
術後十年を
過ぐる夜
林檎をかじる
硬き林檎を

結局は
答えの出ない
いくつかの
問いあるがまま
林檎頬張る

あの時に
わが失せしかば
作歌する
嬉しさを
知らず
愁いを
知らず

芯にのみに
なるまで林檎
齧り終え
獅子座流星群を
仰がんと立つ

今年の十一月二十日で
癌の手術後二十年になる
いま十年の時に作った短歌を読み返してみたが
二十年経ってもその歌の気分と同じだ
決して 安堵はしない 
できないものだ
その癌は大きく
ステージ三だったが
術後生存率が五年
かげでは二年もたないと言われていた
すでに茶も教えて普通より
抹茶をたくさん飲んでいたせいか
なんとか再発もせず二十年を過ぎようとしている
この病気をしたお陰で
優先順位一位は
まず生きる事だから 
わが事では ためらう事も無く
まして大きな後悔も無い
単に茶をしたいだけだから
取捨選択は簡単だ
こうして無事に過ごせた事を感謝する
縁あるお人たち全てに

あとはだだ 進むだけ
茶の道はとおいから



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コメント (4)
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