今頃の秋の銘に
柴の戸
というのがある
意味は柴で作った戸がついている粗末な家
また松の戸
という言葉もある
これまた山の松で出来た戸の山奥の粗末な家という意味らしい
わが家もまた
柴にも松にも負けない粗末な木戸のほんとに粗末な家だが
この木戸をガラガラと音をたてて開けないと
わが地所には入れない
きのうの稽古日の午後だった
ピンポンとベルが鳴り行ってみると
さかちかさんが外で立って木戸が開かないという
どうしたのだろうか 一緒にその戸を動かしたが動かない
戸がレールから外れてしまって押してもひいても駄目なのだ
とりあえず家に入らないといけないから
いつもと反対側をやっと開けて
さかちかさんは入った
小まめに木戸を動かしたり持ちあげたりして
なんとかもとに戻そうとしたが無理
その後も生徒が来る度に私が木戸の開けるのを手伝い
あれこれジタバタ動かしてみた
どうやら二枚の内右の一枚の戸車が外れてしまったのだ
レールの真ん中に乗っていないから
もう一枚も押されて外れてしまい
結果この戸が動かない
全部外してみるかと試したが
とてもとても びくともしない
夜には男手の設計担当の清秀庵さんも
修繕部のアイテラ氏も来るから後でなおしてもらおうと
簡単に考えていたところが
時雨の降る夜とて足元も良く見えず
アイテラ氏と私めの二人が木戸にへばり付き全力で奮闘した
結局 駄目だ
半分だけ開けたままにしても
皆の帰った後にはどうしても木戸を閉めなければならない
外れた戸のままだが漸くカギを閉めた
風炉の最後の稽古日
今日も寒い日だが
早くも朝の八時にはアイさんが
木戸の外から戸が開かないと訴える
雨で湿り膨れた木戸は
戸車が外れ戸も動かない
ギシギシと動かして40センチほどなんとか開け
アイさんに入ってもらった
考えあぐねた最後に
そうだ力持ちのアブ殿に頼んで見よう
エストさんにその旨お願いしたところ
昼に いとも簡単そうにアブ殿がなおしてくれた
「なおったけどぉ」
と 木戸の外から携帯で知らせてくれたので
実際の現場はひとつも見ていない
どうやったかは何も知らない
力持ちでも何かしら技を使ったらしいが・・・
なおれば一転
出入りに不自由もないし 気分的にも爽快
今日もいつもと同じ普通の日
そうなのだ
こうしてトラブルに会い苦難を知り
それが無事に解消してその後に
始めて日頃の平凡なる事の幸いなどを
あらためて感ずるものなのだ
と大げさにも しみじみと感じ入る
なあに それでも私めの事 すぐに小さな幸せは忘れてしまうはずだ
ともあれ
アブ殿に感謝 有難う
御茶一服差し上げたしと言っても 迷惑であろうし
そのうち酒でもご馳走せねば・・・
さてさて 戸の外れた原因はというと
木戸から自転車を中に乗り入れる時誰かが
どんと強く木戸にぶつけたようす
シマッタと思っているだろうが
ぶつかったのが木戸で良かったのではないか
まずは一件落着
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