村雨庵 茶の湯日記

日々是茶の湯

紫廼茶話会如月

2009-02-08 20:01:41 | 茶事 茶会 
本席の掛け物
与謝蕪村の自画賛の軸
賛は
散る梅の五つに分ける匂かな
平安夜半亭蕪村

禅語
一華五葉に開く
の心を句にしたとう
兎庵さまの文章を拝見


   賛の句は「ちる梅」とあるからには梅花の季節に逝った故人を偲んだ
  追福の句であろう。
  さらには人口に膾炙した禅語「一華開五葉」に因み、
  家運隆盛、子孫繁栄の意を込めて応需揮毫した作と思われる。 

   空想をほしいままにすれば、
  明和8年12月8日に没した盟友春泥舎召波の嗣子維駒の需に応じて
  その忌日に書き与えたもの、とでもしてみたいものだ。

   初祖達磨が二祖慧可に書き与えた伝法の偈
  「吾本来茲土 伝法救迷情 一華開五葉 結果自然成」

  -悟りの花を開き仏の五智を開発するならば、
  菩提という仏果は期せずして結実成就する-
  という意の遺偈を念頭においた句であろう。

   類句に「一輪を五ッにわけて梅ちるぬ」があり、
  自筆句稿よりなる『蕪村遺稿』に採られている。
  このかすかに詠嘆のひびきが聴き取れる句は『落日菴』句集の順序から
  明和七年頃の作と推定されている。

   蕪村に桃や松などの樹木を描いた絵は多いが、
  明清画によく見られる構図のこのような下がり梅は
  ありそうでこれまで類を見ない。
  安永五年出石の霞夫の需に応じた絹本水墨二幅対「梅花叭叭鳥図」の
  梅の木を逆さまに描くとちょうどこの図になる。

   白みかけた空、薄明を思わせる薄墨を背景に、
  左上から右下に渋滞なく一気に描かれて垂れ下がる大きな枝、
  枝末に咲く白梅と散りかかる花びらを外隈で白抜きにした手法は
  晩年に多く描かれた傑作「雪中鴉図」などの降り散る雪に見られる
  蕪村手練の水墨表現である。



となんと深き事 
床の間に向かい
しばらくは頭を下げるのみである

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする