おやじねこのテレスコ日記

ー八ヶ岳の登山口に住んでいる、テレスコ工作工房の店長のおやじねこが日々の出来事などをタイムリーに伝えています

南半球で初のポラリエU+FL55SS with PCBU-EQ

2020-02-21 19:18:45 | ニュージーランド


ニュージーランドに初めて持ってきたビクセンの新製品「ポラリエU」ですが、結果は想像以上の素晴らしい機材でした。



この形は先月のアメリカ撮影の時と全く同じ構成です。ポラリエUにPCBU-EQ、そしてFL55SSとTK-ALZM Jrにカーボン三脚です。コンパクトで剛性も高く、海外遠征に持ってくるには私的にベストです。三脚はGITZOですが、別にマグネシウムやアルミでも剛性が高くて頑丈なら問題ありません。ただし三脚は搭載する機材の安定を考えて実際より上のものを選んだ方がいいでしょう。初めてニュージーランドへ来た時はスカイメモNSにベルボンの三脚を持ってきていましたが、今から考えると無茶な構成だったと思いますが、結構使えるものです。



それで肝心な撮影ですが、FL55SSで最初に撮ったのは、もちろんこの星雲です。エータ・カリーナ星雲ですが、驚くことに3分露出です。完全に点像に写っています。同じ対象を10枚連続で撮りましたが、全てのカットが点像になっていました。ポラリエの時には考えられなかった事です。ポラリエを持っているが、Uは必要ないと考えておられる方は見直された方がいいでしょう。

以前にオーストラリアでBORG 55FLとポラリエで撮った事がありましたが、残念ながら1分30秒しか点像を維持してくれなかった事がありました。カメラはEOS M3だったのでフルサイズよりは拡大率が高くて同じ評価はできませんが、多分今のシステムでAPS-Cサイズに変えても結果は変わらないと思います。



こちらは大マゼラン星雲です。これも同じ露出です。極軸合わせをしてから撮影を開始して対象を次々に変えて撮っても、ほぼ全ての画像が点像になってガイドが成功していました。PCBU-EQの回転がとてもスムーズなので、全体のバランスが取れていれば、いくら対象を変えても極軸望遠鏡がズレないので、追尾は全く変わらずに点像を維持し続けてくれます。



一度極軸を合わせて撮影対象を導入してシャッターを切りますが、その後も対象を変えてFL55SSを回してもクランプせずにその位置を維持しています。PCBU-EQの極軸回転はスムーズですが、これが渋いと無理に力をかけるので、その際に極軸がずれてしまいます。それを防ぐ為にあえて極軸の回転をスムーズにする為にベアリングを2個組み込んだのがPCBU-EQです。旧PCB-EQ3も回転自体はスムーズなのでベアリングは組み込んでありません。



オメガ星団ですが、ちょっと小さくてその大きさが伝わらないです。しかし防振双眼鏡で見たイメージは素晴らしいの一言でした。この件については後から書きます。ポラリエU自体の追尾精度が優秀なので、もう少し焦点距離のある望遠鏡でもいいかもしれません。露出も1分程度で十分です。



南半球の極軸合わせですが、ビクセンのPF-LIIを初めて南天で使いましたが、驚くほど簡単に極軸が合いました。私の方法は昔から同じで、小マゼランとNGC104を視野に入れてその視野を3つ極方向へシフトします。その時点で台形が視野に入っているので、後はその中で3箇所の極望パターンに星を入れるだけなので簡単明快です。極軸調整はTK-ALZM Jrを使っていますが、最初の導入はフリーで手で動かして入れますが、天の南極が入っている状態からは微動ノブで微調整をして導入を完了させます。



今回の撮影でも大活躍してくれたのが、ペットボトルアダプターです。ウェイトシャフトだけ持って行きましたが、スーパーで適合するキャップがついた飲料を探しますが、形状ですぐに判断できるので、機材の重量を考えて容量を選びます。付いている飲料は250mlの小さいボトルなので、シャフトを長くして使っています。これで2.8kgの重量のバランスをとっています。



撮影した場所は、ワカパパ村から10分ほどルアペフ山に来るまで登ったスキー場の駐車場で撮っています。街灯はほぼゼロなので真っ暗です。360度全周囲を見渡しても町の明かりが全くありません。空の暗さを10段階で表すなら、この場所は10で最高度のダークスカイサイトです。日本には10に匹敵する場所はまずありませんので、いかに星空環境が素晴らしいか分かるでしょう。日本の野辺山が日本一星空が綺麗だと宣伝していますが、正直笑ってしまいます。そういう事を言われる町の担当者にぜひニュージーランドで星空を見て欲しいものです。

私が30年前にワカパパ村のキャンプ場で見た「星空で影ができる」星空は今も健在で、あの頃から何も変わっていません。時期的には全く同じで2月でしたが、テントから夜中にトイレに起きた際に真上に南十字付近の銀河が輝いていたのですが、それがあまりに眩しいと感じて反射的に目に手をやったのを覚えています。それがニュージーランドの星空なんです。このくらいなら”星空世界一”と言ってもいいかな〜と思います。



撮影地は標高1800メートル近くありますが、ニュージーランドは日本ほど高所の撮影地は無いので、北島では車で行ける星空撮影の最高地点だと思います。タラナキの登山口のノースエグモントも確か同様な標高だったと記憶しています。何れにせよ、北島ではこのトンガリロ国立公園が最も星の撮影に適した場所だと考えています。

今日は数時間もかかってブログを書いていますが、気がついたらもう午後11時を回っていました。今晩は天気が良くないので休んで明日以降にまたチャレンジします。天気予報では、日曜日から良さそうなので、そこで最後の撮影をしようと思っています。防振双眼鏡の事は明日のブログで書きます。

Tongariro Crossing

2020-02-21 18:03:22 | ニュージーランド


撮影の合間にこの地域というかニュージーランドでは有名で人気の高い「Tongariro Crossing」を歩いてきました。出発場所の「Mangatepopo」のパーキングには既に大勢のトランパーが集まって出発しようとしていました。世界各国からやってきた旅行者の中にはアジア系は居ませんでした。私が唯一の日本人でした。



駐車場を出たのは午前10時前ですが、スタート地点には注意書きがしっかりあって、装備や経験が足りない観光客に注意を促すような看板がありました。道は木道がしっかりついているので普通の脚力の人なら全く問題ありません。



こんな木道が延々と続いていますが、何処かの国と違って道がしっかりと整備されているので安心して迷う事なく歩くことができます。全てが木道ではありませんが、これからの画像を見れば、この国がいかに観光客に対しての受け入れがしっかりしているのか理解できます。



ここで二度目の案内というか、”本当にこの先行っていいの?”みたいな確認の看板があります。”思い留まるならここですよ!”と言う感じです。ここで確認しているのは、まず装備です。次にこの先歩けるだけの体力と持久力があるかどうかです。途中で歩けなくなっても誰も助けてくれないという感じですが、実際には相当数の人間が歩いているので、立ち止まって困っていれば誰かが助けてくれます。日本人は無視しても海外の人達は、困っている人を見ると直ぐに気がついて手を差し伸べてくれます。これはここに限らず海外での日本人の旅行者の姿を見て感じている事です。これは別に冷たいという事ではなく、海外では言葉の問題などがあって、声をかけてあげたくてもそのあとの事があるので躊躇している。というのが正解だと思います。

とにかくこのお姉さんの注意を大人しく聞いて戻るか先に行くかの決断をこの場所で聞いています。この場所からなら1時間で戻れるからです。ただ戻る場合でもトランスポートが無いので、電話で予約した会社に相談するか、出発地点にいる観光客に助けを求めるかになるでしょう。



ここから約500メートル程登りに入ります。階段状の登山道をひたすら登ります。道の整備は素晴らしいので歩く力さえあれば登山をした事の無い人でも全く問題ありません。ここで初めて日本人の家族に出会いました。小学生を同伴して3人で登っていましたが、結果的にこの家族は下まで無事に降りて終えました。多分両親が登山などの経験者だったのだと姿服装からそう感じました。



見た感じは険しそうに見えますが、実際に登って見ると大したことは無く、ゆっくりでも確実に歩いて登っていれば上に上がれます。ラフなところはほとんど無いので、仮に霧などが出ても迷う事も無いでしょう。それ以前に人がやたらと歩いているので、それについて行けば自然に辿り着けます。



バスドライバーのローズさんが言うには、この日は1500人くらい登っているそうですので、この人を見れば納得です。



とても美しい成層火山の「ナウルホエ山」です。英語で書くとまず読み方に困る綴りですが、マオリが付けた名前なので、ちょっとヘンテコな名前になっています。30年前に「Tongariro Norther Circuit」を4泊で歩いた時にこの山を登っています。今はほとんど登る人は居なさそうですし、登るにしても道が無いので探しながら深い砂利状の場所を滑りながら登ります。



最初の難関を登り切ると「サウスクレーター」に入ります。ここを30分ほど歩いて「レッドクレーター」へ辿ります。夏なので高山植物が所々に咲いているので気持ちが休まります。



ここで最初のトイレ休憩ポイントです。3つありますが、ほとんど利用している人は居ませんでした。私も最初から最後まで一度もトイレのお世話になりませんでした。水分は全て汗で発散するので体内には全く蓄積していませんでした。汗はかかないように服装調整して歩いていましたが、それでも相当の水分が体内から失われていたようで、持ってきた500mlのスポーツドリンクが足りなかったです。多分1リッターは必要だったと思います。



自分では撮影ができないので、バスで一緒だったオーストラリアから来たエリザベスさんに撮ってもらいました。彼女とは時折出会って写真を撮り合いしていました。このトンガリロクロッシングでは、撮影に困る事が全くありませんでした。撮影ポイントには必ずカメラマンが居てくれて、こちらから頼まなくても気がついて声をかけてくれました。そのお陰で普段は自分の写真を撮らない人間ですが、やたらと写真に写っています。逆に撮影を頼まれる事も多かったです。



この花の名前は以前は覚えていたのですが、忘れてしまいました。とても綺麗に咲いているのでトランパーが盛んに撮影していました。ニュージーランドの高山植物は白や黄色が多く、日本のようにピンクやブルーといった色が少ないように思えます。



サウスクレーターを渡り切るとレッドクレーターの登りが待っています。これも結構な登りですが、ゆっくり歩いていれば確実に上に着きます。



レッドクレーターを登る前にまたあの看板が出てきます。今度は怖そうなおじさんです。”ここならまだ引っ返しても遅くない!”と言わんばかりに注意しています。実際に軽装で救助された旅行者が結構いるそうで、昨日も一人助けられたそうです。万が一助けを呼びたい時は、ニュージーランドでは「111」をコールすれば救助してくれるそうです。ただしやり取りは全て英語で、しかもニュージーランドのアクセントの強い英語なので理解できないかもしれません。その場合には自分が日本人で英語が苦手で、まずは自分がどこにいるかを伝える事が大事です。その際に歩けるのか歩けないのかもきちんと伝えましょう。場合によってはヘリコプターが救助に来るかもしれませんが、多分そうなるでしょう。仮に救助されてもこの国ではその費用は請求されません。だからと言って日本のような感覚で登山などは絶対にしないようにしてください。この国ではと言うより世界では「自分の命は自分で守る」というのが常識です。それが守れない行動は最初からしないのが鉄則です。



レッドクレーターへの登りからサウスクレーターを見た所です。



標高1800メートル以上あるトンガリロクロッシングの最高地点まで登る道中のクライマックスです。滑りやすいので足を取られないように気をつけるポイントです。



要所要所で多くのトランパーが休憩しています。最初に出会った人とまた出会ったりして、声をかけてくれたりニッコリ微笑んでくれたりします。気がついたらこちらからも挨拶します。トンガリロクロッシングではそれぞれがそれぞれのペースで歩いていますが、途中で何度か会って話したりしているうちに仲良くなったりします。これもトンガリロクロッシングの楽しみ方です。



レッドクレーターと呼ばれる噴火口です。今は活動していませんが、周辺ではいたるところで噴気が出ているので火山である事が分かります。



とても綺麗な「エメラルドレイク」への下りです。3つの池がありますが、手前のが最も大きくて色が綺麗です。この色は硫黄質が含まれてこの色になっているようです。



また登場でむさ苦しいですが、後方のが最も大きいエメラルドレイクです。蔵王の釜も類似した色ですが、ここまでは綺麗ではありません。ここまで来れば終盤ですが、実際にはそんな事は無かったのがトンガリロクロッシングでした。



エメラルドレイクに至るレッドクレーターからの下りがちょっと怖いです。富士山の砂走りのような斜度30度以上ある場所を足を取られながら降りてきます。慣れている私でもここで2度コケました。コケても尻餅で済めばいいですが、万が一頭部などを石に当てると大変な事になるので注意が必要です。



何処にでもおバカさんは居ますが、ここにも一人か二人裸で歩いているのが居ました。日本の登山道でこんなのが居たら直ぐに有名になりそうです。



エメラルドレイクを過ぎると「セントラルクレーター」を横切ってブルーレイクへ至ります。事実上これが最後の登りです。この辺からはハードなコースはありません。ただしひたすらに長いので、足腰が弱い人は注意が必要です。このコースの難点はアプローチが終盤でとても長い事です。日本の登山道のように上り降りが激しくない分、アプローチが非常に長くなっています。



ブルーレイクで午後1時を過ぎていたので昼食をとります。食事は何故か寿司です。TurangiのNew Worldに美味しい寿司があったので前日に買って冷蔵庫に入れておきました。おにぎりを作っても良かったのですが、具を作るのが面倒だったので寿司にしました。まぁ、これもおバカかもしれません。日本の寿司と違って酢をたくさん入れているようなので腐らないと考えて持ってきましたが正解でした。



ここからいよいよ最後の下りに入っていきますが、実はここからがそのアプローチが長いと書いた理由が分かります。午後2時前にブルーレイクを出てKetetahiの駐車場まで3時間弱もかかってしまいました。普通なら2時間ちょっとで下れるのですが、今回は最初から最後まで両足が筋肉痛で特に下りに入ってからは足の痛さで悶絶しそうになりながら下ってきたので相当に時間がかかってしまいました。筋肉痛の原因はただの運動不足です。いつもならコースタイムより相当早く歩くのですが、それがおばさんにも負ける速さだったので、自分としては後悔しきりでした。



私の遅い歩きのお陰で、色々な国の方々と話ができたのは逆に良かったと思っています。途中で足を痛そうにしていると、”大丈夫か?!と声をかけてくれる年配の方がとても多かったと感じました。最後には”肩を貸してあげよう!”と声をかけてくれた私より年上であろう人がいたのにはびっくりでした。それは流石にお断りしました。今回はストックを持ってきていなかったのも後悔しています。2本あれば足にかかる負荷を軽減できたからです。特に下山時の負荷は足腰には相当こたえました。私の足は片膝の半月板は若い頃の無茶な登山で損傷していますが、今回は何故かその膝が何とも無かったので、単に運動不足から来る筋肉痛だと考えています。



この付近には「Ketetahi Hot Springs」という場所で山小屋が昔ありました。ここの良かった所は小屋から歩いて天然の温泉に入れる事でした。この看板の先に湯気が出ているところが川になっていて、その川は全てお湯です。場所によっては熱いので、ちょうど良い所を探して湯船を作って入ります。今も入れるはずですが、何故か道路がクローズされています。ちょっと残念でした。



Ketetahi Hot Springsからも2時間近くかかって下りましたが、この画像を見れば分かりますが、いくら歩いても全然高度が下がりません。道は平坦で歩きやすいのですが、下らないと登山口には降りられないので下りたいですが、道がいつまでも終わらずにこんなのが延々続きます。これには流石に凹みました。歩いても歩いても全然到着しません。



午後4時50分頃にようやく下山口に到着しましたが、あと10分遅かったら最後のバスに乗れずに終わっていました。この筋肉痛が無かったら3時には降りてこれたと思いますが、ちょっと悔しい終わり方でした。しかし無事に人様の助けもなく下山できたのは良かったです。途中途中で暖かい声をかけてくれた人達がいて終えることができたのだと今では考えています。

星の撮影に来てこんな事など誰もしないでしょうが、自分的にはそれは許せないので、労苦を惜しまずに楽しめる事は楽しみたいと考えてやっています。



二日泊まってお世話になった「Oasis Motel」ですが、Turangiセンターから5kmほど離れていますが、オーナーが人なつこいので楽しめました。また温泉があったので、滞在中何度も入りましたが、ほとんど貸切状態でした。聞いた話では知らない人が多く、お湯の色が汚いという事で掃除をしていない、と思って誰も入らないそうです。しかし日本の温泉も色がついていて、それを汚いという日本人はまず居ないので、知らないとそんな事があるのだと考えてしまいました。この温泉のおかげで痛かった足もすっかり良くなりつつあります。この事をオーナーに話したらマオリの人が良く入りに来るそうで、注意書きで温泉の効能について書いた方がいいかな〜と話していました。

何れにせよ、トンガリロクロッシングは無事に歩けたので良かったです。もし星の撮影で家族などで北島へ来られたら一度はチャレンジしてみたらいいでしょう。

トンガリロクロッシングのコースは素晴らしく整備されていますが、トランパーからは一円もとっていません。日本だと登山道の整備は山小屋にぶん投げて任せていますが、こういう所は本来国がやるべき事だと考えています。環境庁主導で国の税金ですべき事だと思っています。海外から観光客を呼ぶのに一生懸命ですが、肝心な観光地の問題や課題をほったらかして登山道や遊歩道を荒れ放題に放置させるのは対外的にはマイナスです。それを山小屋という民間の所に任せているのはもっと問題です。本当に日本の自然を海外の旅行者に楽しんでもらう為には、ニュージーランドや他の自然保護先進国から学んで改善していくべきでしょう。