おやじねこのテレスコ日記

ー八ヶ岳の登山口に住んでいる、テレスコ工作工房の店長のおやじねこが日々の出来事などをタイムリーに伝えています

99年ぶりの今世紀最高の皆既日食

2017-08-23 11:16:06 | 北米カリフォルニア


ついにその瞬間がやってきました。これがまさに誰もが感動する"2分間の心揺さぶる天体ショー"です。去年のインドネシア日食では、やや不完全燃焼気味でしたが、オレゴン州まで10時間の空路と14時間のドライブでこの最高のショーを見ることができました。天候は朝のうち薄い雲がベール状になってかかっていましたが、場所を移動して、ほぼ雲無しの状態で皆既日食を見ることができました。

これで4回目の海外日食ですが、2009年のトカラ日食で中国へ行った時だけハズレで、インドネシアも何とか皆既食は見れて、後の2回はメキシコと北米で見ています。何度見ても感動する暇も与えてくれないほど僅か数分の現象ですが、今回の北米日食ほど多くの人々を感動させた日食は無かったと思います。北米を東から西に横切ったもので、皆既食を見た人の数は数千万人以上と言ってもいいでしょう。



前日泊まっていたCrater Lake付近からMadrasへ向かいましたが、Bendを過ぎて皆既帯の中に入っていくにつれて、次第に車の量が増えていることがわかりました。町のかなり前から渋滞が始まって、Madrasへ入る頃には、空き地という空き地、駐車場はすべて日食を一目見たいという人々のテントや車で埋め尽くされていました。ためしに、あるテントスペースの使用料を聞いてみたところ、50ドルと言われました。スペースにはレンタルトイレが置いてあるだけで、普段はただの空き地です。それでも50ドルは安いほうだとわかったのはその後でした。



Madrasで当初観測するつもりでしたが、あまりの混雑ぶりと、明日の天気が心配だったことがあり、急きょ観測地をJhon Dayへ変更しました。車を26号線で走らせていると、Jhon Dayだと明日戻ってくるのに渋滞に巻き込まれやすいことに気がつき、一つ手前のミッチェルという極々小さな町に変えました。Madrasから移動する途中はあちこちにキャンパーバンや車が止まっており、もう皆既帯の中ならどこでもいけるということで、とんでもないことになっていました。



とにかくこんなに凄い皆既食は初めてで、Madrasへ向かう途中のガソリンスタンドでも話題は日食のことばかりで、後はどこで観測するかだけにその興味が集中していました。



日本のある旅行会社がキープしている唯一の芝生のグランドです。学校の所有地なのですが、そこをすべて借り切っているようでした。これが原因かどうかわかりませんが、ある天文協会の観測敷地で話をしたら、驚くほど不機嫌でした。同じ天文ファンなので少しは話ができると考えていましたが、後で気が付いたのですが、小さな町の中で最高の観測スペースを日本人がお金で買い上げたことで、自分たちが使いたくても使えなかったことがその原因かもしれないと思いました。私が見たのは観光バス1台だけの日本人で40人居たかどうかですが、その人数だけであのスペースを使うには過剰な気がしました。たぶん数百人くらい入っても大丈夫そうな広さでした。



私の機材は、こんな感じです。MS-3nにプレートを介して2本の鏡筒を搭載しています。ペットボトルアダプターが大活躍です。アメリカ人にこのレモネードを使ったカウンターウェイトには関心していました。ちょうど2リッターのレモネードがベストでした。機材が軽い場合にはそれにあったペットボトルを使います。この機材には通常2個のウェイトが必要ですが、ペットボトルを使ったので2kgの重量が節約できています。



今回はこの2本の望遠鏡とCanon SX60HS単体で皆既中の動画撮影をしました。そのほかに3台のカメラを操作しておりましたので、途中訳が分からなくなって失敗もしました。何度やってもうまくいかない皆既食の撮影です。あの瞬間は本当に特別で、慣れている人でも失敗することが多いそうです。それをなくすために全て自動で撮影できるようにシステムを作ってくる人もいるそうです。途中何度か肉眼でも見ましたが、素晴らしいコロナとピンクのプロミネンスが見えました。周囲に居た肉眼で観察していた女性が感動して泣いていました。動画で撮ったものにその鳴き声も入っており、後から再生してもらい泣きするほどでした。日本人でオーロラを見て泣く人がいることは知ってましたが、皆既食で泣いている人を見たのはこれが初めてです。



この後まだ続きを書きます。



SUN SPOTTERというユニークな観測機を使っている人がいました。これで太陽黒点もきちんと見えます。安全に太陽を観察するには、とても重宝する機材です。



アメリカ人の天文ファングループが個人の土地を借りて機材を設置していますが、日本もそうかもしれませんが、一般人や他人からは一切干渉されたくない、不思議なグループです。せっかく望遠鏡などを持ってきているのに、お世話になっている地元の人たちなどに見せてあげようとは一切しないみたいです。私は撮影も大事ですが、周囲の子供たちなどに普段見ることのできない太陽望遠鏡を見てもらったりして、その喜びを分かち合いながら貴重な瞬間を楽しみたいと思っています。時にそれで撮影の邪魔をされることはありますが、大したことではありません。



このブログを書いているところは、ヨセミテ国立公園の玄関口のMersedという町です。明日はさらにロスを通り越してサンディエゴまで移動します。夜は久しぶりに会える友人らと日本食を食べに行きます。

ところで大事なことを書いておりませんでしたが、昨日、観測を皆既食が終わった直後に撤収して移動開始しました。しかし、予想と違った観測地を選んだことが災いして、酷い大渋滞に阻まれて、本来昨夜泊まるはずだったMt Shastaのモーテルへたどりつけないで、その手前100マイルほどの地点でモーテルに泊まりました。

とにかく酷い渋滞で、数百キロ以上あり皆既帯から外へ出る道路は全てだと考えておりますが、車が全く動かないくらいの歴史上こんなことがあったのかと思うほど史上最悪の大渋滞でした。私は午後7時で脱落してモーテルへ泊まったのでまだ良かったですが、今日の朝5時過ぎにモーテルを出て南下しはじめて直ぐに気が付いたのは、道路の周囲やレストエリアに車が沢山というか、ありえないほど止まって車中泊をしているようでした。あるレストエリアなどは、車がいっぱいでテープを張って警備員が見守っていました。

昨日のことがあったので、今日がその続きとなると考えて早朝の出発としましたが、大正解でした。

今回の皆既日食は、そういったことが必ず起こることは想定しておりましたが、それを遥かに超えていました。