未唯への手紙
未唯への手紙
高福祉高負担の社会意識
『福祉社会学の想像力』より
これまで国民負担率の抑制が国家目標として位置づけられてきた理由の一つには、日本では、高福祉高負担に対する国民の支持が少ないだろうという前提があったとも思われる。しかし各種の世論調査の結果では、必ずしもこれは当てはまらない。
高福祉高負担とは、高い水準の福祉を維持するためには高い水準の負担も覚悟しなければならないという考え方である。これに対して、人びとの福祉の水準を引き上げることよりも、人びとの負担を引き下げることを優先すべきだというのが低負担低福祉の考え方である。両者の中間形態ということで、中福祉中負担といった言い方がされることもある。かつては高福祉低負担の主張をする人もいたが、いまではあまり見られない。
問 A、B2つの対立する意見のうち、しいて言うと、あなたはどちらの意見に近いでしょうか?
Aの考え:税金や社会保険料などを引き上げても、国や自治体は社会保障を充実すべきだ。
Bの考え:社会保障の水準がよくならなくとも、国や自治体は、税金や社会保険料を引き下げるべきだ。
ここでは「Aに近い」または「どちらかというとAに近い」と答えた人々を「高福祉高負担」の支持者とし、「Bに近い」「どちらかというとBに近い」と答えた人々を「低負担低福祉」の支持者と見なすことにする。表5-1が、全国調査を実施した2000年、2005年、2010年の各時点でのそれぞれの支持者の割合を示している。負担低福祉の支持者もつねに3分の1くらいはいるから、これを無視することはできない。しかし多数派は高福祉高負担である。
この点は、類似の他の世論調査でも確認されている。例えば、2011年2月から3月にかけて、朝日新聞社が実施した世論調査では次のような質問項目が採用されている(朝日新聞2012.03.22.)。
問 社会保障の負担と給付のあり方を考えたとき、これからの日本は次の2つのうち、どちらの方向を目指したほうがよいと思いますか。
国民の負担を今より増やして、社会保障を維持・充実させるほうがよい。
社会保障の水準は下がってもよいので、国民の負担を今より軽くするほうがよい。
前者の回答が高福祉高負担に対応するが、その支持者は47‰こ達した。これに対し、低負担低福祉を意味する後者の支持者は36%だった。表5-1の調査のように高福祉高負担が過半数というわけにはいかないが、多数派であることには変わりがない。
国民負担率の抑制方針が打ち出された1980年代、また、潜在的国民負担率の抑制が国政の話題となり始めた1990年代について、人びとが高福祉高負担と低負担低福祉についてどのように考えていたか、今となっては調査のしようがない。しかし、少なくとも2000年代以降については、高福祉高負担の考えが多数派であるとは確実に言えそうである。
なお、朝日新聞の上述の記事に対して、経済学者の橘木俊詔氏は、「国民は福祉国家に賛意を示している」として、同紙で次のようにコメントしている。「格差社会に入って貧困者の数が増加したし、無縁社会に入って血縁、地縁、社縁が希薄となって、福祉にほころびが目立つようになった。
残された道は二つである。アメリカのように自由至上主義に立脚し、自立心を強調してほとんどを個人で解決する策か、リベラリズムの立場からヨーロッパのように社会が支援する策である。自立自助の道か、福祉国家への道か、の選択肢である。
今回の調査結果にはある程度国民の回答が示されている。……一昔前は消費税に嫌悪感の強い人が多かったのと比較すると、隔世の感がある。国民の間で負担の覚悟ができていることは評価してよい。
……国民はヨーロッパ流の福祉国家になることに賛意を表明していると解釈できる。」(朝日新聞2012.03.22.)
これまで国民負担率の抑制が国家目標として位置づけられてきた理由の一つには、日本では、高福祉高負担に対する国民の支持が少ないだろうという前提があったとも思われる。しかし各種の世論調査の結果では、必ずしもこれは当てはまらない。
高福祉高負担とは、高い水準の福祉を維持するためには高い水準の負担も覚悟しなければならないという考え方である。これに対して、人びとの福祉の水準を引き上げることよりも、人びとの負担を引き下げることを優先すべきだというのが低負担低福祉の考え方である。両者の中間形態ということで、中福祉中負担といった言い方がされることもある。かつては高福祉低負担の主張をする人もいたが、いまではあまり見られない。
問 A、B2つの対立する意見のうち、しいて言うと、あなたはどちらの意見に近いでしょうか?
Aの考え:税金や社会保険料などを引き上げても、国や自治体は社会保障を充実すべきだ。
Bの考え:社会保障の水準がよくならなくとも、国や自治体は、税金や社会保険料を引き下げるべきだ。
ここでは「Aに近い」または「どちらかというとAに近い」と答えた人々を「高福祉高負担」の支持者とし、「Bに近い」「どちらかというとBに近い」と答えた人々を「低負担低福祉」の支持者と見なすことにする。表5-1が、全国調査を実施した2000年、2005年、2010年の各時点でのそれぞれの支持者の割合を示している。負担低福祉の支持者もつねに3分の1くらいはいるから、これを無視することはできない。しかし多数派は高福祉高負担である。
この点は、類似の他の世論調査でも確認されている。例えば、2011年2月から3月にかけて、朝日新聞社が実施した世論調査では次のような質問項目が採用されている(朝日新聞2012.03.22.)。
問 社会保障の負担と給付のあり方を考えたとき、これからの日本は次の2つのうち、どちらの方向を目指したほうがよいと思いますか。
国民の負担を今より増やして、社会保障を維持・充実させるほうがよい。
社会保障の水準は下がってもよいので、国民の負担を今より軽くするほうがよい。
前者の回答が高福祉高負担に対応するが、その支持者は47‰こ達した。これに対し、低負担低福祉を意味する後者の支持者は36%だった。表5-1の調査のように高福祉高負担が過半数というわけにはいかないが、多数派であることには変わりがない。
国民負担率の抑制方針が打ち出された1980年代、また、潜在的国民負担率の抑制が国政の話題となり始めた1990年代について、人びとが高福祉高負担と低負担低福祉についてどのように考えていたか、今となっては調査のしようがない。しかし、少なくとも2000年代以降については、高福祉高負担の考えが多数派であるとは確実に言えそうである。
なお、朝日新聞の上述の記事に対して、経済学者の橘木俊詔氏は、「国民は福祉国家に賛意を示している」として、同紙で次のようにコメントしている。「格差社会に入って貧困者の数が増加したし、無縁社会に入って血縁、地縁、社縁が希薄となって、福祉にほころびが目立つようになった。
残された道は二つである。アメリカのように自由至上主義に立脚し、自立心を強調してほとんどを個人で解決する策か、リベラリズムの立場からヨーロッパのように社会が支援する策である。自立自助の道か、福祉国家への道か、の選択肢である。
今回の調査結果にはある程度国民の回答が示されている。……一昔前は消費税に嫌悪感の強い人が多かったのと比較すると、隔世の感がある。国民の間で負担の覚悟ができていることは評価してよい。
……国民はヨーロッパ流の福祉国家になることに賛意を表明していると解釈できる。」(朝日新聞2012.03.22.)
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