高麗橋桜花 徒然日記ー料理人はどこまでできるのか ー

「高麗橋桜花」店主・「大阪食文化研究所」主宰森田龍彦のブログです。どうぞご贔屓にお願い申し上ます。

第24回 浪速魚菜の会

2006-03-27 | 農業・食育・食文化について

 今日は、浪速魚菜の総会が難波のホテル一栄にて行われました。

 今回の講演は、「こんぶ土居」の土居成吉さんによる昆布を通じてのこだわりの食材を伝える大切さと、大果大阪青果野菜部の赤嶺さんによる中国野菜の輸入についてです。

 こんぶ土居さんについては、以前にもこのブログにて書かせて頂いています。大阪の出汁文化の下支えになっておられるこだわりのある昆布屋さんです。今回の講演は、昆布の話もそうですが、昆布を通じて如何にこだわりのある食材を守り・消費してもらうかというテーマでお話して頂きました。 

 良いものを作りには、生産者さんとの付き合いを重ねることが必要。顔の見える関係から更に発展して、ものを言い合える関係を目指しているそうです。また、生産者さんと直接やり取りを行うのではなく、間に信頼できる業者を経由しているそうです。一見、無駄のように思われるますが、実はこれには理由があります。それは、獲れる昆布がすべて上質な訳ではありません。良いものばかりをより分けるとその分、生産者さんに負担がかかってしまいます。そこで、業者を間に挟むことにより、上質な昆布を選別でき、尚且つそうでないものもしっかり消費される。また、業者がしっかりしていれば、良質の昆布はより消費や注目される機会が増えることになります。目からうろこが落ちるような思いでした。確かに、そうすれば知名度なども上がり、多くの消費が生まれれば良質の昆布がもっと身近な存在になるのですね。こういう、いろいろな方を巻き込んだ普及の仕方を考えないといけないなと思いました。

 最後に、土居さんから料理人へのメッセージがありました。

 科学調味料を使わないで欲しい。-安易に料理の味付けをすることなく、しっかり素材そのもの持ち味を活すような料理を作って欲しい。そのために良い食材を使い、そしてお客様に感動的な味を提供して欲しい。

 私も土この想いにしっかり応えられるような料理人でいたいとと思いつつ、土井さんの熱い思いに改めて感服していました。

 続いては、大果大阪青果野菜部の赤嶺さんのお話。

 昨年、日本の生鮮野菜輸入量は、とうとう100万トンを超えたそうです。4年程前に、中国での残留農薬が問題になった2年間は減少したそうですが、やはり輸入野菜の増加に歯止めはかからなかったそうです。これには、実は天候の影響もあり、2年前に数多くの台風か日本に上陸し、農産物に大打撃を与えました。それを補うために、緊急輸入が行われ、それに伴い再び輸入量が増加したそうです。輸入量が増えるのに反映して、価格が下落します。大量の野菜が、しかも低コストで輸入される。そういう状態が近年、日本では続いているそうです。

 また、日本の良質の種が中国に流失し、それが再び日本に輸入されるケースも多々有るそうです。今、日本国内では完成度は別としてもJAS法・エコ認定などで、農薬や化学肥料の量を抑える流れにあります。今後、この流れは輸入野菜にも向かい、何処まで対応できるかは未知数ですが農薬量なども規制を強めるそうです。

 価格や便宜性の面では、やはり輸入野菜の方が格段に身近になってしまいました。この現実を踏まえて、これからどのような価値基準で食材に接するかが、これからの日本の自給率に大きく関係してくるのでしょうね。

 浪速魚菜の会は、大阪の伝統野菜の継承に留まることなく、大阪府下で作られる良質の生産者さんの支援であったり、それも求める消費者のパイプ役だと思っています。その延長上に、大阪の食文化の継承や発展、育成があるのだと思います。そんな活動に携ることが出来ることをとても嬉しく思うし、自分の出来る範囲でしっかり行って行きたいと思う一日でした。

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チャレンジ畜産in大阪

2006-03-26 | 農業・食育・食文化について

 都市化が進んだ大阪でも数は多くは無いですが、家畜が飼われていることをご存知でしょうか。
 少しでも畜産を理解してもらいたい、そして、大阪府内で生産した良質な畜産物を知ってもらいたいという熱い思いを持った方々おられます。そのグループの名前が、チャレンジ畜産 in オオサカ 通称 CHAO(チャオ)です。

 今回は,CHAOの方々のお話をお聞きする事が出来ました。

 実は、以前に浪速魚菜の会で、このチャオの会員でもある犬鳴ポークの川上さんとお話させて頂いたことがありました。その時に、大阪にも畜産でもこだわりを持った方々の集まりがあることをお聞きしていました。まだ、その時の私は今のように強い気持ちで大阪のこだわりのある食材を広めたいという気持ちを持っていなかったので、そんなに深く心に留めておくことはありませんでした。 

 今、私が料理の監修を務めているささゆりの里では、ようやく厳しい冬が過ぎようとしています。いよいよ、春の息吹とともにお客様も多くなります。今までは、魚菜代表の笹井さんを通じて集められたこだわりの野菜達を献立の中心として来ました。今後もそれは変わり無いのですが、その中に大阪で作られる畜産物もなんとか取り入れたいと思っているのです。そして、食べてもらったお客様に喜んでもらい、また大阪にもまだまだこだわりのある畜産が行われていることも知ってもらいたいと考えています。

 当日になって知ったのですが、チャオの皆さんはわざわざ私の質問に答えてくださるために集まっていただいたそうです。(知った時は、かなり恐縮でした。) 部屋の末席で、皆さんのお話をお聞きできればと思っていたので、何の準備もしていなかったのですが、まずは私の自己紹介と今の思いや活動をご説明しました。チャオの方々も、一人一人自己紹介をしてくださいました。ともて丁寧な対応に、皆さんの懐の深さを痛感させられました。これは実際に生産者見学を行くようになって感じることなのですが、本当に信念をもっておられる方程、相手の肩書き関係なしに接してくれます。今回もその事を痛感しました。

 都市化が進んだ大阪の中で、よほどのこだわりがなければ続けて行く事ができません。そんなこだわりを持った方々のお話を少しご紹介。

 良い鴨の育てるために、いろいろと試行錯誤している。安心して食べてもらうために、何も隠すことはしない。いつも一番を目指して頑張っている。

 私達の食材が万人向けにはならないかもしれないが、妥協することは出来ない。子供が安心して生で食べられる玉子を作りたちという一心で養鶏に取り組んでいる。いろいろと苦労もあるが、飛び切り鮮度の良いものを届けることが出来る。

 ブランド産地名だけが先行しているが、同じ産地でも場所が少し違うだけで全然肉質は変わってしまう。本当にどのような環境で作られているのか分からないのに、ブランドだけで判断するのは悲しい。霜降りなどの見た目だけに囚われずに、高いレベルで味を追求していく。他府県の畜産関係の人を納得させるくらい、美味しい牛を育てている。

 ハチミツに水あめを混ぜているという悪い誤解を無くしていきたい。中国産など、業者が手にするまでの過程が不透明な多い。価格競争しない。大阪でこだわって養蜂できるのは、とても贅沢なこと。

 本来の牛乳は、季節によって味が変わる。また、絞りたての牛乳を置いていると、脂肪分が分離する。いろいろな法律のために、販売はできないが一度飛び切り新鮮な牛乳の飲んでもらいたい。

 明治時代、大阪のアヒルなどの飼育は全国でも80%のシェアを誇っていたそうです。大阪の山は低くて伏流水にならないため、稲田のための溜め池が多く作られました。豊臣秀吉の時代、その溜め池に鯉などを放し、野鳥達が集まったのを飼育し始めたのが始まりだそうです。昔の大阪では、合鴨は土用の鰻とともに夏バテ予防の貴重な食品だったそうです。ちなみに、合鴨はアヒルと真鴨の交配種でアイガモと言う名前を考案し、<合>という漢字をあてた人が、現在のチャオの会長津村さんの曾おじいさんだそうです。

 どうですか、大阪のこだわりの畜産。いろいろとお話をさせて頂いて、本当に嬉しくなりました。都市化が進む中で、いろいろと創意工夫をこらしてこだわりのある食材を作られている方々。その熱意や思いが凄く伝わってきました。大阪の食文化の底力を感じました。

 今度は、是非現地を見学させて頂きたいと思っております。その時は、またブログに書きますのでお楽しみにしてください。本当にチャオの皆様には、お世話になりました。ありがとうございました。

 

 

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大阪の生産者さんと若手料理人の交流会

2006-03-23 | 農業・食育・食文化について

 大阪府農業会議 大阪府農業法人協会主催 浪速魚菜の会後援にて、農業経営者と若手料理人の交流会を行いました。

 この交流会は今回初めての試みで、大阪でこだわりの持って農業に取り組まれている生産者さん10名と大阪で活躍中の30台前後の若手料理人10名によるコラボレーション企画です。生産者さんが食材を料理に提供し、料理人がその食材を使って料理を作る。テーマは、その食材の味を活かした料理。和・仏・伊、それぞうれの異なるジャンルの料理人が、担当の食材をそれぞれの感性で料理する。ありそうで、無かった交流会です。

060322_1340   右がエプバンタイユの若いスタッフが提供してくれた、蓮根のバルサミコ和えー蓮根を薄切りにして酢と塩入りの水で湯掻く。粗熱をとり、軽く煮詰めたバルサミコで和える。

 左は、ナジャの志摩シェフが作ってくれました、鱒と蒟蒻のアッシ・クリューミンチ状にした鱒・蒟蒻を混ぜ合わたオードブル。

 

060322_1341  右は伊万邑さんに作ってくださった菊菜と鶏ササミと苺のソース・酢味噌掛けー茹で菊菜と酒蒸しして細かく裂いたササミを盛りつけ、苺のピュレと酢味噌の2種類をかけます。

 左は

サグラの溝口シェフが作ってくれた、鶏肉のボーリット サルサベルデーブロードで裁いた鶏肉をゆっくり火を通したもの。サルサベルデは、パン粉・ゆで玉子・エシャロット・オリーブ・パセリ・マジョラム・ビネガー・オリーブオイルをミキサーで混ぜたもの。

060322_134000  左は、このはのご主人 田中さんの若牛蒡のふくめ煮ー葉と茎と根を分けて湯掻き、茎と根を出汁で焚いたもの。(葉は金山寺味噌和えに)

 右は恥ずかしながら、私の小松菜とクリームチーズの寒天寄せー小松菜を湯掻き、クリームチーズ・おぼろ昆布を挟みました。湯掻き汁に寒天と少量のゼラチンを煮溶かして、固めました。

 他にも、びわともさん、元アンビエンテの鈴木シェフがしろ菜と水菜のエルバッツ、ヴァントーズの吉田シェフがトマトのグラス・茄子のタルトを、花祥の山本さんが豆苗のお浸し長芋の加減酢を作ってくださいました。また、以前に酒蔵見学でお世話になりました中尾酒造さんに特別参加して頂きまして、中尾さんの地元農家さんを巻き込んだ酒作りの取り組みや思いを語って頂き、試飲もさせて頂きました。

  今回、私は料理人側の窓口となり、いろいろとお手伝いさせて頂きました。初めてのことだったので、至らなかった点もあったかもしれません。ですが、終了後に生産者さんの皆さんがとても喜んでくださり、また料理人の方々もまた次の機会があれば参加したいと言って下さったので、ほっと一安心しました。大阪の腕利きの若手料理人とこわだり野菜の出会いは、私自身にも多くの刺激といろいろな気付き・、とても有意義な時間となりました。

 こうやって、少しでも生産者さんと消費者(今日は料理人ですが)との関係が、今よりももっと身近に感じることが出来れば、もっと大阪の食文化は充実するのでは強く感じました。ここで得たものを多くの方々にフィードバックできるように頑張ります。

 最後になりましたが、参加していただいた生産者さん、料理人の方々、そしていろいろとご協力頂いた方々に心より感謝、ほんとうにありがとうございました。

 

 

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こだわり金ゴマとささゆりの里訪問記

2006-03-19 | 農業・食育・食文化について

 今年最初のまんでい会の集まりがありました。それぞれ、仕込みなどの都合があるので、朝の九時からスタート。

 まずは、ニューオオタニ オオサカで行われているミシュラン2つ星シェフを招いてのレクレィエールフェアに同行されてきた、フランス人のコンサルタントの方からのご挨拶。「今のフランスは美味しいもの・たくさん食べることを求めすぎ。今回の訪日で、日本の食材や微妙な味付けを学びたい」とおっしゃってました。

 その後に、和田萬の和田大象さんから胡麻についてのお話がありました。

 和田萬さんは、創業100年を超える胡麻の専門店。専務の大象さんが7つの問題を通じて、いろいろと胡麻について教えてくださった。まず、一番驚いたのが胡麻の99.9%が輸入品だったこと。年間消費16万トンの内、国産は僅か160kg。その半量が油して消費されているそうです。和田萬さんでは国内の15エリアで契約栽培を行っていて、国産の50%以上を確保しているそうです。流石にそれだけではまかなえないので、金胡麻はトルコで無農薬で栽培を行っているそうです。

060317_1012  胡麻の種類は金・白・黒胡麻の3種類。特に栄養価の違いがあるわけではないそうですが、金胡麻の油分が一番多いそうです。(金胡麻の胡麻油を試食させて頂きましたが、くどさが全然無くて風味は豊かです。これを胡麻和えに少し加えるだけでかなり美味しくなりそうです。)特徴としては、金胡麻のコク・黒胡麻は風味・白胡麻は後口の余韻、という感じですかね。 また、胡麻は健康食。抗酸化作用や悪酔い防止・解毒作用などなど。アンチエイジングにとても良さそうですね。(画像はどっちの料理ショーにも取り上げられた発芽胡麻ペースト。)

 なにせ、和田大象さんはかなりパワフル。そして、本当に胡麻のことが大好きなのが、バンバン伝わってきました。試食させて頂いた商品もかなり良質で、美味なものが多かった。今度、一度お店に直接お伺いさせて、いろいろと勉強させて頂こうと思っています。

 まんでい会終了後、こんぶ土居さんへ。先日、土居さんにお伺いしたばかりだったのですが、丁度おいしいおぼろ昆布が欲しかったのでグットタイミング。 ちなみにとろろ昆布とおぼろ昆布の違い、知っていますか。 昆布の表面を薄く削ったものがおぼろ昆布・昆布を重ねてその側面を削ったものがとろろ昆布になります。なので、とろろ昆布を良く見ると繊維の層で出来ているのがわかります。(市販のものは酢の味が効き過ぎていて、折角の昆布の味がほとんどしませんよね。)

 土居さんを後のして、いざ高槻はささゆりの里へ。

 今回はゴールデンウイーク明けからの献立の試食とミーティング。今年は寒波も厳しく、野菜の発育が全体的に遅れていて端境期が例年よりも長いので、献立作りにも苦心します。しかも、生産者さんから直接届く食材しか使わないので、かなり制約があります。(でも、これが本来の姿なのかもしれませんね。) 

 今回の献立の主菜は、貝塚早生玉葱と地鶏の陶板焼きです。玉葱の甘みと地鶏の旨み、旬の葉物野菜を自家製のお味噌で和えて食べていただこうと思っています。他にも、泉州の蛸を旨煮にしたり、亀岡から有機栽培の味の濃い菊菜が入荷しているので、これを炊き込みご飯にした若菜ご飯でお客様に喜んでもらおうと思っています。

 良いお客が良い料理人を育てると言われますが、ささゆりの里の試食でも浪速魚菜の代表の笹井さんを始め、現場のスタッフからいろいろと意見や提案が出てきます。時には作り手の意図が伝わらなくてがっかりすることもありますが、自分では思いつかなかったことや見落としていたことを再発見することも多々あります。特に、私がいつも在中してる訳では無いので現場で頑張ってくれているスタッフの意見はとても貴重だし、しっかりとコミュニケーションをとって少しでもお客様に喜んで頂けるような料理をスタッフ全員で提案していきたいと強く思っています。

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事業計画ー立地編ー

2006-03-15 | 創業について

 今回のエスパコンサルティング 松村先生との面談は店舗の立地についてでした。

 今、私が候補地に挙げているのが靱公園から肥後橋までの地下鉄四ツ橋沿いのエリアです。梅田からも近いですし(少し頑張れば徒歩でも可能ですか?)、規模の大きいお店は無いけれど、オーナーシェフが切り盛りする良質のお店が多いと思います。自分のその中で切磋琢磨して、より進化していきたいと考えています。

 私の事業計画も自分の棚卸から始まって、経営理念(自分が目指すべき目標)をしっかり持てることができました。「浪速地野菜・食材の料理を通して生産者さん・食文化の発展及び食育・人々の健康増進に貢献する。」という目標を具体的にして、お客様に体感して頂くお店。そのお店を創業するという事業計画もいよいよ立地や客単価など、より具体的になってきました。

 今回の立地について、松村先生から面・点・線を大事にしてくださいというアドバイスを頂きました。面は商圏・点は店舗物件・線は人の流れ、導線を意味します。私が目指しているのは美食の世界ではなくて、「食」の再発見です。いつも何気なく食べている野菜の味をしっかりと引き出すこと、あまり知られていない大阪で作られるこだわりの食材を通じて大阪の食文化を感じてもらいたいな、と思っています。なので、できるだけ行き易くて駅から歩いて行ける場所・家賃が高くなりすぎないこと(客単価に反映してしまうのが嫌なので。)・来て頂いたお客様がリラックスして食事を楽しんでもらえること。そういう意味で、今回考えている場所は、くいだおれの大阪の流通を支えた土佐堀川から近くて、北やミナミと比べると静か。それに、奇遇にも今年の一月に行われた大有件の20周年記念パーティーが行われた場所でもあります。

 これからクリアーしていかないといけない問題はたくさんあると思いますが、私の活動を支えてくれている方々のご支援を糧に、しっかり実現できるように頑張りたいと思います。皆様、これからもよろしくご声援お願い致します。

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