古稀の青春・喜寿傘寿の青春

「青春は人生のある時期でなく心の持ち方である。
信念とともに若く疑惑とともに老いる」を座右の銘に書き続けます。

中野先生の仮説(1)

2012-05-30 | 経済と世相
『レジーム・チェンジ』(NHK新書、12.03・30刊行)という本を読みました。

筆者は、中野剛志・京都大大学院工学研究科准教授、経産省課長を経て現職です。

 この本は、デフレと新自由主義とEU問題について、面白い仮説を提起しています。

 筆者の提示する仮説の数々をご賞味ください。

1.新自由主義はデフレ対策には無効。
 新自由主義とは、「小さな政府」、「民営化」、「規制緩和」、「自由化」、

「グローバル化」といった主張を特徴とする。

 筆者はデフレを「需要不足/供給過剰」と定義する。逆にインフレは「需要過剰/供給不足」である。

いわゆる新自由主義な考えに基づく「構造改革」は供給力を増やす改革であるから、デフレには効かない。

 新自由主義は、「市場原理主義」とも呼ばれるように、自由市場の価格メカニズムが資源配分を最適化し、

経済を最も効率化すると考えている。市場原理が有効に機能するように、

規制を緩和したり撤廃したりすれば、経済が効率化し、生産性が向上する(つまり供給が効率化する)

と考える。供給の効率化は、インフレには効果がある。新自由主義はインフレ対策だった。

 また、労働市場の自由化(雇用の流動化)は、

企業がより低い賃金の労働者を容易に雇用できるので、賃金を引き下げるデフレ圧力になる。

さらに、新自由主義者は、金融市場の自由化を進めれば、

金融市場が最も生産性の高い企業を見つけ出して資金を流しこむ筈と信じて、グローバル化を大いに歓迎する。

 そして、新自由主義は、公務員の数が少ない「小さな政府」を理想とするが、

公的な雇用の機会を減らすことは、需要抑制策になる。

 実は公的な雇用は、営利を目的としない雇用機会を創出するので

最低賃金レベルの労働需要を無限に増やすことが可能である点、特に重要である。

2.レーガン・サッチャーの構造改革はインフレ対策だった。
 80年代初頭、アメリカやイギリスが直面していた経済の問題とは、デフレではなく、

悪性のインフレでした。両国は、物価の下落ではなく上昇に苦しんでいた。

レーガンやサッチャーが断行した新自由主義的な改革とは、インフレを退治するための処方箋だった。

いわば、インフレを収束させるために、あえて人為的にデフレを起こすというのが、新自由主義的な改革の要諦だった。

 ところが、90年代初頭のバブル崩壊によって日本が直面した問題は、極端な資産価格の暴落でした。

当時の日本は、レーガン政権やサッチャー政権が直面していたインフレとは全く反対の、

デフレを克服するための対策を講じなければならなかった。

にもかかわらず、日本は、レーガン政権やサッチャー政権の新自由主義を見本に、構造改革を推進した。

 デフレに転落しようというまさにそのときに、

インフレ退治のために人為的にデフレをおこそうという政策を実行。しかも、それを10年以上も続けた。

日本経済が構造改革とともに深刻なデフレに陥り、そこから抜け出せなくなったのも、当然である。(続く)

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