古稀の青春・喜寿傘寿の青春

「青春は人生のある時期でなく心の持ち方である。
信念とともに若く疑惑とともに老いる」を座右の銘に書き続けます。

リチャード・クーさんの外交・軍事論(1)

2010-12-25 | 経済と世相
リチャード・クーさんの外交・軍事論を『良い財政赤字 悪い財政赤字』から紹介します。(2001年の本ですから、勿論尖閣沖の事件は出ていませんが、日本の外交・軍事を考える上で参考になると、内容を要約して紹介します。

 最初は、何故中国が尖閣に拘るのか?

 簡単に言うと、中国共産党は、経済政策では失敗したので、共産党政権の正当性(共産党一党支配の正当性)を主張できる根拠は、中国の領土から外国人を追い出したと言うことだけ。だから領土問題は彼らにとって絶対に譲れない問題になっている。そのくだりです。

【今の中国は歴史を折り曲げても台湾の領有に固執する(後述)のか。それは、今の北京政府にとって台湾問題は、自分たちの政権の正当性に直結した問題になっているからだ。

 共産主義の経済政策は、実質的に失敗だったことは明らかだ。中国共産党もそれを認めざるをえず、だから資本主義経済の導入をすすめた。そうなると、彼らの存在意義は、「共産党による中国の完全統一」というものしか残らない。実は今の共産党政権にとって、中国の領土から外国勢力をすべて追い出したということが最大の成果であり、また誇りなのである。そして中国全土の統一が悲願として残されている。

 中国は、フランスに、イギリスに、ドイツに、そして日本に踏みにじられ、租借という形で実質的な植民地支配が100年以上も続いた。中国に乗り込んできた外国勢力は「犬と中国人は入るべからず」と公園の入り口に表示を立てた。

 中国の、外国に蹂躙された戦前の中国を知っている世代は、民主主義だとか自由主義、または人権などという概念を、我々とまったく違う受け取り方をしているかもしれない。これらの理想の体現である英仏は、中国人に対してアヘン戦争をも含め、非道なことをやってきた。ヒトラーは「英仏は自国内でのみ民主主義を実行している」と言ったと伝えられるが、当時はまさにそうだった。

 彼らからしてみると、欧米や日本が五十年前まで中国でやってきた極めて非人道的なことをすべて忘れて、中国では人権が守られていないとか、民主主義が確率していないと非難してくることに、すごい怒りを感じている。

「我々が『犬と中国人、入るべからず』などという屈辱的な扱いを打破した」という高いプライドと実績。これが中国共産党のレゾンデートルの根底にあって、この共産党政権から見ると、台湾が自分たちの領土になっていないというのは、彼らのプライドにナイフが突き刺さっているようなものなのである。

 同じ対立でも朝鮮半島に比べて中台問題がはるかに解決が難しいのはいくつかの理由がある。第一に、韓国と北朝鮮は対立していたが、その一方でお互いの存在は認めていた。お互いの存在を認めるということは、当事者同士がその気になれば、どのような外交手ゆ月で話し合いを始めるかは、極めてはっきりしている。

 ところが中台問題の一方の当事者である中国は、台湾に合法的な政府が存在することさえ認めていない。彼らの解釈では、台湾にある「政府」は同じ中国人による「反乱軍」なのである。】(続く)

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