古稀の青春・喜寿傘寿の青春

「青春は人生のある時期でなく心の持ち方である。
信念とともに若く疑惑とともに老いる」を座右の銘に書き続けます。

植物学者の文明論(1)

2012-09-03 | 読書
植物学者の湯浅浩史さんが、面白い本を出したと聞き、大学図書館で借りてきました。
『植物からの警告』(湯浅浩史著、ちくま新書12年7月刊)です。
著者は、1940年生まれ。書名の意味は、
【動物と違い植物は動くことができません。動物よりも、環境と強く結びついている。ひとたび環境が激変すれば、植物は枯れていくしかない。
 たとえば、降雨量がいちじるしく減少した土地では、耐性の強い植物の親はなんとか生きながらえることができますが、子ども(苗や若木)はそうはいかない。親の周りに、その子どもがまったく見られない。植物の「高齢化社会」です。こうした問題が生じている場所が世界中には沢山あって、高齢化の危機に直面している植物は少なくない。
 植物たちは、今起こりつつある環境変動を身をもって体験し、その激烈さを私たち人間に警告している。】
 本川達雄先生は、生物学者の文明論を展開していますが、湯浅先生は、植物学者の文明論をこの書で展開しています。(湯浅先生の主張は、下記で見ることができます。
http://www.athome-academy.jp/archive/biology/0000000117_all.html
私の読書感想文より、このサイトのほうが分りやすいかもしれません。)
 【「地球温暖化」という言葉からは、問題の元凶を気温の上昇だけに集約するような印象を受けます。問題の本質を正確に表してしていない。「気候変動」と言う言葉のほうがより適切です。地球温暖化の危機を強く主張する人は、気温が数度高くなると警告しておりますが、気温上昇が及ぼす影響よりも雨の降り方が変化する影響のほうが、環境に与えるインパクトという点でずっと過酷です。
 乾燥地では、まったく雨が降らないかと思えば、翌年には信じられないくらい大量に降る。温暖化の場合、気候の変化は数度の上昇ですが、降水量の場合はゼロか一かというふうに極端にあらわれている。】
 植物にも「高齢化社会」があるという話。
 筆者は、マダカスカル島の巨木バオバブの研究を40年来行っているそうですが、近年、マダカスカルでは雨の降り方に変化が生じている。バオバブの種子は、水が十分にない環境では芽を出しません。種子の大きさはギンナンより少し小さいくらいで殻がとても堅い。  この堅い殻がたっぷりとした水でふやかされないと、バオバブは発芽しない。たとえ発芽しても、その後に雨が適度に降り続けないと、大きく育つことができない。
マダカスカル西部の観光名所になっているムルンダヴァなどの地域では、バオバブの次の世代が育っていない。若い木がまったく見当たらない。
地球に優しい」って
マダカスカル南部では見渡す限りのアルオウデイアという多肉植物、地球の気候変動で雨の降り方が遅くなり、種子をこぼす時期に雨が降らず発芽が困難になっているのですが、林を切り倒して広大な面積のサイザル麻畑がつくられました。サイザル麻は、昨今のエコ・ブームによって、にわかに需要がたかまった。ナイロンのような石油製品とは異なり、サイザル麻は「地球に優しい」。なぜなら燃やしてもダイオキシンを出したり、環境に過度なダメージを与えない。そうした理由でヨーロッパなどに繊維として輸出されている。
 しかしその結果、アルオウデイアの林に住む、シファという原猿は住む場所を失いつつある。(つづく)

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