古稀の青春・喜寿傘寿の青春

「青春は人生のある時期でなく心の持ち方である。
信念とともに若く疑惑とともに老いる」を座右の銘に書き続けます。

讃岐うどんの話

2009-03-19 | 読書
先日のマラソンに出かける時、新幹線の中で読もうかと「辺境・近況」(新潮文庫)という村上春樹の本を、ポケットに入れました。マラソンの旅には、作家にしてマラソンランナーの春樹の本がふさわしいだろうと、思ったのです。

 この本、彼の旅行記を纏めた本で、「ノモンハンの鉄の墓場」という旅行記が載っていたので、最近、本屋で衝動買いしたものです。

 でも、今日は「ノモンハン」でなく、讃岐うどんの話題をこの本から紹介します。

「讃岐・超デイープうどん紀行」という章が載っていました。

【香川県という土地には・・・・うどん屋さん以外に何もないんじゃないかという気がしてくるくらい見事にうどん屋さんが多いのだ。

 四国に着いて最初に入ったうどん屋では、店に入るとまずおろし金と長さ20センチくらいの大根がテーブルに運ばれてきた。なんだこれは、と思ってまわりを見ると、客がみんなまじめな顔をしてこしこしこしこしと大根をおろしているのである。・・大根をおろすというのは本質的に個人的な作業なんじゃないかとふと思った。孤高な作業というほどのものでもないけれど、かといってあまり団体で揃ってやるものではない。・・・

 大根と一緒にすだちが運ばれてくる。テーブルの上には七味と葱と生姜が置いてある・・・それから醤油とチューブ入りの練りわさびと味の素。・・・香川県の多くの人はうどんに味の素をかけて食べるのである。

 それからどうしてうどん屋に醤油が置いてあるのか疑問に思われる方もいらっしゃるかもしれない。これは、うどんにかけて食べるのである。つまり冷たいうどんが運ばれてくると、客はそこにじゃばじゃばと醤油をかけてそのまま食べてしまうのである。これは「醤油うどん」と呼ばれる。・・・蕎麦でいうとちょうど「もり」の感覚である。・・・

 このうどん屋さんは「小懸家」という店で、かなり有名な店らしい。】

【次に行ったのが丸亀の近くにある「中村うどん」だが、ここは文句なしに凄かった。・・・ひどく交通不便な場所にあるうえに店の場所もわかりにくいので、一般旅行者にはまったくお勧めできないけれど・・・苦労していくだけの価値のあるうどん屋である。

 この店はほとんど田圃のまん中にある。看板も出ていない。入り口には一応「中村うどん」と書いてあるのだが、それもわざと(だと思うけれど)道路から見えないように書いてある。

 うどん屋というよりはむしろ建設現場の資材小屋みたいに見える。間に合わせみたいな小さなテーブルがいくつか並んでいるだけである。・・・ここの店では客が並べて置いてあるうどん玉を勝手にゆがいて、だし汁なり醤油をかけて食べ、勝手に金を置いて出てゆくのである。

 もう18年うどん屋をやっとるなぁ、と中村子は言う。その前は養鶏場やっとったんやけどなぁ、前に製材所ができてうるそうなってなぁ、鶏が卵うまんくなってしもうてなぁ、そいでうどん屋始めたんや、ということであった。養鶏場から突然うどん屋に商売変えするという発想も大胆だと思うのだが、香川県ではそれほど不自然なことではないのかもしれない。

 うどん屋の建物の裏は畑になっていて、そこには葱が植えてある。お客の証言によると、昔「おっちゃん、葱がないで」と文句を言ったら、「やかましい、裏の畑から勝手に取って来い」と中村父に叱られたそうである。

 「中村うどん」ではうどんを二本の足で踏んで捏ねる。捏ねる機械がないと保健所は営業許可をくれないから、開店のときにはいちおう中古の機械を入れて置くけれど、その検査がおわってしまうとあとは機械なんか使わないで、ずっと人間の足で踏んで作っている。】

 とまぁ、こういう話が次々出てくる紀行文です。ホンとかな?と思っていたのですが、17日朝のNHKの「生活ほっとモーニング」で、似たようなお店が紹介されていました。

追伸:知人から本稿に関し次のURLの紹介を頂きました。
http://www.flour-net.com/blog/prox.html

http://www.flour-net.com/blog/spre.html


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