古稀の青春・喜寿傘寿の青春

「青春は人生のある時期でなく心の持ち方である。
信念とともに若く疑惑とともに老いる」を座右の銘に書き続けます。

オバマケア

2015-07-12 | 経済と世相
『沈みゆく大国アメリカ』という堤未果さんの本を読みました。
「逃げ切れ日本の医療」を副題とする同書から面白い話題を紹介します。
 2010年に導入されたオバマケアの実態。
 この法律では、生活保護を受けるほど貧困ではないが、民間保険を買うには所得が少ない国民に、栄府から月々保険料の一部が補助される。
しかし・・・
 大統領が公言した「オバマケアで年間2500ドル下がる」とは裏腹に、保険料は値上がりを続け、中間層を中心に医療費支出の増額に悲鳴を上げている。しかも、これからは保険を持っていなければ罰金だ。2015年は大人一人につき年間325ドル、子供一人につき162.5ドルまたは年収の2%のどちらか大きい額が罰金として踏襲される。
 政府がさまざまな条件を課す民間の<オバマケア保険>は、大量のルールと提出書類の煩雑さ、それに国からの治療費還元率の低さから多くの医師が(オバマケアによる)診療を拒否して、政府補助をもらい、せっかく保険証を手に入れても、肝心の医者が見つからないケースが続出している。月々の保険料が安いプランを政府の補助で手に入れても、いざ治療を受けようとすると免責額が高すぎて払えないという声も各地で拡大してきた。
つまり、オバマケアは、民間の健康保険に、政府が補助金を出すから加入しなさいという制度で、日本の健康保険とは全然違う制度です。日本の健保は社会保障ですが、オバマケアは文字通り保険なのです。
次は「キューバの医療」の話題。
「(日本の医療は)正しい方向で国が進めれば、経済成長もできて医療問題も解決できる。そうなったらキューバのように、世界に胸を張って医師や医療を輸出すればいい。武器や原発を輸出するより、ずっと尊敬されると思いますよ」
 そう、キューバの「医療外交」は世界中から注目されている。
 アメリカの経済制裁で苦しめられているキューバは、後ろ盾だった旧ソ連の崩壊後も、乏しい国家予算を国民の健康を守るための地域医療に投資している。
 革命後、キューバは国内全地域にかかりつけ医を配置し、医師と看護師が各地域住民の健康・予防・治療の3点セットを担当するシステムを整備した。必要があればそこから専門医のいる病院などに紹介される。「国民は治療を受ける権利がある」と書かれた憲法50条にそって、治療はすべて無料。だが担当医が地域住民の生活を丸ごと把握しているため、早期発見、早期治療で医療費は先進国よりずっと低く抑えられている。経済制裁によって輸入が制限されている医薬品の生産は自国内で行い、完全無料の医科大学を設立し、国内外の医学生に開放した。
 こうした政策の結果、キューバは低い国民所得で先進国並みの平均寿命と高い医療水準、なおかつ医療費は先進国よりも低い。
 旧ソ連崩壊前は、経済援助と引き換えに「兵士」を紛争地へ派遣していたキューバだが、「医療外交」に切り替えて以降、世界中の国々や被災地に送られるのは、兵士ではなく、自国で養成した医師たちだ。
 現在5万人のキューバ人医師たちが世界66か国に派遣され、政府はその見返りに、石油を安く輸入したり、さらに年間80億ドルの外貨を稼いでいる。
 2014年12月。
アメリカは半世紀以上断絶していたキューバとの国交正常化宣言。アメイカがこの国交正常化に課した条件の一つである「外資によるキューバ国内への資本投入」には、キューバが今後巻き込まれるであろう、マネーゲームの存在が見え隠れする。
 医療財源がないなかで、医療を持続可能な形で成長産業にしたキューバはこれからどう変わっていくか。それは合わせ鏡のように、日本がこれからどちらの道を選ぶのかを私たちに問いかけてくる。