古稀の青春・喜寿傘寿の青春

「青春は人生のある時期でなく心の持ち方である。
信念とともに若く疑惑とともに老いる」を座右の銘に書き続けます。

日本の経済力は日本国民を豊かにしているか

2014-11-15 | 経済と世相
『円・ドル同時終焉の足音』(グラフ社、2014年10月刊)と言う浜矩子さんの著書を読みました。1971年のニクソンショックから昨今のリーマンショックに至るまで、世界の金融と通貨の混乱についての歴史を振り返り、その時何が起こったかを浜さんの解釈で語った本です。
 私が一番面白く感じられたのは、アジヤ通貨危機(第7章)です。
浜さんは,アジヤ通貨危機の犯人は日本だという。
1997年7月、米ドルペッグ制から変動為替相場制への移行によるタイ・バーツ急落をきっかけに、インドネシヤや韓国などで連鎖的に通貨が暴落し、金融機関の破たんが相次ぐ経済混乱に陥った。この時、ヘッジファンドなど欧米の投機筋が一斉にアジヤ諸国から短期資金を引き揚げた。これがアジヤ通貨危機のあらすじだ。だが、そもそもの投機資金の出どころは実を言えば日本であった。
 当時のアジヤ諸国をバブル化に追いやったその主因は、日本発の円キャリー取引だった。その意味で、ヘッジファンドたちをアジヤ通貨危機を引き起こした悪玉呼ばわりするのは、少々違う。黒幕はジャパンマネーだったのである。
 そもそもなぜ東アジヤ各国にバブルが起きたのかということだ。端的に云えば、それは膨大なジャパンマネーが投入されたからだ。
時期的に言えば1980年代後半、プラザ合意以降のこと。プラザ合意以降の日本のバブル化と円高の進展の中で、競争力を失った日本企業は海外に生産拠点を求めた。有力候補に挙がったのが、低賃金で労働力の豊富な東アジヤだった。
 しかも日本にとって非常に都合のいいことが一つあった。それは東アジヤ諸国の大半が米ドルペッグ制の為替相場制を敷いていたことである。プラザ合意後の円高ドル安の状況下で、日本企業はきわめて割安に生産拠点を東アジヤに移していけた。
 つまり、日本からの東アジヤ投資は、この段階ではまだバブル型投資ではなかった。伸び盛りの若い経済に、日本という成熟経済が成長資金を供給する構図であり、これは、至って正常なカネの流れであった。
 日本から供給された成長資金をテコに、アジヤ新興諸国の経済成長快進撃が始まった。これを世界は東アジヤの奇跡と呼んだ。
 年率二けた近い経済成長を続ける中で、東アジヤの経済は次第に過熱していく。それに対応して東アジヤ諸国は相次いで金融引き締め策をとった。インフレ経済化にともなって、対ドル為替相場の切り下げ圧力が強まることを恐れてのことだった。このやむを得ざる対応が厄介な事態を招く。引き締めがもたらす高金利に誘われ、投機資金がどんどん東アジヤに流れ込み始めた。
 投機資金は工場や施設建設など実物経済のために使うのではなく、株や不動産、ゴルフ場を買うためだった。資産バブルが大きく膨らんだ。
90年代、バブルが崩壊した日本は一転、失われた10年に突入する。
日本企業のアジヤへの工場進出は頭打ちになったが、今度は円キャリートレードが始まり、日本は投機資金の恰好の調達場所になった。
 そこへ登場したのがジョージ・ソロスを筆頭にするヘッジファンド、膨大な額の円キャリートr-ドを行い投機資金を調達した。東アジヤは、日本企業による直接投資の時代からヘッジファンドによる投機的投資の時代へと移行していった。
カネ余りになった日本から円キャリー取引でどんどん高金利の東アジヤにカネが流れ込んでいく。バブル化圧力が一段と高まる。
 最終的に円キャリー取引で日本から出て行ったカネが日本に還流してくる場面を迎えた。日本で株が暴落し、不良債権問題で金融機関の経営が行き詰ってくると、その損失をカバーするためカネが必要になり円キャリー取引にカネを回していたプレーヤーたちが手仕舞いに入った。資金が日本に逆流することになった。
 東アジヤ諸国はカネが出ていくから資金不足になり金利は上がる。
 その結果、東アジヤ諸国の経済に強いデフレ圧力がかかる。この状態を見て、ヘッジファンドたちは本腰を入れて東アジヤから退却に向かった。通貨大暴落の始まりである。
 要するに、アジヤの通貨危機とは、ジャパンマネーに始まり、ジャパンマネーに終わった。
 アジヤ通貨危機を起こした本当の悪玉はしいて言えば日本でる。
 しかし、それは当然なのだ。日本が世界最大の債権国になった以上、その日本のカネがどう動くかで、これだけ天変地異的なことが起こるのはごくあたりまえの話である。
 以上が浜さんの意見です。サブプライムショックは日本から米国にカネが流れ込んだことが原因という話は聞いたことがありますが、アジヤ通貨危機も同じだったのですね。世界最大の債権国になった日本の経済動向は大きく世界の経済に影響するということです。そういえば、 日銀の先日の異次元金融緩和第二弾も、も米国の量的金融緩和の停止宣言を受けたものだといわれています。つまり、米国が量的緩和を止めると、ドルが米国に還流する。世界経済は流動性が減少する。そこへ日銀がカネを流せば、米国は世界経済の流動性不足を心配することなく、ドルを引き締めることが出来るというのです。
 世界経済を動かす日本の経済力が、日本国民を豊かにするために使われているのか、疑問に思う次第です。