古稀の青春・喜寿傘寿の青春

「青春は人生のある時期でなく心の持ち方である。
信念とともに若く疑惑とともに老いる」を座右の銘に書き続けます。

驚くべき日本語(1)

2014-04-24 | 読書
『驚くべき日本語』(ロジャー・パルバース著、集英社インターナシヨナル;2014年1月)という本を読みました。
 まさに「驚くべき」内容の本です。筆者は、1944年生まれのアメリカ人。1967年来日、ほぼ半世紀を日本で過ごす。英・露・ポーランド・日本語をマスターする。大島渚監督の「戦場のメリークリスマス」の助監督などを経て執筆活動を開始した。著書に「旅する帽子 小説ラフカデイオ・ハーン」、「英語で読み解く賢治」他。2008年宮沢賢治賞、2013年第19回野間文芸翻訳賞。
 筆者の主張をまえがきから見ます。
『日本語という言葉は、日本人だけに通用する特殊な暗号のようなものだと考えられてきた。しかし。
1. 日本語には暗号のようなところはない。
2. 日本語は曖昧ではありません。
3. 話し言葉としての日本語は、わたしの知る限り学ぶにはもっとも平易な言語です。
実際、ロシヤ語とポーランド語を学んでみると、会話に関しては、日本語ははるかに簡単です。わたしの母語である英語に至っては、発音、綴り、不規則なアクセントの場所、膨大な語彙、学ぶには小憎らしいほど難しい言語です。
 日本語の読み書きが非常に難しいのは確かですが、この本では基本的に「話し言葉」について述べます。
 人間はもう何万年も言葉を話してきました。それに対して読み書きは、たかだか5000年。さらに聖職者や政治にかかわる役人をのぞいて、ふつうの人間の読み書きの歴史は、まだ1000年そこそこ。私の父方の祖父母は読み書きができませんでした。たった1世紀前の話です』と。
語り始める著者は『日本の未来、日本人の可能性は、まさに日本語の将来にかかっています』。そして、最終章では、「日本語は世界の共通語になりうる」とまで説いています。「驚くべき」内容の本という所以です。
外国語をマスターするコツ
 20歳の誕生日のときのわたしに会って、外国語に堪能かどうかと質問したとしたら、その答えは完全に「ノー」です。
 それから4年後の1968年5月だったら、ロシヤ語、ポーランド語、そして日本語を流暢に話すわたしに会うことになったでしょう。会話の最中に「日本語でなんといわなければいけないのか」なんて考えることはありません。自ずから言葉が出てくる。それは日本語が私のアイデンティの一部になっているからです。・・・・
わたしはどうやって、4年間で三つもの外国語を学ぶことができたのか。
外国語を習得しようとしたとき、外国語を聞いたり読んだりしたことを自分の母語に置き換えながら考えることをしませんでした。
日本語であれ他の言語であれ、世界のすべての人にとって外国語の習得を可能にするのは、生まれついての第一言語の論理を消し去る能力です。それさえできれば、ほとんどの外国人が日本語を完璧に習得することは可能です。(つまり、外国語を母語に翻訳して理解するのでなく、外国語とそれが意味する事象を直接結びつけて覚えなさいという意味のようです。)
ほんとうのところ、日本語は非日本人にとって、話すだけならとてもやさしい言語です。たとえば・・・
動詞については、わたしが今までかかわってきたどの言語も、覚えるだけでたいへんな問題を抱えています。
日本語の動詞は、他の言語に比べ、なんと簡単で便利な変化なのでしょう。
「食べる」という動詞であれば、「食べない」、「食べられない」、「食べにくい」など、その語尾を変えるだけでいろいろな意味に使うことができます。
日本語の動詞は、日本語を第一言語にしない人間にとっては、きわめて覚えやすいのです。
さらに、日本語は少ない語彙で表現が可能な言語です。以下その例。
「先週、恵美子さんは結婚したけど、あなたもいつか結婚しますか?」
「Emiko get married last week. Will you get married too someday?」
答え(日本語)
1. 「する」
2. 「するよ」
3. 「するんじゃないかな」
4. 「するでしょう」
5. 「するかも」
6. 「するする」
7. 「するつもりだけど・・・」
8. 「しないわけないじゃん!」
答え(英語)
1.I will.
2..I’m going too
3.Why wouldn’t I?
4.I’ll probably do it.
5.I might.
6.You bet.
7.I plan to but…
8.Whadda ya think?! (What do you think?)
日本語では、すべての答えに「する」というたった一つの動詞が使われていますが、英語ではこのように、さまざまな意味やニュアンスを伝えるために、まったく異なった言葉が必要になってくるのです。
英語で同じニュアンスを表現するには、日本語にくらべ、膨大な語彙からの選択が必要です。でも、日本語は、同じ一つの動詞の語尾の変化だけですんでしまう。しかも、語尾を変化させる法則は、あらゆる人々にとって決して難しいということはないでしょう。(続く)