古稀の青春・喜寿傘寿の青春

「青春は人生のある時期でなく心の持ち方である。
信念とともに若く疑惑とともに老いる」を座右の銘に書き続けます。

超マクロ展望 世界経済の真実

2014-04-16 | 読書
『超マクロ展望 世界経済の真実』(水野和夫・萱野稔人著、2010年11月刊、集英社新書)を図書館の棚で見つけました。先日、『金融緩和の罠』で萱野稔人さん(哲学者、国家論)が藻谷浩介さんら3名のエコノミストと対談する本を紹介しました。そして、水野和夫さんの『資本主義の終焉と歴史の危機を』を紹介しました。その萱野さんと水野さんの対談をまとめた本でしたから、借りてきて読んでみました。以下、水野理論のさわりです。
 原油の値上がりで、国全体の購買力が産油国に移転したことがデフレの原因、と説き始めます
 (水野)第1次イルショック以降、鉱物性燃料代金がもっとも少なかったのは1994年でした。94年の原油価格は1バレル17.2ドルで、日本は全体として年間4.9兆円を払えば原油や天然ガスなど鉱物性燃料を買えました。ところが2008年には、年間平均でいうと1バレル99ドル、一時は147ドルまで上昇して、日本は27.7兆円を出さないと同じ量の原油や天然ガスなどの鉱物性燃料を買えなくなってしまいました。22.8兆円も余分に払わないといけなくなったのです。
 (水野)売上高変動費比率とGDPに占める鉱物性燃料輸入比率とは連動しています。つまり、日本のエネルギー価格と変動費とは驚くほど連動している。変動費が上がれば、固定費を減らすか利益を圧縮する。日本では、人件費の圧縮で固定費を減らし、そのことが国民の購買力を減らした。
 原油や原材料を安く買えないと、先進国の資本は利潤率が下がり、利子率が低下する。そして海外で高い利潤を得ようとする多国籍企業と国民国家との利益が一致しなくなる。
また、変動費率が高いということは、先進国資本の利潤率低下を意味する(利子率革命)。利子率革命とは、低成長の時代になって資本が高い利潤を求めて海外に行くことを意味します。それによって日本でも工場の海外移転がすすみ、それこそ労働市場を国内的に維持することができなくなる。国民経済が資本によって支えられなくなる。最終的には資本と国民国家の分離ということになる。つまり、(資本(企業)の利益が国民の利益と一致しなくなり)国民国家は資本に裏切られたかたちになる。
多国籍企業は、海外での事業展開を円滑に行おうとすると、海外の国の制度の変更をのぞむようになる。多国籍企業に動かされる政府は、海外の国々に制度変更を要求(内政干渉)するようになり、必然的に帝国主義的になる。 今日の経済システムの基底には、石油と通貨の関係があります。
(萱野)1999年にEUにおける共通通貨、ユーロが発足しますね。その1年後の2000年11月にイラク大統領だったフセインが、これからは石油の売上代金をドルでは受け取らない、すべてユーロで受け取る、ということを国連に対して宣言し承認されました。
 これはアメリカにとってものすごくいやな措置でした。というのも、フセインの決定は「石油の国際取引は原則としてドルで決済しなくてはならない」というルールに挑戦するものだったからです。ドル以外の通貨でも石油を買えるようになれば、誰も赤字まみれのドルを受け取ってくれなくなり、場合によってはドルが暴落してしまう。(続く)