古稀の青春・喜寿傘寿の青春

「青春は人生のある時期でなく心の持ち方である。
信念とともに若く疑惑とともに老いる」を座右の銘に書き続けます。

若者を見殺しにする日本経済(1)

2013-12-23 | 読書
原田泰さんの新刊が出た。『若者を見殺しにする日本経済』(2013年11月、ちくま新書)です。早速図書館で借りて読みました。
 原田さんは、アベノミクスの金融政策を全面的に支持しているようだ。一番興味深い記述は以下です。
【日銀(白川総裁以前の)は、貸出が増えない限り経済は刺激されないという信念を持っているがそれは誤りである。銀行貸し出しは97年以降、傾向的に低下しているが、生産は貸出しの動きに関係なく動いている。
 金融政策が経済に持つ経路は様々である。金融政策が株などの資産価格を上昇させれば、家計は消費を、企業は投資を拡大する。金融緩和によって為替レートが下落する。円が下落すれば、輸出が増える。当然、輸出企業の雇用も給与総額も増え、消費が増大する。
貸し出しが増えなくても経済は刺激を受けるのである。】
 貸し出しの増加のみで、金融緩和の効果を論ずるのは誤り、という主張には賛成ですが・・・
【中央銀行が直接コントロールできるマネー、マネタリー・ベースを、日本と主要国についてみると、明確に読み取れるのは、他国が2倍から3倍に増やしているのに、日本は10%しか増やしていなかったという事実だ(2000→2012)。これでは日本の円が高くなり、他国の通貨が安くなるのは当然だ。】
 言い換えれば、白川総裁以前の日銀は、日本独自の考えで金融政策を決めてきたが、黒田日銀は、大幅な金融緩和という点で、他の主要国の金融政策に同調しただけ?
 でもそうとすれば、これは主要国の為替レート下落競争にならないのか?
【各国が競って金融緩和をして、自国通貨を切り下げれば、為替切り下げ競争が起きて大変だという議論もある。しかし、そんなことにはならない。
 まず、全世界で金融緩和競争をすれば、景気が良くなりすぎて、過度のインフレになる国が出てくる。そのような国は自国の利益のために金融を引き締める。インフレは国民の嫌うものだから】
【もう一つの理由がある。輸出が増えるときには必ず輸入も増えるということである。円が下がると貿易摩擦が再燃するという議論もあるが、これも起きない。日本の輸入も増えるのだから、必ず世界のどこかの国の日本への輸出も増えている。】
 だから、金融緩和は景気に効果があるというのだが、問題はないのだろうか。各国が金融緩和したとき、大量に発行した通貨はどこへ行くのだろうか。
私は、投機市場に集中し、たとえば、為替レートが投機で動くようになり、実体経済に悪影響をもたらすと思う
著者は日銀をこう批判している。「日銀は通貨の番人でなく銀行の番人」になっていると。必要なのは、「中央銀行の独立より金融政策のルール化である」と日銀の独立にも反対しているのだが・・・(つづく)