古稀の青春・喜寿傘寿の青春

「青春は人生のある時期でなく心の持ち方である。
信念とともに若く疑惑とともに老いる」を座右の銘に書き続けます。

中国、貿易黒字が世界一の意味

2007-05-13 | 経済と世相
先日、中国が日本を抜いて貿易黒字が世界一になったという報道がありました。
何故中国はかくも早い経済成長が可能であったか?背景を考えてみます。

 日本の戦後の経済発展を振り返ってみると、景気が良くなって輸入が増えると、支払いに当てる外貨準備が不足になり、公定歩合を引き上げ不景気にする。輸出が増えて外貨準備が増えれば、景気回復のため公定歩合を下げる。という繰り返しが、戦後から1970年ごろまでの日本経済でした。外貨収支の天井が常に景気の壁になっていたのです。経済を成長させるためには、投資が必要です。その投資をまかなうのは国民の貯蓄だけで、海外から投資資金を入れるということは、ほとんど不可能だった。
 ところが、中国の場合、経済成長に必要な資金を海外から導入しています。それは、金融のグローバル化によって、中国の経済成長に必要な資金を、世界中どこからでも借りてこられる時代になったからです。
 先日読んだ『100年デフレ』(水野和夫著、03年2月刊行、日経新聞)という本に、次の記述がありました。
 【先進10ヶ国合計ベースで、証券投資・企業買収などの資本流出・流入を合わせた金額を、当該国の経済規模(名目GDP)比に直して比較すると、変動相場制以降の75年からプラザ合意前の84年までは年平均2.0%、85年からルービン財務長官の強いドル政策が始まる95年までは5.1%だった。これに対し、96年から01年には10.1%へ高まった。特に2000年には15%台に跳ね上がった。
 数量面から貯蓄と投資の相関度で測っても、95年を堺に大きな変化が生じたことが分かる。すなわち、自国の投資が自国の貯蓄制約を受けない状況が成立するようになってきたのである。】
 「中国の投資は、中国国民の貯蓄額に制約されず、世界各国から調達できる」というのです。しかし、外資を導入できる制度が整っても、海外に余裕資金が存在しなければ導入できない。これについても、水野さんは別の本(「虚構の景気回復」中央公論新社、05年5月刊)でこう述べます。

 【日本の金融緩和政策で日本のマネタリーベースが増えるテンポと、世界の中央銀行が保有するドルが増加するのがほぼ軌跡を一にしている(71~03年)】。

【03年5月に月間で3.9兆円と過去最高のドル買い介入が行われた。その後次々と過去最高を更新して、結局03年度1年間で32.9兆円もの巨額介入が実施された。世界の流動性が過剰になった】と言います。

 分りやすく言うと、日本が金融緩和で囃したお金に同等の金額が世界の中央銀行の外貨保有の増分になっていて、その増分は03年の日本の為替介入のときに著しかった。

 日本のデフレ脱却のために日銀がばら撒いたマネーは、日本でなく中国の景気を刺激して、まわりまわって日本の輸出産業の景気を上昇させたというわけです。