古稀の青春・喜寿傘寿の青春

「青春は人生のある時期でなく心の持ち方である。
信念とともに若く疑惑とともに老いる」を座右の銘に書き続けます。

インフレは来るか?

2004-01-11 | 読書
 「メガバンクと巨大生保が破綻する日」(深尾光洋著、講談社+α文庫)という本。著者が、最近売り出しのエコノミストということで、どんな思想の人か知りたくて、読みました。以下、その感想。
 内容は初心者向けの金融システム解説書といった趣きで、前半は銀行のしくみが良く分かっている人には飛ばして、第2章4節(大手銀行が破綻するとき)から読み始めると良いと思います。ただし、金融問題に不案内の方には、最初から読むと親切な解説本になっています。
 長銀に投入した金が、国民一人当たりにして4万円という話を聞くと、こういう問題に国民はもっと関心を持つべきだと思うし、菅さんと、小泉首相・竹中金融相の質疑の記録は、資料としての価値があると思われました。
 第三章(生保のことを知る)で生保の【破綻前の予定利率引き下げというのは、保険契約者保護というよりも、基金や劣後ローンを出している大手銀行を救済するものと言っても過言ではありません。】との記述で、金融庁が何故「改正保険業法」を昨年7月成立させたかが分かる。
 つまり、従来の「更生特例法」だと、生保が破綻したとき、大手銀行の出資金が
カットされるが、「改正保険業法」だと、予定金利引下げで、一方的に保険契約者に負担を押し付けることが可能という。
 第三章までは、分かりやすく納得できる内容。しかし、第四章(デフレが破綻を招く)で、日本経済のデフレ脱出方策と、個人の対応策について、著者の意見を述べているが、一つの可能性を示唆するものの、以下の点で、疑問が残ります。
 この章で、今のままの政策を続けていくと、ある時点で財政が破綻しインフレになる。そのきっかけは、円の暴落。輸出で稼いだ外貨を国内で貯金するのでなく、外貨を買うようになって、円が暴落するというのだが・・・
 昨年、日銀はドルを買い支えるために、20兆円もの金を使ったと言う。上述のシナリオとは逆に、日本企業も国民も外貨(ドル)を買わないので、政府・日銀が買っているわけ。
 10日の朝日・Beで為替デイーラーの藤巻健史氏がこう述べている。
【「(日本)経済が弱いにも拘わらず、円が強くなっているという矛盾」は、日本の構造問題に起因している。ため込んだドルを民間が海外に還流するカルチャーがないのだ。もし、バブル崩壊時に資金を米国の株と土地に投資していれば、今ごろ大金持ち続出であろう。日本人も日本国も「内向き」という構造が、その機会を見逃した】
 私は、経済のグローバル化とは、製造業で弱くなったアメリカが、ITと金融業で金を稼ごうと言うねらいで、米国が提唱したシステムだと思っていますが、システムがグローバル化しても、外貨・外国株を日本人が実際に買うかどうかはカルチャーの問題。もし、日本人・日本企業が円で貯金せずドルで貯金するようになったとしたら、その時、日本経済はどうなっているのでしょう。