私はジャズのアルト奏者では哀愁舞い散る音色で軽やかにスイングするアート・ペッパーが一番好きで、50年代に出た彼のアルバムで入手可能なものは大体オリジナル盤で持っている。困るのは出来の良いアルバムに限って超の付くマイナー・レーベルから出ていることで、そのせいかオリジナル盤は滅多に市場に出てこないし、仮に出てきたとしても状態の良いものは目の玉が飛び出るようなプレミア価格で取り引きされている。もちろんCDで聴けるっちゃぁ聴けるが、やはり彼の艶めかしいアルトは無味乾燥なCDではなくオリジナル盤の濃厚な音で聴きたい。
“タンパ” というマイナー・レーベルから出ている彼のレコードは有名な「Besame Mucho」入りの “RS-1001” とマーティ・ペイチ名義の “TP-28” の2枚で、通称「タンパのペッパー」と呼ばれておりマニア垂涎の存在である。その1stプレス盤はどちらにも10万円を軽く超える値段がつけられていて、ちょっとやそっとでは手が出ない。
私の場合 1stプレス盤が高すぎて買えない場合は音質が近い 2ndプレス盤、例えばブルーノートの “47 WEST 63rd NYC”盤なら “NEW YORK USA”盤、という感じで手を打つことが多い。「タンパのペッパー」は2枚ともピンク色のセンター・レーベルで有名な1年落ちの2ndプレス盤があるのだが、悲しいことにビニールのクオリティが劣悪なせいかノイズが酷いカゼヒキ盤ばかりで(→初心者の頃、何も知らずに購入してその音の酷さに愕然とし、即刻売り飛ばした...)ハッキリ言って論ずるにも値しない。
はてさてどうしたものかと考えていた時に偶然見つけたのがロンドン・レコードから出ているUK盤だった。このレコードは収録時間自体が短いせいか10インチ盤で出ており、US盤とほぼ同時期の1957年リリースでありながら値段が結構安かった(6,000円ぐらい)こともあって、「タンパのペッパー」は2枚ともUK盤10インチを買って満足していた。
ところがその後、大阪にあった廃盤専門店「EAST」でUS盤1stプレスを聴かせてもらった時にその音圧の高さとペッパーのアルトの音色が手持ちのUK盤よりも遥かに艶めかしく聞こえたことにショックを受け、いつか「タンパのペッパー」のUSオリジナル盤を手に入れてやるぞと心に決めた。そしてそれから約20年経ち、昨年ようやく “TP-28” の方を入手したのだ。
この “TP-28” の正式名称は「Marty Paich Quartet featuring Art Pepper」という。最初期プレスにあたるのはRED WAX(赤盤)で、まともな盤質のものは十数万円で取り引きされているので、現実主義者の私は0の桁が一つ違うノーマルな黒ビニール盤の方を探していた。更にこの黒ビニール盤にもセンター・レーベルのデザイン違いの2種類のヴァージョンが存在し、当然RED WAX盤と同じレーベル・デザイン盤の方がウン万円高くなるのだが、音さえ良ければレーベル・デザインなんてどーでもいい私としてはこのディフ・レーベル盤(←スタンパーは1stプレスと同じでレーベル・デザインだけが違うので、1stと2ndの中間プレス?みたいなモン...)にターゲットを絞ってネットで網を張っていた。結局ヤフオクでVG+盤が11,500円と、ちょっと拍子抜けしてしまうぐらい安く買えたのだが、あまりの人気の無さに “ひょっとしてコイツもピンク・レーベルみたいなカゼヒキ盤ちゃうやろな...” と、レコードが届くまで正直不安だった。
いつものように届いた盤を丁寧にクリーニングし、ドキドキしながら盤に針を落とす。2ndプレス盤で不愉快極まりなかった “サーッ” というあの忌々しいサーフェス・ノイズは... ない!!! よかったぁ... カゼヒキ盤じゃなくて。NMじゃないので無音部分に多少のチリパチはあるが、音圧が高いので音楽が始まってしまうとノイズはほとんど聞こえない。モハメド・アリではないが、まさに “蝶のように舞い、ハチのように刺す” という感じで縦横無尽のプレイを聴かせるペッパーのアルトの音がこれまで聞いたことがないくらい瑞々しい音でスピーカーから飛び出してきて嬉しいったらありゃしない!
ジャケット上下にセロテープ補修がしてあったり裏ジャケにデカデカと前所有者の名前が書いてあったりで(←このパターン多いよな...)ちょっと痛々しいが、私は全く気にならない。ジャケットを聴くわけではないのだ。それより何より、ペッパーの艶々したアルトが天衣無縫なアドリブを聴かせてくれるこのレコードを安く買えたのがめっちゃ嬉しかった。
Marty Paich Quartet featuring Art Pepper - You and the Night and the Music
“タンパ” というマイナー・レーベルから出ている彼のレコードは有名な「Besame Mucho」入りの “RS-1001” とマーティ・ペイチ名義の “TP-28” の2枚で、通称「タンパのペッパー」と呼ばれておりマニア垂涎の存在である。その1stプレス盤はどちらにも10万円を軽く超える値段がつけられていて、ちょっとやそっとでは手が出ない。
私の場合 1stプレス盤が高すぎて買えない場合は音質が近い 2ndプレス盤、例えばブルーノートの “47 WEST 63rd NYC”盤なら “NEW YORK USA”盤、という感じで手を打つことが多い。「タンパのペッパー」は2枚ともピンク色のセンター・レーベルで有名な1年落ちの2ndプレス盤があるのだが、悲しいことにビニールのクオリティが劣悪なせいかノイズが酷いカゼヒキ盤ばかりで(→初心者の頃、何も知らずに購入してその音の酷さに愕然とし、即刻売り飛ばした...)ハッキリ言って論ずるにも値しない。
はてさてどうしたものかと考えていた時に偶然見つけたのがロンドン・レコードから出ているUK盤だった。このレコードは収録時間自体が短いせいか10インチ盤で出ており、US盤とほぼ同時期の1957年リリースでありながら値段が結構安かった(6,000円ぐらい)こともあって、「タンパのペッパー」は2枚ともUK盤10インチを買って満足していた。
ところがその後、大阪にあった廃盤専門店「EAST」でUS盤1stプレスを聴かせてもらった時にその音圧の高さとペッパーのアルトの音色が手持ちのUK盤よりも遥かに艶めかしく聞こえたことにショックを受け、いつか「タンパのペッパー」のUSオリジナル盤を手に入れてやるぞと心に決めた。そしてそれから約20年経ち、昨年ようやく “TP-28” の方を入手したのだ。
この “TP-28” の正式名称は「Marty Paich Quartet featuring Art Pepper」という。最初期プレスにあたるのはRED WAX(赤盤)で、まともな盤質のものは十数万円で取り引きされているので、現実主義者の私は0の桁が一つ違うノーマルな黒ビニール盤の方を探していた。更にこの黒ビニール盤にもセンター・レーベルのデザイン違いの2種類のヴァージョンが存在し、当然RED WAX盤と同じレーベル・デザイン盤の方がウン万円高くなるのだが、音さえ良ければレーベル・デザインなんてどーでもいい私としてはこのディフ・レーベル盤(←スタンパーは1stプレスと同じでレーベル・デザインだけが違うので、1stと2ndの中間プレス?みたいなモン...)にターゲットを絞ってネットで網を張っていた。結局ヤフオクでVG+盤が11,500円と、ちょっと拍子抜けしてしまうぐらい安く買えたのだが、あまりの人気の無さに “ひょっとしてコイツもピンク・レーベルみたいなカゼヒキ盤ちゃうやろな...” と、レコードが届くまで正直不安だった。
いつものように届いた盤を丁寧にクリーニングし、ドキドキしながら盤に針を落とす。2ndプレス盤で不愉快極まりなかった “サーッ” というあの忌々しいサーフェス・ノイズは... ない!!! よかったぁ... カゼヒキ盤じゃなくて。NMじゃないので無音部分に多少のチリパチはあるが、音圧が高いので音楽が始まってしまうとノイズはほとんど聞こえない。モハメド・アリではないが、まさに “蝶のように舞い、ハチのように刺す” という感じで縦横無尽のプレイを聴かせるペッパーのアルトの音がこれまで聞いたことがないくらい瑞々しい音でスピーカーから飛び出してきて嬉しいったらありゃしない!
ジャケット上下にセロテープ補修がしてあったり裏ジャケにデカデカと前所有者の名前が書いてあったりで(←このパターン多いよな...)ちょっと痛々しいが、私は全く気にならない。ジャケットを聴くわけではないのだ。それより何より、ペッパーの艶々したアルトが天衣無縫なアドリブを聴かせてくれるこのレコードを安く買えたのがめっちゃ嬉しかった。
Marty Paich Quartet featuring Art Pepper - You and the Night and the Music