shiotch7 の 明日なき暴走

ビートルズを中心に、昭和歌謡からジャズヴォーカルまで、大好きな音楽についてあれこれ書き綴った音楽日記です

Salsa Inglesa / El Combo 5

2023-01-22 | Beatles Tribute
 ビートルズのペルー盤を漁っていて面白い物を見つけた。それがこの「Salsa Inglesa」というレコードで、eBay で“Beatles Peru” で検索していたら網に引っかかってきたのだ。これは El Combo 5 というグループが全曲サルサでビートルズをカバーするという暴挙(笑)をレコード化したアルバムで、ジャケットはありきたりなアビーロード・パロディ系(←メンバーが手に持ったマラカスや売り子のニーチャン、ヤシの木など、南米にしては芸が細かい...)なのだが、ちょうど商品説明欄に試聴用オーディオ・クリップが貼ってあったので試しに聴いてみるとこれが結構面白い。あの「All You Need Is Love」がラテンのノリでノーテンキなサルサ・ナンバーに作り変えられていたのだ。
Necesito amor - El Combo 5

 このレコードって結構マイナーな存在らしく、ネット上をくまなく探しても他のトラックの音源は見つからなかったのだが、原曲はみんなビートルズだから(←タイトルがスペイン語で書いてあるのでよくはわからないが多分そうだろう...)安心安全だし、クラシックや前衛音楽でもない限りハズレはなかろうと思ってミズテン買いを決意。結局2人のライバルをアウトビッドして $31で手に入れた。どの口が言うねん!と言われそうだが、こんな怪しいレコードでも狙ってるライバルがいたのには驚きだ。
 落札してからレコードが届くまでの間に色々調べてみたところ、このEl Combo 5 というグループに関する情報は得られなかったが、このアルバムに関しては少しだけわかってきた。まず1989年にペルーで「Latin Road」というタイトルで出たのがオリジナルで、翌1990年にはメキシコで「Salsa Inglesa」というタイトルに変えられて Musart レーベルからリリースされ、更にコロンビアでも発売されたようだが詳細は不明だ。因みに過去15年間のeBayのデータによるとメキシコ盤が圧倒的に多く落札されており(14枚)、ペルー盤(2枚)コロンビア盤(3枚)はめっちゃレアなようだ。私が手に入れたのも当然メキシコ盤だが、試聴した限りでは盤質がめっちゃ良さそうだったので届くのがすご~く楽しみだった。
 メキシコからレコードを買うのはホンマに久しぶりなのだが、約1ヶ月かけてようやく到着。早速盤面をチェックしたら、キズは無さそうだけど指紋がベタベタ付いていたので丁寧に洗浄してから盤に針を落とす。サルサということでラテン・フレーバーの強い演奏をある程度予想はしていたが、いきなり高速化されたA①「Girl」がスピーカーから飛び出してくると笑えてくる。原曲を換骨奪胎してイケイケのサルサに生まれ変わった「Girl」は、まるで由緒正しい名家の令嬢に無理やり酒を飲ませて酔っぱらわせ、リオのカーニバルに連れて行ってで踊らせたかのような面白さ。間奏のピアノ・ソロもノリノリだ(笑) こんなはっちゃけた「Girl」はちょっと他では聴けないだろう。
 コンガが乱舞するA②「Something」もめっちゃファンキーで、ラテンのノリでグイグイ迫ってくる。今まで色んなビートルズ・カバーを聴いてきたが、こんなパーカッシヴな「Something」は初めてだ(笑) アドリブのコール&レスポンス・パートで「A Hard Day's Night」や「In My Life」、「If I Fell」に「Yesterday」と、色んなビートルズ・ナンバーのメロディーの断片が絶妙に織り込まれているところにも唸ってしまう。“Something in the way... she loves you yeah yeah yeah~♪” と「She Loves You」までブッ込んでくるアレンジャーのビートルズ愛が最高だ。
 A③「Lucy In The Sky With Diamonds」もサイケのサの字も感じられないラテン・ナンバーに早変わり。アレコレ考えずにアタマの中を空っぽにして聴くといいかもしれない。A④「All You Need Is Love」は私が試聴して買いを決めたトラックだが、やっぱりコレめっちゃ好きやわ。A⑤「Here There And Everywhere」もこれしかない!という絶妙なスピードにまで高速化されており、このあたりにもアレンジャーの音楽的なセンスが光っている。敢えてスローなナンバーばかりをチョイスしてサルサに仕上げているのは自信の表れなのかもしれない。
 B①「Fool On The Hill」あたりまでくると何となくアレンジの癖が分かってきて、おぉやっぱりそうきたか... という感じ。基本的には典型的なラテンのノリのワン・パターンで攻めてくるので、聴く人によってはそろそろ飽きてくる頃かもしれないが、そういう意味ではこのアルバムは2~3曲つまみ食い的に聴くのが極意と言えるかも。B②「A Day In The Life」はまずその攻めた選曲に驚かされるが、テンポやリズム・パターンのアレンジに工夫が凝らしてあり、聴いてて中々楽しめるトラックに仕上がっている。
 しかし好事魔多しというべきか、続くB③にビートルズとは何の関係もないボビー・ゴールズボロの「Honey」が入っているのだが(←関係ありましたっけ?)、これが長尺でしかもつまらないときているから困ったものだ。折角ここまでエエ感じできたのに、なぜこんなしょーもない曲を入れたのか理解に苦しむ。B④は再びビートルズに戻って「Till There Was You」なのだが、それまでのトラックとは違ってスロー・テンポで淡々と演奏されており、何かちょっと拍子抜けしてしまう。B②まで快調に飛ばしてきただけに、余計にB③④の失速感というか尻すぼみ感が強調されてしまっているのだ。
 とまぁこのようにラスト2曲は大ハズレだったが、A面とB面前半だけでも十分元は取れたので良しとするか...
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