shiotch7 の 明日なき暴走

ビートルズを中心に、昭和歌謡からジャズヴォーカルまで、大好きな音楽についてあれこれ書き綴った音楽日記です

The River Rhine Tapes / The Beatles

2022-11-26 | The Beatles
 去年の今頃、ピーター・ジャクソン監督の映画「Get Back」を観るためにディズニープラスへの入会でスッタモンダしていたのが今となっては懐かしい思い出だが、あの映画をきっかけにしてそれまで細かいことを気にせずに気の向くままに楽しんでいたゲット・バック関連の音源を再度時系列に沿って整理して聴くようになり、そのおかげでいくつか新たな発見があった。結果として「Get Back」を観る楽しみも又倍増するという、まさに絵に描いたような好循環を経験できた。
 そもそもビートルズのゲット・バック・セッションの音源に関しては数えきれないくらいのブートレッグが出ており、初心者の頃は何が何だか分からずに手当たり次第に買っていたこともあって、私のレコード/CD棚には似たような盤が一杯並んでいる。それらの大元となった1/2~1/31までのセッションを完全収録したPurple Chickレーベルの「A/B Road」はトータルで97時間もあるらしいのだが(←何年か前にMoonchildレーベルがこれをプレスCD化した「The Complete Get Back Sessions」は何と83枚組!)、膨大な音源の中からこれぞ!というべき名演をピックアップして絶妙な編集で聴かせてくれるアイテムこそが普段聴きに相応しい。
 私の場合、日常的に聴くのはLPなら「Sweet Apple Trax」(モノラル)、CDなら「The River Rhine Tapes」(ステレオ)とほぼ決まっており、たまには他の盤も聴くように努めているのだが、結局はこの2枚に戻ってしまう。「Sweet Apple Trax」は以前このブログで取り上げたので、今回は「The River Rhine Tapes」にしよう。
 この「The River Rhine Tapes」は小型のオープンリールで録音された “ナグラ・テープ” が元になっているという点では「Sweet Apple Trax」や「Black Album」と同じであり、実際半分以上のトラックがそれらと被っているのだが、決定的な違いはスタジオ内の離れた位置に設置されたAロールとBロールの音をミックスするというチカラワザ(?)でステレオに仕上げてあることで、他の盤とは一味も二味も違う臨場感が味わえるのが何よりも嬉しい。実際私はそれまでずっとモノラルでナグラを聴いてきたこともあって、初めてこれを聴いた時はかなり新鮮に響いたものだ。
The River Rhine Tapes; Get Back sessions / The Beatles

 編集のセンスも抜群で曲の配置もかなりよく考えられており、まるでスタジオでビートルズのセッションを聴いているかのような自然な流れを生み出している。私的ベスト編集盤である「Sweet Apple Trax」に比肩する内容の濃さであり、気持ち悪いエコーが過剰にかけられた Disc2-③「Oh Darling」(1/14録音)だけが思いっ切り浮いている以外は大満足の逸品だ。とにかく理屈抜きに聴いてて楽しいので、未聴のビートルズ・ファンは是非一度聴いてみて下さい。