shiotch7 の 明日なき暴走

ビートルズを中心に、昭和歌謡からジャズヴォーカルまで、大好きな音楽についてあれこれ書き綴った音楽日記です

Revolver 2022 Super Deluxe Edition ③

2022-11-15 | The Beatles
 ディスク3の「Revolver Sessions 2」はディスク2の最後の2トラック「And Your Bird Can Sing(First version ‐Take 2)」に続く形で同曲のSecond Version ‐Take 5 から始まる。このテイクは結構面白くて、最終的にはボツになったものの、ポールとジョージの “ア~♪” というコーラスがめちゃくちゃ新鮮に響く。ビートルズってコーラスには人一倍拘りがあるようで、貪欲と言ってもいいくらい色んなアレンジを試しているのがよくわかる。まぁオフィシャル・ヴァージョンのアグレッシヴなアレンジを聴くと、確かにこのポップなコーラスの入る余地はどこにもないが、私個人としてはこの “ア~♪”コーラスが気に入っているので、コーラス入りの完成形を聴いてみたかった気もする。逆に「Anthology 2」で既出の「Taxman(Take 11)」は “anybody got a bit of money?” の早口コーラスがイマイチ曲想に合ってないように思う。ポールの尖がったギター・ソロが無いエンディングも何て言うか “気の抜けたビール” みたいで、ボツになるのは当然か。
And Your Bird Can Sing (Second Version / Take 5)

 「I’m Only Sleeping」は彼らにしては珍しくヴィブラフォンを使ったクールな「Rehearsal Fragment」、レイドバックしたアコースティック・セッション風の「Take 2」、ドラムスが入った軽快なテンポがめちゃくちゃ気持ち良いインスト・ヴァージョンの「Take 5」、逆回転ギターの入りが最終完成形ヴァージョンと違うアンニュイな「Mono Mix RM1」と4つものテイクが入る大盤振る舞いで、この曲が出来上がるまでどのように進化&深化していったかが垣間見れてめちゃくちゃ面白い。特に3つ目の「Take 5」が生み出すグルーヴは特筆モノで、何度聴いてもクーッ、たまらん!の世界。大好きだったこの曲が益々好きになっていく...
I’m Only Sleeping (Take 5)

 「Eleanor Rigby」ではまずジョージ・マーティンがヴィブラート “有り”と“無し”の2パターンで曲のアタマ部分をストリングス隊に演奏させてポールに “違いが分かるかい? (Tell the difference?)” と尋ねたところ、“う~ん、よく分かんない...(Ummm... not much.)” という気のない答えが返ってくるところが笑える。現場では “無しの方がエエやろ...(It sounded better without)”という意見が大勢を占め(←確かに!)、そこから弦楽アンサンブルのみのインスト・ヴァージョン「Take 2」へと繋げるという実にニクイ構成になっている。このインスト・ヴァージョン自体は「Anthology 2」に入っており、ビートルズが関わってないクラシック音楽の楽器演奏なんかに何の興味もない私はいつも飛ばして聴いてきたが、こういうオモロイ前振り付きだとついついもののついでに聴いてしまう(笑)
Eleanor Rigby (Speech Before Take 2)

 「For No One(Take 10 ‐Backing Track)」はポールのピアノとクラヴィコード主体のインスト・ヴァージョンだが(←まだフレンチホルンは入っていない...)、埋もれていたリンゴのドラムスがしっかりと聞こえるのが嬉しい。伴奏のみということで、ポールが「Michelle」で味をしめたクリシェ(←伴奏を一音ずつ下げていくバロック音楽の手法)の効果が実にわかりやすいトラックになっている。
For No One (Take 10 / Backing Track)

 この「Revolver Sessions 2」で最大の発見が「Yellow Submarine」だ。私はこれまでこの曲は “ポールが作った童謡風の曲をリンゴに贈った” ものだとばかり思っていたのだが、大元となったバースは何とジョンが作った物悲しげなメロディーの断片で、ポールがそこに “黄色い潜水艦”というキャッチーなコーラス部を付け加えて曲想が大きく変化、更に色んな効果音を付け加えて大衆向けのポップ・ソングに仕立て上げたという、まさに “Lennon-McCartney” ならではのクリエイティヴな作品だったとは本当に驚きだ。この曲に関しては4トラック収録されており、「Take 4 before sound effects」や「Highlighted sound effects」も悪くはないが、やはり何と言っても曲が出来上がるまでの変化の過程がよくわかる「Songwriting work tape」の2つトラックが私にとっては最大の収穫だ。
 まず「Songwriting work tape‐Part 1」だが、これこそまさに世紀の大発見! ジョンがギター弾き語りで “僕の生まれた町では... 誰も気にかけない... 僕の名前... 誰も気にかけない...” と歌うバースのみのフラグメンツで(→仮題は「No One Cared」か???)、まだサビの “イエロー・サブマリン” のイの字も無い。「ジョンたま」期を想わせるようなホーム・デモ・レコーディングで淡々と歌うジョンの歌声が兎にも角にも素晴らしい。
 それが「Songwriting work tape‐Part 2」になるとサビの部分が登場(←ポールが Can you read that? って言ってるから、ポールが歌詞を書き換えてジョンがそれを見ながら歌ってるのかな...)、全編ジョンのヴォーカルで(←めちゃくちゃ良いっ!!!)ポールの “Look out!” “Get down!” という合いの手も実に良い味を出している。ジョンとポールの共同作業の様子が伝わってくる秀逸なトラックだ。
Yellow Submarine (Songwriting Work Tape / Part 2)

 「I Want To Tell You(Speech and Take 4)」は演奏前の会話からこの時点で曲名がまだ決まってないこととかリンゴが“Tell You”というアイデアを出したこととかが分かるが、肝心の演奏は40秒程度のインストだけで終わってしまうのが残念だ。「Here There And Everywhere(Take 6)」はポールのカウントから始まり、コーラス・パート無しでポールのヴォーカルがシングル・トラックで聴けるという “スッピン” ヴァージョン。メロディーの美しさが際立つ素朴な仕上がりになっている。
Here, There And Everywhere (Take 6)

 リヴォルヴァー・セッションで最後にレコーディングされた「She Said She Said」は「John's demo」と「Take 15‐Backing track rehearsal」の2トラックを収録。前者はアコギをかき鳴らしながら力強いヴォーカルを聴かせるジョンが素晴らしいし、インスト・ヴァージョンの後者はこの時点でアレンジがほぼ完成していることをうかがわせるまとまった演奏で、特にビシバシ叩きまくるリンゴのキレッキレのドラミングは圧巻だ。
She Said She Said (Take 15 / Backing Track Rehearsal)