shiotch7 の 明日なき暴走

ビートルズを中心に、昭和歌謡からジャズヴォーカルまで、大好きな音楽についてあれこれ書き綴った音楽日記です

「With The Beatles」UKモノ盤のマト1/4/5/6/7聴き比べ

2019-05-23 | The Beatles
 先の大型連休中はどこへも行かずにネットと B-SELSにへばりついていたお蔭で良いレコードを山ほど買えたのだが、そんな中でも以前取り上げた「Uncle Albert~Admiral Halsey / Too Many People」の USプロモ・シングルに次ぐ収穫が、今回ご紹介する「With The Beatles」UKモノラルのマト7N盤だ。
 「With The Beatles」UKモノラル盤と言えば私の中ではラウドカットで有名なマト1N盤が絶対王者として君臨しており、それ以外のマトリクスなど全くアウトオブ眼中だったのだが、2ヶ月ほど前に B-SELSにお邪魔した時に Sさんが「こんなの聴いてみませんか?」と仰ってかけて下さったのが「With The Beatles」UKモノラルのマト4N/3N盤だった。
 その時は “2ndプレスのマト4N/3N盤なんてどうせ大したことないやろ...” という軽い気持ちで聴き始めたのだが、実際にスピーカーから出てきた音はというと、確かにマト1N盤に比べると音圧は低いものの、これまで何百回と聴いてきたラウドカット盤のド迫力サウンドとはまた違った魅力があって、「2ndプレス盤の音も捨てたモンじゃないですねぇ...」と言うと、「でしょ。これはこれで結構良い音してると思うんですよね。」と Sさん。
 具体的に言うと、「All I've Got To Do」や「Till There Was You」、「Devil In Her heart」といったミディアム・テンポの曲が実に味わい深く、ヴォーカルが心に切々と訴えかけてくるのである。そしてあの「Please Mr. Postman」が今まで聴いたことがないような麗しい音で鳴ったのだ。これをラウドカット盤の “控え” として持っておくのも悪くないなぁと思ったが、盤質がめちゃくちゃ良かったせいもあって12,800円の値札が付いており即決とはいかず、それからというもの、B-SELSに来るたびにこの盤の存在を確認して “よしよし、まだ残っとるな... もうちょっと待っとれよ...” と秘かに狙っていた。
 そして迎えたこの GW、ようやくキャッシュの用意ができたので勇躍 B-SELSに乗り込んだところ、4日前まで壁面を飾っていた「With The Beatles」マト4N/3N盤が無い。慌ててエサ箱を探してもどこにも無い。 Sさんに尋ねると “あぁ、あの盤ね。あれは昨日常連さんが買って下さったんですわ。” とのこと。やはりコレクターの活動が活発になる大型連休は鬼門である(←自分のことを棚に上げてよぉ言うわ...)。そしてこの前ここに書いた “目をつけていたのが売れちゃって落ち込んだレコード” こそが他でもないその盤だったのだ。ということで、コレクターの教訓 “気になるレコードは見つけた時に買え。” を改めて実感させられた GWになった。
 この話にはまだ続きがあって、前に書いたようにその日は家に帰ってからネットで USプロモ・シングルを検索しまくったのだが、その時にふと思いついて「With The Beatles」のマト4N/3N盤も調べてみたところ、盤面ズタボロだったりジャケットのリンゴの顔部分がちぎれてなくなっていたり(笑)親の仇でも取るかのようにレーベル面が黒マジックで塗りつぶされていたり(?)といった “訳あり盤” だらけの中に1枚だけ盤質 VG+ でジャケットもそこそこキレイな 4N/4N盤が£20で出ているのを発見。13人のウォッチャーがいると表示されており、この時を逃せば買われてしまうに違いないと(← eBayの思うツボやな...)例の教訓が頭をよぎった私は送料が£8.95とめちゃくちゃ良心的だったこともあって、思わずその場で衝動買いしてしまった。
 その翌日、例の「Uncle Albert~Admiral Halsey / Too Many People」USプロモ・シングルを B-SELSに回収に行った時に Sさんに「マト4N/3N盤が売れたって聞いたので昨日の晩に 4N/4Nの盤を eBayで衝動買いしましてん。」と報告すると、「えー? いつものことながら速攻ですねぇ...」とビックリされてしまった。そこで調子に乗って「せっかくなのでお店にある 5N、6N、7Nの盤を聴き比べさせてくださいませんか?」とお願いすると、「喜んで!」と快諾していただいた。今年に入って何度となく繰り返されてきたいつもの展開である(笑)
 まずはマト5N盤だが、A①「It Won't Be Long」がスピーカーから流れ出てきた瞬間に “これじゃない感” が濃厚に漂う。リズム隊、特にベースがほとんど聞こえないに等しいこの 5Nサウンド... スッカスカではないか! さすがに高音域だけは USキャピトル盤が逆立ちしても出せないクリアネスがありUK盤の片鱗を感じさせるものの、ロックンロールに必要不可欠な “熱さ” が感じられないのだ。“よくできた日本盤の音” と言ったらみんな信じてしまうだろう。
 次に聴いたのはマト6N盤で、私と Sさんの予想通り “5N盤に少し低音を足した” という感じの音。しかし 5N盤よりも心持ちマシというだけで、ハッキリ言ってあまり変わり映えのしない中途半端なサウンドだ。ビートルズのヴォーカルとコーラス・ワークにスポットを当ててみました、というなら分からないでもないが、やはりこれはロックンロールの音ではない。
 最後に聴いたのはマト7N盤で、5N、6Nに比べると明らかに中低音が復活しており、マト1N盤の存在を知らなければもうこれで十分という感じの、非常にコスパの高いサウンドだ。B①「ロール・オーヴァー・ベートーベン」なんか、ラウドカット盤の耳に突き刺さるような鋭利なサウンドを絶妙なバランスにまとめ上げて聴き易くした感じだし、B⑦「マネー」のプリミティヴなリズムも(線は若干細いものの)しっかりとトグロを巻いて(?)おり、日常聴きならこれで十分と言っても過言ではないほど完成度が高い。UKモノの音がこの7Nをもって一応の完成をみたというのも大いに納得のいくシャキッとした音作りだ。
 ここで Sさんが「比較するためにラウドカットと7Nを交互に聴いてみましょう。」ということでマト1N盤をかけて下さった。う~ん、これこれ。やっぱり聴き慣れたこの音が一番エエわ...(^.^) と思ったが、続いてかかった 7N盤も決して捨てたモンではない。例えるなら、ラウドカット1N盤がスカイラインGT-Rで、7N盤がノーマルなスカイラインGTという感じ。ビートルズ・ファンのみんながみんな私のようなラウドカット中毒(笑)とは限らないので、“聴き易い” という理由から7N盤に軍配を上げる人がいても何ら不思議ではない。まぁ私の1N信仰は1ミリたりとも揺るがないが...(^.^)
 というワケで、「With The Beatles」UKモノラル盤についての私なりの結論は “爆音好きは1Nでコスパ重視は7N。好事家は3N, 4Nもアリ。” というのが正直なところ。尚、後日イギリスから届いた 4N盤は見た目は VG+ だが聴感上は余裕の NMといえるほどの盤質の良さで大喜び(^o^)丿 音作りの傾向は B-SELSで聴かせていただいた 4N/3N盤とほぼ同じで、ラウドカットでない分ビートルズの音楽にじっくりと向き合ってしっかりと聴き込めるところがかえって新鮮に感じられた。最後になったが、マト違いのレコードに関する私の視野を広げ、このような非常に興味深い聴き比べに誘ってくださった Sさんに感謝!!!