shiotch7 の 明日なき暴走

ビートルズを中心に、昭和歌謡からジャズヴォーカルまで、大好きな音楽についてあれこれ書き綴った音楽日記です

モノラルのブラジル盤で聴く「Let It Be」

2019-04-02 | The Beatles
 「モノラルのブラジル盤で聴く~」シリーズも今日で4回目。モノラルの「レット・イット・ビー」といえば、UKでリリースされたオープンリール・テープを CD化したブートレッグを持っているが、あれはステレオ・ミックスをモノに落としただけの、ちょうどプリアンプの MONOスイッチをオンにした時のような古式ゆかしい音で、“まぁこういうのもアリっちゃアリかな...” というレベルだったが、ブラジル盤のモノラルはどうなのだろう???と、興味津々でネット検索を始めた。
 まず eBayだが、VG+盤が1枚だけ出ていて送料込みで $150... う~ん、さすがにコレはちょっと高すぎる...(>_<) ならばと Discogsでこのレコードを探すと7枚出品されていたが、どいつもこいつも盤質 G+やら VG-のガチャ盤ばかりで全く食指が動かない。そんな中で1枚だけ、盤質 VGで €50というブツがあり、送料も €20と良心的だ。説明を見ると “This copy is very good, with some risks. On my machine only presented a few clicks on the side A. Side B has very few hiss.”(盤質はまぁまぁエエけど、ちょっとリスクはあるヨ。ウチのシステムでは A面チリパチ音が少しだけあるけど B面はヒスノイズほとんど無しネ。)とのこと。60年代のモノラル盤で a few clicksなら上等なのだが、やはり risksという言葉がどうしても引っ掛かる。
 こういう場合、私には “買わない” という選択肢は存在しないので、リスクを取って €50盤で勝負するか、安全策を取って $120盤に行くか、の2つしかない。さて、どうするか... 私はそのレコードに対して自分で決めた限度額を超える場合は決して買わない主義なので、必然的に答えは一つ... つまりリスクに賭けろ!である。私は腹を決めて €50盤を即決購入した。
 届いた盤はジャケットのちょうどジョンの枠の左隅に“Marcelo Sanches”(←「マルセロ・サンチェス」ってなんかサッカーのブラジル代表みたいな名前やな...) と前所有者の名前が青のボールペンでハッキリと書いてある。センター・レーベルにもデカデカと書かれてあるが、達筆なので全然違和感がない(笑)
 肝心の音の方だが、これまで手に入れた3枚のブラジル・モノ盤とは激しく一線を画す爆音盤でビックリ(゜o゜)  まずA①の「トゥー・オブ・アス」だが、“「トゥー・オブ・アス」ってこんなに元気な曲やったっけ???” と疑いたくなるほど元気一杯のサウンドがスピーカーから飛び出してくる。特にリンゴのドラムの一打一打がめちゃくちゃ力強く、シンバルは乱舞するが如し。アコギのストロークもパワフルそのもので、1曲目から度肝を抜かれた。A②「ディグ・ア・ポニー」も気怠さが吹き飛ぶような快演で、ここでも絶好調なリンゴがビシバシとショットをキメまくる。ジョンの歌声もガンガン前に出てきて超気持ち良い(^o^)丿 これまで “ビートルズの全アルバム中一番生気に欠ける” と思っていたあの「レット・イット・ビー」がロックンロール・アルバムとして目の前にすっくと屹立しているのだ。グリン・ジョンズがコレを聴いたら何と言うだろう?
 A③「アクロス・ザ・ユニバース」はA①②に比べるとおとなしめだが、やはり音は分厚い。続くA④「アイ・ミー・マイン」のイントロはまさに “空間をつんざく” という感じで響き渡り、思わずのけぞってしまうほど。ジョージのヴォーカルは驚くほどエネルギッシュだし、ジョン・ボーナムばりのドラミングを聴かせてくれるリンゴにもビックリだ。これって別ミックスちゃうんか???と思わせるぐらい曲の表情が違うのが面白い。A⑤「ディグ・イット」のジョンはノリノリだし、A⑥「レット・イット・ビー」のジョージのギター・ソロも一曲入魂!という感じ。リンゴの鬼気迫るドラミングも圧巻で、こんなエゲツない「レット・イット・ビー」は初めてだ。A⑦「マギー・メイ」ではラウドなアコギのストロークが生み出す大きなノリがめっちゃ気持ち良くて、“もっともっと聴きたい!” という衝動に駆られてしまう。
 B①「アイヴ・ガット・ア・フィーリング」でもリンゴの勢いは止まらずで、ポールの怒涛のベースと相まってこの曲のハードな側面を強調している。まさに“リンゴ・スターは漢でござる!” と言いたくなるような快演だ。続くB②「ワン・アフター909」でもポールが言うところの“A Great Little Rock'n Roll Band” が生み出す痛快無比なロックンロールに思わず身体が揺れてしまう。
 B③「ザ・ロング・アンド・ワインディング・ロード」はモノラル化したせいでフィル・スペクターが施したオーケストラやバック・コーラスといった過剰な装飾が奥に引っ込み、その分ポールのヴォーカルが前に出てきて私的には絶妙なバランスに聞こえる。う~ん、これはたまりませんわ(≧▽≦)  大袈裟ではなく私が今まで聴いてきた中でベストの「ザ・ロング・アンド・ワインディング・ロード」かもしれない。
 B④「フォー・ユー・ブルー」はジョージの作品中最も過小評価されていると思う1曲で私の超愛聴曲なのだが、リンゴのドラミングが生み出すグルーヴが圧巻で、ジョージのヴォーカルも水を得た魚のように活き活きと響く。B⑤「ゲット・バック」もノリの権化と化したビートルズとビリー・プレストンが一体となってパワー全開で突っ走る爽快感がたまらない。全曲聴き終えての感想だが、こんな溌剌とした「レット・イット・ビー」は他では聴いたことがない。
 ということで、ブラジル盤(BTL 1013)のモノラル・サウンドで聴く「レット・イット・ビー」は素晴らしいの一言で、満足度は文句なしの100点満点だ(^o^)丿 正調ビートルズ・ファンからは邪道と言われるかもしれないが、ひょっとすると UKオリジナルのボックス・セットに入っていた -2U/-2Uの1stプレス盤より好きかもしれない、今年に入って早くも2枚目の “神棚盤” だ。

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