shiotch7 の 明日なき暴走

ビートルズを中心に、昭和歌謡からジャズヴォーカルまで、大好きな音楽についてあれこれ書き綴った音楽日記です

圭子の夢は夜ひらく / 藤圭子

2013-08-29 | 昭和歌謡・シングル盤
 真夏のポール祭りもいよいよ大詰めなのだが、大阪公演の詳細が未だに発表されないのでテンションの維持が難しい。8月ももう終わるというのに、一体いつまで待てというのだろうか。このまま生殺し状態で続けるのはさすがにツライので、ここらで祭りを一旦中断し、大阪公演のチケット入手の白黒がハッキリついた時点でその報告も兼ねて最終回をやりたいと思う。
 ということで次のブログ・ネタはどのレコードにしようかなぁと考えていたところへ、藤圭子さんが亡くなったというニュースが飛び込んできた。それもどうやら飛び降り自殺らしいという衝撃的な内容だ。彼女に関しては何年か前に “昭和歌謡特集” をやっていた時に取り上げるつもりだったのが中断してそれっきりになっており(←このブログ、私の行き当たりばったりな性格を反映して特集の中断がやたらと多いです...)いつかやろうと思っていたのだが、みながわ最高顧問からコメントをいただいたこともあり、今日は追悼の意味も込めて私が初めて買った彼女のシングル盤「圭子の夢は夜ひらく」でいきたい。
 この「夢は夜ひらく」という曲は元々1966年に園まりでヒットしたのがオリジナルで、歌詞も “赤く咲くのはけしの花~ 白く咲くのは百合の花~♪” で始まる藤圭子ヴァージョンとは違い、 “雨が降るから逢えないの~ 来ないあなたは野暮な人~♪” で始まるのがかえって新鮮に響く。まぁコレはコレで悪くはないが、私的には歌詞と歌唱がコワイぐらいにマッチした藤圭子盤の圧勝だ。
園まり - 夢は夜ひらく


 この曲がナンシー・シナトラ&リー・ヘイゼルウッドの「サマー・ワイン」と似ているというのは有名な話で、確かに「ワン・レイニー・ナイト・イン・トーキョー」の一件ほど露骨ではないにせよ、出だしの部分なんかそっくりで “赤く咲くのは~♪” で歌えてしまうところが面白い。こういうのをパクリ云々と騒ぎ立てるのは無粋の極みで、音楽ファンとしては聴き比べのネタができてラッキー(^.^)と考えた方が楽しい。興味のある方は聴き比べてみてください。
Summer Wine / Nancy Sinatra & Lee Hazelwood


 「圭子の夢は夜ひらく」は彼女にとって「新宿の女」「女のブルース」に続く3枚目のシングルで、青江三奈やクールファイブといったムード歌謡全盛の1970年においても傑出した大ヒットを記録。シングル・チャートで10週連続1位、そのうち2週はチャートを再浮上した「女のブルース」を従えての1位2位独占、更にデビュー・アルバムからの3作でアルバム・チャート41週連続1位(うち18週はシングル・アルバム両チャートで1位!)と、まるで1964年のアメリカにおけるビートルズ現象を想わせる凄まじさで、街角には彼女の歌が溢れていたという。この日本音楽史上空前絶後の大記録は今後も破られることはないだろう。
 この曲の魅力は彼女を見い出しスターに育て上げた恩師である石坂まさを氏によって新たに書き下ろされたその歌詞にある。四行詩で六番まで繰り返すという構成が “流し” 出身の彼女の歌唱スタイルにピタリとハマり、聴く者に強烈なインパクトを残すのだ。特に一度聴いたら絶対に忘れられない “十五、十六、十七と 私の人生暗かった~♪” のフレーズは私の世代以上の日本人ならほぼ誰でも口ずさめるぐらい有名だし、 “昨日マー坊 今日トミー 明日はジョージかケン坊か~♪” のラインも実に秀逸。当時まだ19才にしてそんな暗~いムードの歌詞を日本人好みの翳りのあるメロディーに乗せ、ドスを効かせながら貫禄すら感じさせる歌唱でドライに歌い上げた彼女のシンガーとしての抜群のセンスと表現力には脱帽だ。 “その人の歩んできた人生が歌に表れるのが昭和歌謡だ” なんて野暮なことは言いたくないが、技法だけではどうにも説明のつかない何かがそこにあるのもまた厳然たる事実であり、この曲はまさに彼女の人生を見事に描いた歌であるゆえに多くの人々の心に深く刻み込まれ、記憶に残る名唱となり得たのだと思う。
圭子の夢は夜ひらく


 これほどの超有名曲になるとカヴァーも相当な数に上る。そんな中で私が特に気に入っているのが梶芽衣子と山崎ハコという超個性派シンガーによるカヴァーで、どちらも強烈な説得力で迫ってくる名唱だ。又、ちあきなおみが昭和歌謡の名曲をカヴァーした名盤「恋と涙とブルース」に入っていたヴァージョン(←歌詞はちあき用に新たに書かれたもの)も彼女の圧倒的な歌唱力が堪能できる素晴らしい出来で超オススメだ。
梶芽衣子 - 夢は夜ひらく

山崎ハコ

ちあきなおみ カバー6曲詰め合わせ (この曲は16分34秒から)


【おまけ】圭子姐さんによるさっちゃんカヴァー3連発!!!
 特に “死” について歌った「アカシア」は歌詞が歌詞だけに今聴くと何かこう因縁めいたものを感じさせるが、これらの歌を聴いていると我々が失ってしまったものの大きさを痛感させられる。また一人、昭和の偉大な歌手が逝ってしまった... 謹んで彼女のご冥福を祈りたい。
アカシアの雨がやむとき

赤坂の夜は更けて

涙のかわくまで
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