shiotch7 の 明日なき暴走

ビートルズを中心に、昭和歌謡からジャズヴォーカルまで、大好きな音楽についてあれこれ書き綴った音楽日記です

The McCartney Years DVD (Pt. 2)

2013-08-23 | Paul McCartney
 今日は「ザ・マッカートニー・イヤーズ」DVDのディスク2、1983年以降ののビデオ・クリップの中からお気に入りの5曲をピックアップしました。

①Press
 86年にリリースされたアルバム「プレス・トゥ・プレイ」からのリード・シングル「プレス」は時代に敏感なポールが当時流行っていた “ギターやベースよりもシンセが目立つエレクトリック・ポップ・サウンド” を取り入れようとした意欲的な作品で、ポールにしては珍しいリズム主体のアレンジながらウキウキするようなキャッチーなメロディーがキラリと光るポップ・チューンになっている。この曲には基本的に2種類のミックスがあるのだが(さらにそれぞれの短縮エディット・ヴァージョンやインスト強調ダブ・ヴァージョンが存在するのだからややこしい...)、そのサウンドの違いは一聴瞭然。一般的に知られているのはCD化されたベヴァンス&フォワード・ミックス(L4分42秒 / S3分35秒)の方だが、私が好きなのは打ち込みビートやシンセが控え目でその分ギターのサウンドが大きくフィーチャーされたヒュー・パジャム・ミックス(L4分20秒 / S3分58秒)の方で、本当はこちらがオリジナル・ミックスなのに何故かシングル盤の2ndプレスから大仰なベヴァンス&フォワード・ミックスに差し替えられ、この圧倒的に素晴らしいオリジナル・ミックスが闇に葬り去られようとしているのが納得いかない。両方貼っときますんで興味のある方は聴き比べてみて下さい。それと、この曲はビデオ・クリップも秀逸で、ポールがロンドンの地下鉄を乗り継ぎながら歌っているだけ(予算はたったの200ポンド!)の映像なのだが、一般市民の反応や駅の様子が実に面白く撮れており、まさに “アイデアの勝利” と言える作品に仕上がっている。
Paul McCartney - Press

Paul McCartney - Press (Hugh Padgham Mix Edited) [1986]


②My Brave Face
 80年代に入ってバンド活動を止めてからパートナーやプロデューサー選びで試行錯誤を繰り返し、自らが進むべき音楽的方向性に迷いが生じてセールス的にも落ち込んでいたポールが再びかつての輝きを取り戻した1989年の復活作「フラワーズ・イン・ザ・ダート」からの1stシングルがこの軽快な「マイ・ブレイヴ・フェイス」だ。新たなパートナーであるエルヴィス・コステロから受けた刺激とバンド形態によるライヴ活動再開への喜び(←ポールという人はバンドでライヴ活動をしてる時が一番活き活きしてると思う...)がポールに活を入れたのだろうが、ソロになってから敢えてビートルズ的なものと距離を置いて活動してきたポールが、ここにきて変なわだかまりもなくなったのか、自然な形でビートリィなサウンドへ回帰してくれたのが何よりも嬉しい。イントロ無しでいきなり “My brave, my brave, my brave face~♪” というポールの溌剌としたヴォーカル(←声の “張り” が違いますね!)で始まる出だしは初期ビートルズを思わせるし、跳ねるようなベース・ラインも実に印象的。やっぱりポールにはヘフナーのヴァイオリン・ベースがよく似合う。この曲ビデオ・クリップは熱狂的なポール・マッカートニー・コレクターの日本人(!)がポール関連のお宝グッズを次々と盗んでいき、ついにヴァイオリン・ベースを手に入れたところで逮捕されるという笑劇のケッサクなのだが(←当時バブル景気真っ只中だった日本に対する海外からの見方ってこんな感じやったのかも...)、レアな映像やメモラビリアがいっぱい出てきてビートルズ・ファンにとっては見所満載。ラストでパナソニック製の監視カメラが大写しになるという皮肉たっぷりのオチが好きだ。
Paul McCartney - My Brave Face


③This One
 アルバム「フラワーズ・イン・ザ・ダート」からの第2弾シングル「ディス・ワン」はポール節全開のポップなミディアム調ナンバーで、強烈なインパクトに欠けるせいか残念ながらチャート面では振るわなかったが、何度も聴くうちにサビのメロディーが頭にこびり付いて鼻歌で歌いたくなるような親しみやすさ溢れるスルメ・チューンだ。初めてこの曲のビデオ・クリップを見た時は、白鳥に乗ったハレ・クリシュナが何度も登場したり、インド風の衣装に身を包んだポールとリンダが瞑想にふけっていたり、そんな二人のバックでインド人女性ダンサーが優雅に踊っていたりと、ジョージのお株を奪うかのようなインド色の強い作りになっているのにビックリしたが、この曲は元々ポールがインドで買ったポスターに描かれていた白鳥に乗るクリシュナにインスパイアされて書いたもので、言葉遊びの好きなポールが “This Swan” と “This One” ををかけてインドを強く意識した作りにしたからだと後から知って大いに納得。どうりで白鳥が大きくフィーチャーされているワケだ。又、サウンド面でも随所にさりげなくインド風フレイバーが散りばめられており、ポール自らがシタールを弾いているというのも興味深い。それと、個人的にツボだったのがポールが瞼の上に目のメイクを描いて目を閉じたまま演技するシーン(1分15秒あたり)で、私はこれを見るたびに志村けんのコントを思い浮かべて大笑いしてしまう。リンダやヘイミッシュもこのメイクで登場するシーンがあり、天下のポール・マッカートニーの作品に影響を与えた(?)志村師匠の偉大さを痛感させられる。
Paul McCartney - This One


④Hope Of Deliverance
 80年代以降のポールの曲で私が一番好きなのが1993年にリリースされたアルバム「オフ・ザ・グラウンド」からのリード・シングル「ホープ・オブ・デリバランス」だ。一緒に口ずさみたくなるキャッチーなメロディー、ポールお得意の弾むようなアコギのコード・ストロークとパーカッションが生み出す軽快なリズム、希望に満ち溢れた前向きな歌詞、ポールの歌声に絶妙なマッチングを見せるリンダの夫唱婦随コーラス、ウキウキするようなポールの “ホッピルビルビ♪” 一人追っかけ二重唱、そして絵に描いたように美しくキマッたエンディングと、もういくら褒めても褒め足りないぐらいの素晴らしさで、聴くたびに “音楽ってエエなぁ... (≧▽≦)” と思わせてくれるキラー・チューンだ。ポール自身のコメンタリー解説によるとこの曲はドイツで400万枚という大ヒットを記録したとのことだが、ドイツだけで400万という数字はいくら何でも考えにくい(>_<)  多分ポールの勘違いだとは思うが、調べてみたらプラチナ・セールス扱いになっているのでめちゃくちゃ売れたことだけは確かなようだ。動物や自然を愛するポール&リンダらしく神秘的なケルトの森を再現したスタジオ・セットで撮影されたこの曲のビデオ・クリップも素晴らしい出来で、見事なカメラワークによって現場の楽しそうな雰囲気がダイレクトに伝わってくるのだ。特にハンド・クラッピングを織り交ぜながら曲に合わせて身体を揺する “ホープ・オブ・デリバランス踊り” がめちゃくちゃ楽しい。この理屈抜きの楽しさ... やっぱりポール・マッカートニーはこうでなくっちゃ!
Paul McCartney - Hope Of Deliverance


⑤Wanderlust
 この「ワンダーラスト」はディスク1の「ロケストラのテーマ」と同様にメイン・メニューのバックに使われているだけなのだが、ビートリィなアレンジと雄大な曲想がたまらないこの名バラッドが大好きな私としては取り上げないワケにはいかない。元々1982年のアルバム「タッグ・オブ・ウォー」に入っていた隠れ名曲で、シングル・カットされていないためオリジナル・ヴァージョンのビデオ・クリップは存在しないのだが、このDVDで使われているのは映画「ギヴ・マイ・リガーズ・トゥ・ブロード・ストリート」で再演されたヴァージョンの演奏シーンで、オリジナル・ヴァージョンの完成度には及ばないものの、ポールのピアノとリンゴのドラムス、そしてブラス・セクションだけというシンプルな編成がこの名曲の魅力を再認識させてくれる。肩の力の抜けた好演とはこういうのを言うのだろう。まぁファンとしては何よりもポールとリンゴの共演が見れるだけで嬉しいのだが...(^.^) 映像的にはこの曲のアタマの部分(3分15秒~)でリンゴがブラッシュをポイと投げ捨てスティックに持ち替えるシーンが妙に印象的。エンディングでこのメドレーの前曲「ヒア・ゼア・アンド・エヴリウェア」のメロディーをさり気なくハミングで織り込むポール(7分10秒~)がめっちゃ粋だ。
Yesterday - Here There And Everywhere - Wanderlust / Paul McCartney & Ringo Starr
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