shiotch7 の 明日なき暴走

ビートルズを中心に、昭和歌謡からジャズヴォーカルまで、大好きな音楽についてあれこれ書き綴った音楽日記です

Jazz / Queen

2011-03-01 | Queen
 今日からいよいよ3月、ちょっと前に大雪でエライ目にあったというのに、もう春はすぐそこだ。食パンでもこのブログでも春と言えば恒例の “祭り” なのだが、去年は確か “春のフレンチ祭り” と題してフランス・ギャルやシルヴィ・バルタン、シェイラなんかを集中投稿して萌えていた。今年は “春のクイーン祭り” ということで、「ライヴ・キラーズ」、「世界に捧ぐ」に続く第3弾として今日は1978年にリリースされたクイーン7枚目のアルバム「ジャズ」を取り上げたい。
 このアルバムが出た時私はちょうど高校生で、クイーンのニュー・アルバムのタイトルが「ジャズ」と聞いてビックリ(゜o゜) もちろん当時の私は “ジャズ” という言葉に対して “年配のオッサンが聴くスカした音楽” という認識しかなかったし、アルバム・ラスト曲の邦題が「ジャズはいかが」というマヌケなものだったせいもあって(←ここでの jazz とはもちろん音楽のことではなく、“たわごと、ナンセンス” を意味する俗語で、曲の歌詞の最後は “No more, no more of that jazz... もうやめてくれ、そんなたわごとは...” で締められている。「ジャズはいかが」とは勘違いも甚だしいアホな邦題だ) “今度のクイーンはロックとちゃうんか...???” と一抹の不安を感じながらアルバムの発売を待った。
 ラジオで頻繁に流れ始めたリード・シングル②「バイシクル・レース」もそれまでのクイーンのイメージとはかなり違った雰囲気の曲で、初めて聞いた時は “何じゃこりゃ???” だった。何と言ってもいきなり “バーイシコゥ、バーイシコゥ、バーイシコゥ...♪” である。しかも曲のテンポがコロコロ変わることもあってクイーンお得意のコーラスをもってしても「オペラ座の夜」の頃のような高揚感はあまり感じられないし、何よりも曲の途中に挿入された “チリン チリン♪” という軽薄なベルの音が気恥ずかしくて、聴いてて腰砕けになってしまう。ただ、1分7秒からの “Bicycle races are comin’ your way, so forget all your duties, oh yeah~♪” のパートは “さすがはクイーン!” と言いたくなるようなカッコ良さで、結局何度も聴いているうちにすっかり脳内リフレインを起こして病み付きになってしまうという不思議な魅力を持ったナンバーだ。
 発売日に行きつけのレコード店で買ってきたこのアルバム、前作「世界に捧ぐ」の “ロボ・ジャケ” も何か変だったが(←背景のくすんだ緑色が妙に印象的...)、今回のジャケット・デザインも意味不明。あのグルグルはレコードの円盤を意味しているのだろうか?下端に自転車に乗った女性のシルエットが1列に描かれているのは「バイシクル・レース」に引っ掛けたのだろう。そういえばこのアルバムには大勢の金髪美女が裸で自転車に乗ってるポスターが付いとったけど、あんなモン恥ずかしゅーて部屋に貼れるかいな...
 そんなこんなで期待と不安が入り混じった気持ちでレコード盤に針を落とすといきなり聞こえてきたのが “イ~~~ブラヒィィィ~♪” というフレディーの雄叫びだった(>_<) 聴いてるこっちは茫然自失、 “何じゃこりゃぁ...(゜o゜)” の松田優作状態である。当時のクイーンは “ブリティッシュ・ロックの貴公子” と呼ばれていたが、コレはどう聴いても怪しげなアラビアン・ロックだ。とにかくこの①「ムスターファ」、一体どういう意図でアルバムの1曲目に持ってきたのか、彼らの真意がよく分からない。
 2曲目の②「ファット・ボトムド・ガールズ」はいつものクイーンに戻って一安心。曲そのものは単調なメロディーの繰り返しに過ぎず、他のクイーン曲のようにクライマックスへ向かって登りつめていくような快感が希薄なのだが、何と言っても①の後だけにあの万華鏡のようなコーラスが出てくるだけでホッとしてしまう。単調な曲をここまで聴かせてしまうというのがクイーンのヴォーカル・ユニットとしてのレベルの高さを物語っている。
 A面には他にシタールっぽい音色のギターが耳に残る無国籍風の③「ジェラシー」、シングル・カットされた④「バイシクル・レース」、フレディー自身の決意表明のような歌詞が面白い⑥「レット・ミー・エンターテイン・ユー」などが入っているが、私が好きなのはジョン・ディーコン作の⑤「イフ・ユー・キャント・ビート・ゼム」で、次作「ザ・ゲーム」に相通ずるような爽やかでキャッチーなポップンロールに仕上がっている。ジョージ・ハリスン、ジョン・ポール・ジョーンズ、そしてこのジョン・ディーコンと、 “ブリティッシュ・ロック界のうなずきトリオ” は寡黙で他のメンバーの陰に隠れがちだが、みんなホンマにエエ仕事してまっせ~(^o^)丿
 B面では何と言っても1曲目に置かれた⑦「デッド・オン・タイム」、コレに尽きる。ブライアンのギターが唸りを上げて疾走し、フレディーの超早口ヴォーカルが負けじとこれを追走、聴く者の心にロックな衝動を呼び起こす。「キープ・ユアセルフ・アライヴ」→「ブライトン・ロック」→「タイ・ユア・マザー・ダウン」→「シアー・ハート・アタック」の流れをくむノリノリのハードロックで、数多いクイーン曲の中でもトップ5に入るくらい大好きなナンバーだ。やっぱりクイーンはブリティッシュ・ハードを演った時が最高やね。
 ブライアン作のジャジーなブルース⑨「ドリーマーズ・ボール」も大好きな1曲だ。チェンジ・オブ・ペースとでも言おうか、クイーンのアルバムにはこういった異色のナンバーがさりげなく入っていることが多いが、それが絶妙なアクセントになってアルバムの魅力を高めている。この曲もフレディーの歌声がゆったりまったりエエ感じで、歌心溢れるブライアンのギターとのデュオローグを聴いているような錯覚に陥ってしまう。エンディングの雷雨のSEから次曲⑩「イン・オンリー・セヴン・デイズ」の清涼感溢れるピアノのイントロへの繋ぎも完璧だ。
 ⑫「ドント・ストップ・ミー・ナウ」は全クイーン曲の中でトップ3に入るぐらい好きな超愛聴曲。ブライアンの “よく歌う” ギターは相変わらず絶好調だが、何と言ってもフレディーのピアノ連打がスポーツカーのターボ・ブーストのように曲のスピード感を増幅させているところが凄い。スローから始まってテンポアップしていく時の高揚感、バンドが一体となってメロディアスに疾走するこのウキウキワクワク感は唯一無比で、まさに “クイーンの魅力全開!” と叫びたくなるようなカッコ良いナンバーだ。
 クイーンにとって70年代最後のスタジオ録音アルバム「ジャズ」で、彼らは “ブリティッシュ・ロック” という枠を飛び出し、様々なジャンル・スタイルの音楽を内包した “クイーン・ミュージック” と呼ぶしかない音楽を構築した。このアルバムはそんな何でもアリの魅力に満ち溢れたクオリティーの高い “クイーン流ポップス” が満喫できる楽しい1枚なのだ。

Queen - 'Don't Stop Me Now'


"Dead On Time" - Queen Unofficial Video #Remastered Audio#


Queen-Dreamer's ball


QUEEN - Bicycle Race (Uncensored - Nudity)