shiotch7 の 明日なき暴走

ビートルズを中心に、昭和歌謡からジャズヴォーカルまで、大好きな音楽についてあれこれ書き綴った音楽日記です

Star Fleet Project / Brian May & Friends

2011-03-10 | Queen
 1980年の大傑作アルバム「ザ・ゲーム」で全米を制覇したクイーンは80年代に入ってからも絶好調で、「フラッシュ・ゴードン」のサントラ盤、デヴィッド・ボウイとの共演シングル「アンダー・プレッシャー」、そして名曲名演の “これでもか攻撃” に圧倒される究極のベスト盤「グレイテスト・ヒッツ」と、70年代に活躍した他のバンドが沈黙したり解散したりする中、彼らだけは怒涛の快進撃を続けていた。実際、1973年のデビュー以降、彼らには駄演凡作の類が1枚もなく、すべてが名演傑作のオンパレードで、レッド・ゼッペリン亡き後、アルバムを出すごとに見事な裏切りでもって未知の感動を与えてくれそうなブリティッシュ・ロック・バンドはクイーンだけだった。
 しかし遂にと言うべきか、来るべき時が来たと言うべきか、そんなクイーンもやってはいけないミスを犯してしまった。「アナザー・ワン・バイツ・ザ・ダスト」の全米№1ゲットで血迷ったのか、よりにもよってブラック・ミュージックに手を染めたのだ。それが1982年リリースの「ホット・スペース」で、ラジオからシングル「ボディ・ランゲージ」が流れてきた時はあまりのショックに言葉を失ったほどだ。アルバムの購買意欲も起きず、結局FMエア・チェックだけで済ませたのは彼らの全アルバム中コレが初めてだった。
 私が「ホット・スペース」に失望したのはブラック・ミュージック云々以前の問題として、これまでのアルバムには必ず入っていた “古典的ブリティッシュ・ハード・ロック” タイプの演奏が1曲も無かったからだ。クイーンはあくまでもロック・バンドであって、ただ単にヒット曲をタレ流すポップ・グループではない。常にハイ・テンションとハイ・クオリティを維持し、ブリティッシュ・ロックの王道を行ってほしいという思いがあったのだが、私が愛したクイーンは以前ご紹介した空耳のように “あ~あぁ 終わっちゃった...♪” という感じで、まさに忸怩たる思いだった。果たせるかな、このアルバム以降の80年代クイーンのアルバムではブライアンのギター・パートが激減し、その結果として70年代のような血湧き肉躍るようなロック曲がぱったりと姿を消してしまった。
 1983年の終わり頃、そんな私のモヤモヤを吹き飛ばすような1枚のミニ・アルバムがリリースされた。それはブライアン・メイのソロ・プロジェクトで、サンダーバードとガンダムを足して2で割ったような(?)イギリスの子供向けTV番組「スター・フリート」の主題歌をカヴァーしているのだが、何とあのエディー・ヴァン・ヘイレンが参加しているというからコレはもうえらいこっちゃである。何を隠そう私にとっての “3大ギタリスト” はブライアン・メイ、エディ・ヴァン・ヘイレン、そしてスティーヴィー・レイ・ヴォーンの3人なのだが、その内の2人が共演しているのだ。これでコーフンしない方がおかしい。
 裏ジャケに載っているブライアン自身の解説によると、このプロジェクトは元々、ブライアンが息子のお気に入りTV番組のテーマ曲をロック・ヴァージョンでやってみようという軽~いノリでスタートしたもので、彼が一度共演してみたいと思っていたミュージシャン達に声をかけて実現したという。そのA①「スター・フリート」はウキウキワクワクするような曲想と爽快感溢れるブライアンの脱力ヴォーカルがバッチリ合っていて実に楽しい1曲なのだが、聴き物はやはりブライアンとエディーのギターだろう。この二人、何が凄いといって彼らにしか出せないユニークな音色で変幻自在なフレーズを次から次へと繰り出してくるところが他のギタリスト達と決定的に違う。私はほとんど盲目的と言ってもいいぐらい二人の大ファンなので、仮に弾いているのが「禁じられた遊び」でも(笑)フニャフニャと腰砕け状態になってしまう。そんな二人の共演ということで壮絶なギター・バトルをイメージしてしまうが、 “ブライアン・メイ & フレンズ” というだけあって、バトルと言うよりも和気あいあいとした雰囲気が伝わってくる楽しげなセッションといった感じだ。それにしても子供向けTV番組のテーマ曲をここまでカッコ良いロック・ナンバーにしてしまうのだからホンマに大したものだ。
 A②「レット・ミー・アウト」はブライアン作のブルージーなナンバーで、前半の歌の部分はどこにでも転がっていそうな単調なテーマ・メロディーの繰り返しなのだが、2分47秒からのギター・ソロ・パートに突入すると名手二人の個人芸が炸裂、演奏が俄然熱を帯びてきてブルージーなギター・インプロヴィゼイションの応酬に耳が吸い付く。クイーンやヴァン・ヘイレンが日頃演っている音楽はブルースではないが、さすがはロック界を代表する天才ギタリスト二人、ロックのルーツ・ミュージックとしてのブルースへの造詣も深そうだ。
 B面すべてを占める13分近い大作「ブルース・ブレイカー」は “Dedicated to E.C.” と書かれているようにエリック・クラプトンに捧げられた大ブルース大会で、バンドを離れて好き勝手にやれるソロ・アルバムだからこそ出来た趣味的なセッションの極めつけといった感じの曲。60年代末期から70年代初頭あたりの雰囲気濃厚な泥臭いブルースで、二人とも “ブルースの化身” と化して思う存分弾きまくっている。決して一般受けするような演奏ではないが、二人のファンなら聴いておいて損はないと思う。私がブルージーなギターを腹一杯き聴きたいと思った時にターンテーブルに乗せるのは大抵スティーヴィー・レイ・ヴォーンかこのアルバムのどちらかだ。
 ブライアン・メイ初のソロ・プロジェクトということで “春のクイーン祭り” のスピンオフ的なニュアンスで取り上げたこのアルバムは、その安っぽいジャケットとは裏腹にバリバリのロック・ギターやコテコテのブルース・ギターが満載のマニアックな1枚なのだ。

Brian May - Star Fleet [Star Fleet Project 1983]


Brian May & Eddie Van Halen - Blues Breaker (parte 1)[Star Fleet Project 1983]


Brian May & Eddie Van Halen - Blues Breaker (parte 2)[Star Fleet Project 1983]
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