shiotch7 の 明日なき暴走

ビートルズを中心に、昭和歌謡からジャズヴォーカルまで、大好きな音楽についてあれこれ書き綴った音楽日記です

The Game / Queen

2011-03-05 | Queen
 70年代半ばにして白黒2枚のアルバムでオペラ・ロックを極め、それ以降はアメリカン・マーケットを意識した何でもアリのポップなアルバムを連発して楽しませてくれたクイーンは、ベスト・アルバム的な意味合いも兼ねた怒涛のライヴ盤「ライヴ・キラーズ」で70年代を締めくくった。特に前作「ジャズ」が非常にヴァラエティに富んだ内容だったので “次のアルバムはどんな感じやろ?” と期待に胸を膨らませながら毎週ラジオで英米のヒット・チャート番組をチェックしていたところ、1979年も押し詰まったある日のこと、いきなり全英チャートにドカン!と飛び込んできたのが彼らのニュー・シングル⑤「クレイジー・リトル・シング・コールド・ラヴ」だった。
 いきなり軽快なアコギのイントロからプレスリー風のロカビリーが炸裂!もうノリノリである。それまでのクイーンからは考えられないような贅肉を削ぎ落としたシンプル&ストレートなサウンドがめちゃくちゃカッコイイのだ(^o^)丿 男の色気すら感じさせるフレディーの円熟ヴォーカル、音楽の根底をしっかり支えながら要所要所をビシッとキメるジョンのベース、バンドをグイグイとドライヴさせるロジャーのタイトなドラミング、相変わらず歌心全開で絶妙なソロを取るブライアンのギターと、バンドが第2黄金期のピークを迎えつつあったことを如実に示す快演だ。一度聴いたら忘れられないようなキャッチーなメロディー展開や爽快感溢れるコーラス・ハーモニーは初期ビートルズを彷彿とさせるものがあり、音楽活動を再開しようとしていたジョン・レノンがこの曲を聴いて大いに刺激を受けたというのも頷けるスーパー・ウルトラ・キラー・チューンだ。
 このリード・シングルに顕著なように、彼らが大作主義が主流だった70年代に別れを告げ、来るべき80年代を先取りしたかのような “シングル志向の” シンプルでキャッチーなサウンドで勝負に出たのが翌1980年にリリースされたアルバム「ザ・ゲーム」だった。シングル「クレイジー・リトル・シング・コールド・ラヴ」を聞いた時もブッ飛んだが、このアルバムも実に衝撃的な内容で、いきなりシンセが飛び交うわ、ベースはブンブン唸るわでビックリ(゜o゜) しかしアルバム1枚聴き終えて感じたのは、ここに屹立しているのは紛れもないクイーンの音楽であり、キャッチーであることが決してロックの正当性を破壊するものではないことを如実に示す非常にクオリティーの高いアルバムだということ。どこを切っても捨て曲ナシの大傑作で、私的にはこんな“アルバム1枚丸ごとメロディーの塊” みたいな盤はポールの「ラム」以来だった。
 このアルバムは①「プレイ・ザ・ゲーム」で幕を開ける。彼らの初期のアルバムにあった “No Synthesisers!” というクレジットは前々作「世界に捧ぐ」から無くなってはいたものの、その後の「フラッシュ・ゴードン」への流れを想わせるスペイシーなシンセのイントロに驚かされる。そもそも私は基本的にシンセが大嫌いで80年代中盤以降のフォリナーやヴァン・ヘイレンみたいな使い方には虫唾が走るのだが、さすがはクイーン、シンセに頼るのではなくあくまでも曲を巧く引き立てるサウンド・スパイス的な使い方をしている。曲自体はクイーンの王道とも言うべきドラマチックな展開のメロディアスなバラッドで、特にフレディーの優しく包み込むような歌声とブライアンの哀愁舞い散るギター・ソロに涙ちょちょぎれる。サビのコーラスもたまらんなぁ... (≧▽≦)
 これに続くのがベースが大活躍する②「ドラゴン・アタック」と③「アナザー・ワン・バイツ・ザ・ダスト」だ。②はブライアンのプッツンした様な(?)ギターが聴き物で、リズム隊も生き生きとビートを刻む。③はフレディーと親交のあったマイケル・ジャクソンからシングルにするべきだとアドバイスされたというブラック・フィーリング溢れるダンス・ナンバーで、ここでもベースが唸りまくるのだが、私としてはファンク路線のクイーンというのはあんまり好みではない。こんなこと、別に彼らがやらんでもエエのにと思ってしまうのだ。ただ、ブライアンの光速カッティングはめちゃくちゃカッコイイけど。
 ジョンが書いた④「ニード・ユア・ラヴィング・トゥナイト」は軽快なポップンロールで、思わず一緒に歌いたくなるキャッチーなメロディーはクイーンの隠れ名曲トップ3に入れたいくらいの出来の良さ。ブライアンのソロもサビのコーラスもウキウキワクワク感をかき立てる楽しいもので、転がり落ちるようなエンディングから次の⑤への流れもめっちゃ好きだ。
 B面1曲目の⑥「ロック・イット」はフレディーがスローに迫る前半部と一転してロジャーがハスキーなヴォーカルでハードに疾走する後半部の対比の妙がお見事!この手の曲調はロジャーに限ると思うし “We want some prime jive♪” の後追いコーラスも実にエエ味出している。⑦「ドント・トライ・スイサイド」は次作「ホット・スペース」の布石になってそうなダンサブルなナンバーだが、ここではまだ抑制が効いている。それにしても邦題の「自殺志願」は何とかならんかったんか...(>_<)
 ⑧「セイル・アウェイ・スウィート・シスター」はブライアンの切ない歌声が胸に沁みる名バラッド。クイーンお得意の美しいコーラスにブライアンのまろやかな音色のギターと、ファンとしてはたまらん展開の1曲だ。⑨「カミング・スーン」はロジャーが書いたノリの良いロックンロールで、やや単調だが “カミン ス~ン♪” の心地良いフレーズが耳に残るナンバーだ。
 アルバムのラスト曲⑩「セイヴ・ミー」は何を隠そう私がクイーンで一番好きな曲。オマエが好きな “ロックなクイーン” とちゃうやんけ!と言われそうだが、私にとってこの曲はロックとかポップとかを超越した次元にある神曲で、特にこの切ない歌詞が心にグッとくるのだ。サウンド面でもブライアンのギターは “もうこれしかない!” という感じの音色・フレーズのアメアラレ攻撃だし、力強く歌い上げるフレディーのヴォーカルは圧倒的な説得力で迫ってくるという実にドラマチックな展開で、クイーンというバンドが貫いてきた美学のようなものをギュッと凝縮したかのような屈指の名曲名演だと思う。
 とにかくこの「ザ・ゲーム」は全曲シングル・カットできそうなぐらいヒット・ポテンシャルの高い楽曲が揃っており、1枚のアルバムからシングルを何枚も切ってアルバム・セールスを伸ばしていくという80年代ロックの方向性を決定づけた大名盤。クイーンの全てのアルバム中で「シアー・ハート・アタック」と並んで最も愛聴している1枚だ。

Queen - 'Crazy Little Thing Called Love'


Queen - Save Me at The Hammersmith 1979 (Improved Quality)


Queen - Play The Game [ High Definition ]


Queen - Need Your Loving Tonight


Queen - Sail away sweet sister pic

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