shiotch7 の 明日なき暴走

ビートルズを中心に、昭和歌謡からジャズヴォーカルまで、大好きな音楽についてあれこれ書き綴った音楽日記です

「Hey Jude」アルゼンチン盤(Mono)

2022-12-20 | The Beatles
 日本代表の活躍で大いに盛り上がったワールドカップはアルゼンチンの優勝で幕を閉じた。私は基本的にビートルズとスター・ウォーズとF1以外のことはどーでもいいのだが、サッカーのワールドカップだけは理屈抜きに盛り上がれるので、この世界中を巻き込んだ4年に一度のお祭り騒ぎに便乗して大いに楽しませてもらった。
 今回のW杯で一番印象に残っているのはもちろん日本代表のドイツ戦とスペイン戦だが、決勝のアルゼンチンvsフランスも見ごたえ十分の死闘だったし、番外編で言うと、メッシが試合後のインタビュー中にガンを飛ばしてきたオランダFWに向かって “Que mira bobo, anda pa alla!(何見とるんじゃ、ボケ! とっとと失せろ、クソ野郎!)” とメンチを切ったシーンが面白くて、私はこの “ケ ミラ ボゥボォ、アン ダ パジャー ボゥボォ!” という南米版Vシネさながらの名フレーズ(笑)がすっかり気に入ってしまった。というワケで、今日はチームを優勝に導いただけでなく、そんな面白ネタまで提供してくれたメッシさんに敬意を表してお気に入りのアルゼンチン盤「Hey Jude」を取り上げよう。
Leo Messi: Que Mira' Bobo, que Mira Bobo? 🤣


 「Hey Jude」というアルバムは、同じ米キャピトルによる編集盤「Magical Mystery Tour」が今では準オリジナル・アルバム的な地位にまで昇格(?)したのに対し、不当なくらい過小評価されているように思う。ビートルズの全シングル中で最大の売り上げを誇る名曲「Hey Jude」を始め、「Lady Madonna」や「Revolution」、「The Ballad Of John And Yoko」といった後期ビートルズ屈指のロックンロール・ナンバーが入っているにもかかわらず、である。その原因はおそらくその中途半端な選曲基準にあるのではないかと思うのだが、要するにアメリカ市場でまだステレオ音源がリリースされていなかったというただそれだけの理由でここに入れられた「Can't Buy Me Love」や「I Should Have Known Better」といった何の罪もない初期の楽曲たちが大半を占める後期音源の中で居心地悪そうにしているのが不憫でならない。
 あくまでも私見だが、A①「Can't Buy Me Love」からA④「Rain」までの4曲をアルバム「Yellow Submarine」のA面に入っている新曲4曲と入れ替えて68~69年音源でアルバムに統一感を持たせていればイメージがガラッと変わっただろう。「Lady Madonna」「All Together Now」「Hey Bulldog」「Revolution」の並びなんて、もう考えただけでワクワクするではないか?
 話がちょっと横道に逸れてしまったが、要するに私はこの「Hey Jude」というアルバムが大好きなのだ。もっと評価されても良いのではないか、と言いたいのだ。確かに初期~中期の4曲はちょっと場違いな感もあるが(→だって「Magical Mystery Tour」に「All My Loving」や「Day Tripper」が入ってたらおかしいでしょ?)どれもみんな大好きな曲なので、ただのコンピ盤として割り切れば特に不満はない。このブログで以前「Hey Jude」の各国盤を数回にわたって特集したことがあって、それが後に “各国盤バトルロイヤル” なる企画を始めるきっかけとなったのだが、その特集以降も「Hey Jude」は常に他のオリジナル・アルバムと同じトップ・プライオリティで集めており、そんな中で私のレーダーに引っ掛かってきたのがモノラルのアルゼンチン盤だったのだ。
 「Hey Jude」のモノラル盤と言えば真っ先にブラジル盤が頭に浮かぶが、既出のシングル盤用モノ・ミックスを使って製作された真正モノのブラジル盤とは違い、このアルゼンチン盤はすべてのトラックがステレオ・ミックスをモノにしただけの “偽モノ” とのことだが、私としては “本モノ” であれ “偽モノ” であれ気持ちよく聴ければそれでいいので問題はない。それに、大好きな「Paperback Writer」があのキモいエコー無しのモノラル・ヴァージョンで聴けるなんて最高だ。 “偽モノ” なんか邪道だという奴には “アン ダ パジャー ボゥボォ!” だ。
 ちょうど eBay で知り合って懇意にしていたアルゼンチンのセラーが eBay 外取引を持ちかけてきていて(← eBay に手数料を支払うのが嫌だったらしいwww)たまたまそのリストにこのアルゼンチン盤モノラル「Hey Jude」が載っており、ジャケットのレコード取り出し口がボロボロながら盤質 Exで $50ならエエ買い物だと考えて即オーダーしたのだった。
 届いたレコードのマトは ブラジル盤と同じ YEEX-150/151だが、字体は全く違う独自カットだ。盤に針を落とすといきなり凄い音でA①「Can't Buy Me Love」がスピーカーから迸り出てきた。これこれ、やっぱりモノラルはこうでなくっちゃ... と嬉しくなるような明朗快活なサウンドだ。続くA②「I Should Have Known Better」も、A③「Paperback Writer」も “ファイトー、イッパァーツ!” と快哉を叫びたくなるような元気な音で大満足。ところがA④「Rain」は何故かジョンのヴォーカルがバックの演奏に埋もれてショボく聞こえる変てこりんなミックスになっており、このトラックだけはハッキリ言って音作りに失敗している感じ。因みにブラジル盤の「Rain」はちゃんとしたバランスで鳴っている。A⑤「Lady Madonna」からはマトモなミックスに戻っており、文句ナシの爆音でこの名曲を楽しむことが出来る。A⑥「Revolution」のロックな圧も最高だ。
 B①「Hey Jude」はベースがブンブン唸る豪快な音作りで私は大いに気に入った。まるで鉄の指サックをして(笑)太い弦をつま弾いているような感じ。大地を揺るがす重低音は私の大好物なのだ。B②「Old Brown Shoe」のベースも同様の重低音でアルテック・ヴァレンシアの38cmウーファーを震わせる。B③「Don't Let Me Down」は演奏も凄いがジョンのヴォーカルも負けじと強烈に主張してくるところがいい。B④「The Ballad Of John And Yoko」を爆音モノラルで聴く喜びを何と表現しよう? この曲はイマイチ過小評価されているきらいがあるが、曲としてはノリ1発で楽しめる痛快なロックンロールだと思う。
 名曲の宝庫といえるアルバム「Hey Jude」を気持ちの良いモノラル爆裂サウンドで聴けるこのアルゼンチン盤、私はサッカー・ファンでもアルゼンチン・サポーターでもないが、思わず “アージェンティナ!” と叫びたくなるような好盤だ。