shiotch7 の 明日なき暴走

ビートルズを中心に、昭和歌謡からジャズヴォーカルまで、大好きな音楽についてあれこれ書き綴った音楽日記です

【W杯1次リーグ突破記念】クリスタルズ特集

2022-12-03 | Wall Of Sound
 私はサッカーに関してはメッシとロナウドとネイマールぐらいしか知らない超ド素人だが(→正直言うと日本代表の名前は一人も知らんかった...)、ワールドカップの時だけはミーハー根性丸出しで思いっきり盛り上がる。それにしてもまさか日本がドイツとスペインに勝つとは夢にも思わなんだが、テレビを見ていて試合以外で気になったのが CMから試合中継に戻る時に流れる音楽だ。いったんもめんみたいなのが砂漠やスタジアムの上空を飛んでる映像のバックに流れる “タン タ タン タン♪” というあの短いフレーズである。これが私には何度聴いても「Then He Kissed Me」のイントロに聞こえてしまうのだ。最初聴いた時は “何でフィル・スペクター???” と不思議に思ったが、どうやらこれが今回のW杯の公式テーマ曲らしい。
The Official FIFA World Cup Qatar 2022™ Theme | FIFA World Cup 2022 Soundtrack

 というワケで、ワールドカップ1次リーグ突破記念としてクリスタルズの特集をやってみることにした。

①Da Doo Ron Ron(Philles 112)
 クリスタルズ最大のヒット曲は全米1位になった「He's A Rebel」かもしれないが、曲の知名度や出来の良さ、カヴァー人気という点ではこの「Da Doo Ron Ron」の方が数段上だろう。全米チャートの詳細な資料を最近手に入れたので調べてみたら、80⇒54⇒37⇒19⇒13⇒5⇒3位という凄いペースでチャートを駆け昇ってきたものの、レスリー・ゴーアの「It's My Party」(60⇒26⇒9⇒1位ってまるでビートルズみたいな急上昇ぶりやな...)と坂本九の「Sukiyaki」(こっちは3週連続1位!!!)の牙城を崩せなかったということらしい。
 私がこの曲を最初に聴いたのはCD黎明期に買ったオールディーズの怪しげなコンピ盤で、そのキャッチーなメロディーと弾むようなリズムがいっぺんに気に入ったのだが、バックの楽器の音がどこをどう聴いても60'sオールディーズっぽくなかったので色々調べてみたら案の定再録ヴァージョンだった。それからしばらく経ってようやく真正本物ヴァージョンを聴くことができてメデタシメデタシとなった次第。ただ、私の体験上オールディーズの名曲の再録ヴァージョンってほとんどの場合期待ハズレに終わることが多いのだが、この曲に限ってはキラキラしたポップ感全開で迫る再録ヴァージョンの方も捨て難い魅力があって、私は両方とも気に入っている。
Da Doo Ron Ron [日本語訳・英詞付き] ザ・クリスタルズ

Da Doo Ron Ron (Rerecorded)


②Then He Kissed Me(Philles 115)
 今回の特集のきっかけとなったこの曲はクリスタルズの、いや、フィル・スペクターの全楽曲中でも三指に入る愛聴曲。初めて聴いたのはキッスによるカヴァーで、その後も本家クリスタルズを始め、ビーチ・ボーイズやマーサ&ヴァンデラス、レイチェル・スウィートと名カヴァーが目白押しだが、最近特に気に入っているのがスペクター・マニアで知られるブルース・スプリングスティーンが2008年にセントルイスのスコットトレードセンターで行ったライヴのオープニング・ナンバーとして取り上げ、後にライヴ・アーカイヴ・シリーズとしてオフィシャル・リリースされた音源で(←1975年以来33年ぶりにセトリに復活というのが凄い!)、この曲への愛情とリスペクト溢れる神カヴァーだと思う。“名曲は時代を超える” を地で行くこの「Then He Kissed Me」、まさにブラボー!と快哉を叫びたくなるキラー・チューンだ。
The Crystals - Then He Kissed Me (With Lyrics)

Then She Kissed Me (Live at the Scottrade Center, St. Louis, MO - 08/23/08 - Official ...


③I Wonder(London 9852)
 この曲は私がまだフィレス・レーベルのアーティスト達の複雑な事情もフィル・スペクターの鬼畜な性格も知らない音壁初心者だった頃に購入したロネッツのCDに入っているのを聴いて大好きになったもので、私は何の疑いも抱かずにロネッツの曲だとばかり思っていた。ところがその後手に入れたクリスタルズのCDにもこの曲が入っていたので “どういうこっちゃねん?” と訝しがりながらも大好きな曲が色んなヴァージョンで聴けるのが嬉しくてすぐに聴き比べをやってみた。
 ところが流れてきた曲はロネッツのヴァージョンとはかなり違う中途半端なアレンジで、ロネッツ版の完璧なアレンジでクリスタルズ版「I Wonder」が聴けると思っていた私は肩透かしを食ったのだった。クリスタルズ版が先に世に出ていることを考えると、畜生のスペクターがまずクリスタルズを実験台にして試行錯誤中のアレンジを試し、それを更に改良して完成度を高めたアレンジを自分の女であるヴェロニカのロネッツに提供したのではないかと想像を逞しくした。
(54) The Crystals - I Wonder

Ronettes - I Wonder on Mono 1964 Phil Spector Records.


④Little Boy(Philles 119)
 フィル・スペクターは嫁さんのロニーを自宅軟禁状態にしてモラハラしまくるわ、ジョンの「Rock 'n' Roll」のレコーディング・テープを持ち逃げするわ、ラモーンズとのレコーディング時にはムシャクシャすると天井に向かって拳銃をぶっ放すわ、挙句の果てに自宅で女優を射殺して刑務所にぶち込まれ、そこでコロナ感染してあっけなく死んでしまうわと、人としてはまさに絵に描いたような畜生中の畜生なのだが、プロデューサーとしてはレジェンド・クラスの超一流で、彼の “ウォール・オブ・サウンド” は人類音楽史上屈指の大発明と言っても過言ではないと思う。
 スペクターがフィレス・レーベルの総力を結集して作り上げた「A Christmas Gift For You」というクリスマス・アルバムは同レーベルの「Presenting The Ronettes featuring Veronica」と並ぶスーパーウルトラ大名盤だが、クリスタルズのこの「Little Boy」はそんなクリスマス・アルバムのエッセンスを3分にギュッと濃縮還元したかのようなポップな仕上がりになっている。てゆーか、バック・トラックだけ聴いたらほとんど違いがワカランかったりして...(笑)
1964 Crystals - Little Boy

 ということで、ワールドカップ⇒クリスタルズ⇒クリスマスと見事に(?)つながった今回の特集でした。あさってはいよいよベスト8をかけたクロアチア戦... ニッポンがんばれー!!!