shiotch7 の 明日なき暴走

ビートルズを中心に、昭和歌謡からジャズヴォーカルまで、大好きな音楽についてあれこれ書き綴った音楽日記です

再会の湖 / 尾崎奈々

2023-10-15 | 昭和歌謡・シングル盤
 私はこれまで主にネット・オークションでレコードを買ってきたが、首尾よく落札できた時の喜びよりも失敗した時の悔しさの方が遥かに強く記憶に残っている。真っ向勝負でアウトビッドされたのならまだ “やっぱり金持ちには勝てへんな...” と諦めもつくのだが、締切り間際にネット回線がダウンしたりクリックしてもパソコンが反応しなかったりとかで獲れたはずの盤をスナイプ出来ずに獲り損ねた時は悔しくて悔しくて夜も眠れず、その盤を手に入れるまで延々と引きずることになってしまう。これって締切り直前のスナイプをやめて早めに入札しておけば済む話なのだが、ライバルを出し抜いて1円でも安く買おうという貧乏根性がどうしても抜けきれず、それが仇になってしまうのだ。
 今回取り上げる尾崎奈々の「再会の湖」もそんな大失態の末にようやく手に入れた1枚で、オークションでいつも通り締切り5秒前に入札ボタンをクリックしたところ、何故か “オークションにアクセスできませんでした” という表示が出てビックリし、大慌てで再入札したものの、時すでに遅しで “このオークションは終了しています” という無慈悲な表示が出るばかり...(>_<) F1では雨でコンディションが難しい時の予選で、とりあえず保険のために出しておくタイムを “バンカー” というのだが、何故もっと早く “バンカー” 入札しておかなかったのだろうと悔やんでも悔やみきれなかったし、その時は予算的に余裕をかましていたこともあって悔しさも倍増。それから2週間くらいはこの “逃がした魚” のことで凹みまくって仕事も手につかなかったほどだ。
 その一件から約3ヶ月ほど経ったある日、登録しておいたヤフーから “オークションに出品されました” という通知が来て私の心に火が付いた。リベンジの機会到来である。今回は絶対に負けは許されない。私は前回の反省を基に締切り7分前に渾身の入札をして何とか無事落札。落札額は前回逃がした時のほぼ半額で、届いた盤もピッカピカのNM盤だったので、まぁ結果オーライというところだが、3ヶ月間のストレスを考えると “あーしんどかった...” という思いしか残らない。
 前置きがめちゃくちゃ長くなってしまったが、私はこの「再会の湖」という曲が大好き♡  レコードがリリースされた1971年というのはちょうどベンチャーズ歌謡が猛威を振るっていた時期だったが、北欧エレキを基調としたアッパーな曲調はまさに絵に描いたような “スプートニクス歌謡” とでも呼ぶべきもので、この手のサウンドが三度のメシよりも好きな私は哀愁舞い散るエレキの音色に涙ちょちょぎれるのだ。この曲における北欧インスト的な要素は大瀧詠一の「さらばシベリア鉄道」なんかにも影響を与えているように思えるのだが、それはまた別の話。
 私がこの曲に魅かれるもう一つのポイントはジョニー・グリフィンの名演で知られるスタンダードの名曲「Hush-A-Bye」の美旋律をパク... いや、アダプトしているところで、特にAメロの “湖に投げかけた あなたへの口づけ 恋人になれた あの日が懐かしい~♪” のパートなんかもうそっくり。作曲した井上忠夫はブルーコメッツに入る前はジャズ喫茶で演奏していたらしいので、おそらくスタンダード・ソングにも造詣が深かったのだろう。“パクリ云々” に関する私の考えはこれまで何度もこのブログに書いてきたが、優れた曲を元にしてまた別の優れた曲を作ることは誇るべき才能だと思うし、そのようにして素晴らしい楽曲がどんどん増えていくことは音楽ファンとして大歓迎だ。
 歌っている尾崎奈々は松竹の清純派女優で1968年にテイチクからシングルを2枚出しているが、この「再会の湖」は1971年にワーナー・ブラザーズのリプリーズ・レコードからリリースしたもの。やや音程が不安定になるところはあるものの、曲の良さと絶妙な器楽アレンジの相乗効果で私にとっては超の付く愛聴曲になっているし、スナイプを失敗して忸怩たる思いの末にようやく手に入れたこともあって愛着もひとしおだ。
 それにしてもこんな名曲名演が次から次へと生み出されていた1960年代の終わりから1970年代の初めにかけての数年間って日本の音楽史上でも “神ってる”(←短命だったなこの言葉...)レベルの黄金期だったように思う。昭和という素晴らしい時代を生きることができてホンマにラッキーだ...(^.^)
尾崎奈々/再会の湖

Hush-A-Bye – Johnny Griffin
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