ストリーミングやダウンロードといった言葉とは無縁の世界に生きている私のようなレコード至上主義者にとって “B面に名曲あり” というフレーズはまさに至言と言ってよく、たまにA面を凌駕するようなB面曲に出会うと大コーフンしてしまう。特に60~70年代にリリースされた昭和歌謡のシングルB面はまさに “宝の山” と言ってもいい充実ぶりで、そういった “隠れ名曲” の存在を知らずに生きていくのは音楽ファンとしては実に勿体ないことだと思うのだ。そういえば前回取り上げた木元泉の「どこかでだれかに」もB面扱い(→ジャケットのタイトル文字がめちゃくちゃ薄いwww)だった。そういうワケで、この“B面名曲特集” という企画を思いついた次第。パート1はメジャーな歌手編です。
①黛ジュン「ブラック・ルーム」(1968.5)
レコード大賞を受賞したA面の「天使の誘惑」の陰に隠れがちだが、B面の「ブラック・ルーム」という曲のカッコ良さはハンパない。特に洋楽ファンにはハワイアンなA面よりも絶対にこっちの方がウケるのではないか。ファンキーなブラスとドラムのアンサンブルをバックに力強いヴォーカルで縦横無尽にグルーヴするジュン姐さんが超カッコイイのだ(^o^)丿 後半のコール&レスポンスのパートなんかもう “ホンマにこれが1968年の邦楽???” と “?” を3つも付けたくなるくらいソウルフル。これをB面曲として埋もれさせてしまっては昭和歌謡ファン失格というものだろう。黛ジュンの凄さを思い知らされた1枚だ。
黛ジュン「ブラック・ルーム」1968
②弘田三枝子「風とオトコのコ」(1967.7)
これまた大名曲の誉れも高いA面「渚のうわさ」のB面として不遇をかこっているのが橋本淳&筒美京平コンビによる “ひとりGS” 屈指の名曲「風とオトコのコ」だ。もしも私が “ひとりGS” って何?と訊かれたら、この曲をイの一番に聴かせるだろう。コロムビアに移籍して東芝時代よりも更にキメ細やかな表現力を増したミコたんのパンチの効いたヴォーカルが京平先生の曲想と見事にマッチして完全無欠なビート歌謡に仕上がっているのが凄い。スパイダースへのオマージュとおぼしき歌詞と演奏が心の琴線をビンビン震わせるキラー・チューンだ。
弘田三枝子/風とオトコのコ
③金井克子「ミニ・ミニ・ガール」(1967.8)
このシングルが発売された1967年当時はどうだったのかは知らないが、少なくとも今現在ではB面の「ミニ・ミニ・ガール」がA面の「小っちゃな恋の歌」を知名度でも人気度でも圧倒的に凌駕しているのではないか。とにかくこのレコードは疾走感溢れるB面「ミニ・ミニ・ガール」の魅力に尽きるだろう。金井克子といえば能面のような無表情で「他人の関係」をクールに歌う姿しか知らないという人も多いかもしれないが、そういう人がこれを聴いたら驚倒するに違いない。とにかくノリがすべて、という感じのイケイケなアッパー・チューンだが、この曲を書いたハマクラこと浜口庫之助って、この手のキャッチーな大衆向けソングを作らせたら天下一品ですな。
レ・ガールズ 1967年
ミニミニ・ガール 金井克子+ザ・ブルー・ビーツ+ミニ・ガールズ
④いしだあゆみ「星のタンバリン」(1968.1)
いしだあゆみの “ひとりGS” と言えば何はさておきコロムビア移籍第1弾シングルの「太陽は泣いている」に尽きると思うが、移籍前にビクターから最後に出したシングル「小雨の思い出」のB面に入っているこの「星のタンバリン」で既に “ひとりGS” をやっていることはあまり知られていない。ハジけまくってる「太陽は泣いている」に比べるとさすがに “寸止め状態” な感は否めないが、地味な印象の強いビクター時代では文句なしにベストと言える作品だ。「雨に濡れた慕情」や「朝がくるまえに」「四つのお願い」といったちあきなおみの初期名曲の数々を手掛けた鈴木淳によるビート歌謡の傑作として、昭和歌謡ファンにもっと認知されてもいい1曲だと思う。
いしだあゆみ - 星のタンバリン