shiotch7 の 明日なき暴走

ビートルズを中心に、昭和歌謡からジャズヴォーカルまで、大好きな音楽についてあれこれ書き綴った音楽日記です

B面名曲特集②

2023-04-30 | 昭和歌謡・シングル盤

B面名曲特集第2弾はその筋系のマニア受けしそうな “女優編” です。

⑤篠ヒロコ「愛の世界」(1968.10)
 篠ヒロコは1968年にクラウンレコードからデビューして2枚のシングルをリリースし、キングレコードに移籍して6枚シングルを出すもヒットせず、結局その後女優として成功したのだが、私は幸薄な女を演じる女優としての彼女よりも、フェロモンをまき散らしながら濃厚でメロウな歌声を聞かせる実力派シンガーとしての彼女の方が断然好き。特に彼女のデビュー・シングルはB面の「愛の世界」がA面の「水色の風」に比肩するくらいクオリティーの高い作品で、これがB面では勿体ない... 少なくとも両A面扱いにすべきではないか... と思うほど気に入っている1曲なのだ。スプートニクスを想わせる哀愁舞い散るイントロのギターの音色だけで昭和歌謡ファンはフニャフニャと腰砕け状態に陥るだろう。名曲揃いのいずみたく作品の中でも五指に入るキラー・チューンだ。
篠ヒロコ 愛の世界


⑥荒井千津子「男と女のなぎさ」(1969.3)
 映画「いれずみ無残」シリーズで主役を張った荒井千津子は “女優の余技” として2枚のシングルをリリースしており、1枚は以前取り上げたやさぐれ歌謡の名曲「ふうてんブルース」で、もう1枚がこの「終りのブルース」というシングル。このレコード、A面が気の毒に思えるくらいB面の「男と女のなぎさ」が圧倒的に、超越的に、絶対的に素晴らしい。作曲したのはマイナー調のメロディーを書かせたら天下一品の鈴木淳で、出だしの “パッ パッ パヤパパ パパパヤ~♪” からもう美旋律が出るわ出るわのわんこそば状態で、絵に描いたような哀調メロディーに涙ちょちょぎれる。インパクト抜群のジャケットもたまらんたまらん!!!
男と女のなぎさ


⑦加山麗子「センチメンタル・モーニン」(1978.3)
 日活ロマンポルノからキャリアをスタートさせた加山麗子は、後に数多くのテレビドラマやメジャーな映画(→松田優作の「探偵物語」や三船敏郎の「制覇」なんかにも出てた...)に出演するくらいまで売れっ子になった女優で、私と同年代の方なら “あぁ、あの人か...” とご存じの方の多いと思う。そんな彼女が出した唯一のシングルが「うらみ花」というやさぐれ演歌なのだが、このレコードの真価はB面の「センチメンタル・モーニン」にこそあると断言したい。正直言うとこのレコードはジャケ買いしたのだが、とにかく女優とは思えないくらい歌は上手いし、昭和歌謡のエッセンスを濃縮還元したような親しみやすいメロディーは絶品だし、おまけにこれほどの美人ということで、グルーヴ歌謡の大当たり盤として忘れられない1枚なのだ。
加山麗子「 センチメンタル・モーニン」


⑧渚まゆみ「Mr. TENG」(1985.9)
 A面のムード歌謡風「ロマン札幌」も決して悪い出来ではないが、盤をひっくり返してフリップ・サイドを聴いてしまうともうこっちばかりを何度もリピートしてしまう... そんな強烈な吸引力と危険な中毒性を持ったナンバーがハマクラ・ワールド全開で迫るB面曲「Mr. TENG」だ。とにかく他では味わえない面白さというか、バカバカしいほどの楽しさに満ち溢れており、文字通り “楽しむ” という音楽の原点を思い出させてくれるナンセンス・コミック・ソングなのだ。80'sらしいシンセの打ち込み音でチープな味わいを増幅させているあたりにもハマクラの天才を感じさせるし、“天狗” が “ぐでんぐでん” に酔っ払うという歌詞のアイデアも秀逸そのもの。何よりもハマクラの軽妙な合いの手をバックに水を得た魚の無ようにノリノリで歌うまゆみ姐さんが最高だ。酔いつぶれた天狗を起こそうと様々な声色で呼びかけるエンディングなんかはさすが女優だけあって凡百の歌手では真似できないような見事な表現力をみせつける、珍曲にして名曲と言えるナンバーだ。
渚まゆみ『Mr.TENG』
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