shiotch7 の 明日なき暴走

ビートルズを中心に、昭和歌謡からジャズヴォーカルまで、大好きな音楽についてあれこれ書き綴った音楽日記です

Mirage / Fleetwood Mac

2010-01-24 | Rock & Pops (80's)
 フリートウッド・マックは実に不思議なグループである。彼らのサウンドはブリティッシュ・ブルース・バンドとしてスタートした60年代のものから度重なるメンバー・チェンジを経て大きく変貌していくのだが、私にとってのマックは自分がリアルタイムで経験してきた「ファンタスティック・マック」以降の、アメリカナイズされたポップ・ロック路線のマックであり、1つのバンドの中にリンジー、スティーヴィー、クリスティンと3人もの “歌えるソングライター” を擁したザ・ワン・アンド・オンリーなスーパーグループとしてのマックなのだ。その音楽性は他に類を見ないユニークなもので、例えば “ボン・ジョヴィみたいな感じのハードロック” とか、 “デュラン・デュランみたいなダンス・ポップ” という言い方はよく耳にするが、 “フリートウッド・マックみたいなサウンド” を持ったグループを私は他に知らない。彼らの音楽には真似したくても出来ないようなグルーヴがあり、ジャンル分け不可能な孤高の存在なのだ。
 マックといえば何はさておき「噂」(77年)である。全米チャートで31週№1を記録したこのアルバムは彼らの代表作であり、「ファンタスティック・マック」(75年)の続編的なジャケットとサウンドも含めて傑作には違いないのだが、彼らの全作品中ターンテーブルに乗った回数が最も多いのは間違いなくこの「ミラージュ」(82年)の方だ。商業的に大成功を収めた「噂」で行くとこまで行ってしまったマックの次作「タスク」(79年)が様々なアイデアを盛り込んだヴァラエティー豊かな内容の2枚組になったのは、私の中では何となくビートルズの「ホワイト・アルバム」とイメージがダブるところがあって、マックがこの時点で解散していても何ら不思議はない。80年には70's後半の黄金時代の総決算とも言うべき「フリートウッド・マック・ライヴ」さえ出している。しかし彼らはグループとして持ちこたえ、80'sポップス黄金時代の幕開けにこの「ミラージュ」をひっさげて戦線復帰したのである。82年といえば、楽しさ全開のポップスが雨後のタケノコのように続々と登場し全米チャートを賑わせていた頃だが、そんな中にあってマックの煌びやかなポップ性は際立っていた。売り上げやチャート成績では「噂」に遠く及ばないものの、各曲のクオリティーの高さではむしろこちらの方が上ではないかと思えるぐらい良い曲が揃っているし、そのサウンドはより洗練され、徹底的に磨き込まれている。
 アルバム冒頭を飾るのはクリスティンの①「ラヴ・イン・ストア」で、彼女のクリスタル・ガラスのように透明感の高い歌声にスティーヴィーが寄り添うようにコーラスをつけるパートにゾクゾクする。これはタマランなぁ...(^.^) この曲は3rd シングルとしてカットされ全米22位まで上がったが、シングルよりもアルバム1曲目としての存在感の方が遥かに大きい。アルバムからの 1st シングルは同じクリスティンの⑨「ホールド・ミー」で、いかにも彼女らしいキャッチーなメロディーを持ったこの曲を、ギターのサウンドひとつ取っても様々な音色を使い分けてオーヴァーダブしながら絶妙なサウンド・プロダクションでもって完全無欠なポップ・ソングに仕上げている。リンジーとクリスティンのツイン・リード・ヴォーカルに美しいコーラス・ハーモニーが幾重にも重ねられていくところなんかもうゾクゾクする。「アイ・オブ・ザ・タイガー」、「アブラカダブラ」、「素直になれなくて」といったウルトラ・メガ・ヒット曲の首位争いの割りを食って7週連続全米4位という珍しい記録を作ってしまった曲としても忘れられない。尚、メンバーが砂漠を彷徨うPVはストーリー性がイマイチ意味不明だが、各人のキャラが立っているので見ていて飽きない。2nd シングル⑤「ジプシー」は妖精スティーヴィーの魅力を凝縮したようなアップテンポのナンバーで、コワイぐらいに曲のイメージを表現したモノクロ基調のPVが何と言っても素晴らしい。ドリーミーでポップな曲想、ステーヴィーの魔性(?)ヴォーカル、リンジーの歌心溢れる速弾きソロ、弾けまくるリズム... そのすべてが圧巻で、名曲名演揃いのこのアルバムの中でも一番好きなナンバーだ。全米12位は不当なまでに低すぎると思う。
 シングル曲以外にもクオリティーの高い曲が多い。リンジーの②「キャント・ゴー・バック」は彼のポップ・センスが存分に発揮された名曲名演。弾むようなリズムに乗ったウキウキ・サウンドがたまらない(^o^)丿 私的には上記のシングル群に比肩するフェイヴァリット・トラックだ。スティーヴィーの③「ザッツ・オールライト」と⑧「ストレート・バック」はソロ・アルバムの成果が存分に発揮されているし、リンジーの⑩「ダイアン」や⑪「アイズ・オブ・ザ・ワールド」は新味はないもののいかにも彼らしいポップなナンバーだと思う。
 この「ミラージュ」はロック・ジャーナリズム的には歴史に名を残すような “大名盤” ではないかもしれないが、ファンが目を細めて聴き入るタイプの、長~く愛され続ける好盤だと思う。黒を基調としたシックなジャケットもカッコエエなぁ... (≧▽≦)

Fleetwood Mac - Gypsy [Official Video - Mirage CD Mix]


Fleetwood Mac - Hold Me High Definition (ORIGINAL)


Fleetwood Mac - Can't Go Back

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